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アクティブラーニングは「芸能スクール」に学べ!

どうも、京都の郊外で探究型の教育事業を細々と運営しているマゼルプロジェクト代表の隼人ポルナレフと申します。
実はワタクシ、教育事業を立ち上げてはいるものの、元教員でもなく長年教育業界で活動してきたわけでもなく、元芸能スクールのスタッフという少し変わったキャリアを持っています。

元々は都内の大手FMラジオ局J-WAVEで番組制作を経験した後、芸能事務所直属の芸能スクールに転職し、そこでの体験から日本の教育に疑問を感じ現在の事業を始めました。

昨今では中学受験戦争が加熱する一方で、News PicksやAbema TVなどの言論番組で教育改革についての議論が加熱しているのを目にします。

大学教授や現役の教員、民間校長経験者の方などが中心になり様々な議論がされていますが、ワタクシとしてはとてもとても重要な視点を見逃していると感じています。

それは、、、

”芸能スクール”こそ今の時代に最も必要な人材を創り上げるノウハウと経験を持ち合わせた業界である

ということ!

そんな思いをこの数年間持ち続け、もっと教育業界の方や子育てにお悩みの方にお伝えしたい!と感じてきました。
このnoteではワタクシがこれまでの経験の中で培ってきた教育や子育てのノウハウを、少しづつまとめていこうと考えています。


子ども達に働く訓練を行う唯一の機関、それが「芸能スクール」

まず芸能スクールと聞いても、なんとなくダンスを踊ったり発声練習したりしてるんでしょ?くらいのイメージしかなく、ほとんどの人は”教育”と紐付くことは少ないと思います。

しかし実際のところ、あれほど生存競争の激しい人気商売の中では踊れたり発声が出来るだけで生き抜くことは出来ません。
あらゆることを自分で考え問題解決しなければならず、自律性や忍耐力、向上心、セルフメンタルケアまでかなり高いマインド設定が要求されます。

興味深いことにそんな芸能スクールで活躍するほどの主体的なマインドを持った人材は、スクール全体の中で最も生徒数の多い高校生〜大学生達ではなく、7〜9歳くらいの子役達に多いのです。
なぜ子役達の方が主体的なマインドを持っているのか、各年代の生徒やその親の様子を観察してみると
これまでの学校教育や家庭教育の「当たり前」が子ども達をどんどんと受け身にさせ、考えない癖を付けさせ、 仕事を任せられない棒立ち人間にさせていくという実態が見えてきました。

大人の「子供扱い」が「子供」を創り出す

子役の芸能育成で最もわかりやすく大きな特徴は「子供扱いしない」ということです。

芸能スクールでの勤務経験を経た現在の立場からみると、大人は皆どこかで自分の中の「子供像」を持っていて、基本的に子どもを舐めています。子供だからこれは出来るはずがない、こんなこと考えられるはずがない、と決めつけている。それが普通だと思います。

ですが想像して見てください。
子役という職業は映画の主演ともなれば5〜6千万円ほどの事業の中心人物、現場にはマネージャーが付き添うもののほとんど子役本人の力で事業を成功させなければならず、会社の行く末すら任せることにもなるのです。

当然一般的な「子供像」のままの子では子役という職業は成立しませんし、本来子どもにはそれくらいのポテンシャルが備わっています。
芸能スクールではまず子供のイメージをパラダイムシフトさせることが必要になります。

「子供扱い」 ≒ 「大人の先回り」 ≒ 「全自動のヘルプ」

例えば「来週から新しいレッスン用の台本を使うから下読みしておくように」と伝えるとします。
この台本には当然のようにふりがなが載ってないので、わからない漢字は自分で誰かに聴くか辞書で調べて自分自身でふりがなを書き込む必要があります。
中には熱心な保護者が先回りしてふりがなを記入する場合もあるのですが、この場合スタッフとしてはその子のことをあまり評価出来ず「仕事を任せるの怖いな」と考えてしまいます。
自分で調べていないのでその漢字の意味が入っておらず”音”としてしか表現していない可能性があるからです。

また一度あったケースで、保護者に「ふりがなを先回りして書かないで下さい」と伝えたときに、子どもから保護者に「これなんて読むの?」と聞かれて「自分で調べなさい」と答えた保護者の方がいました。
これは内心“伝え方をミスったな、、、”と思ったのですが、子役達に求める「生きる力」には「人を頼る力」も重要なので、当然自分から誰かに聴くことは望ましい行為です。
保護者との会話は心理的安心を生みますし、言葉の細かいニュアンスも掴めます。なんなら親子でその台本について意見交換などしてもらえるとより望ましいのですが、こちらの意図が伝わっていなかったようです。

本来必要なのは「手助けしないで」ということではなく「先回りしないで」ということで、誰かに手助けを要請する経験はその子が主体的になるチャンスで大変重要です。ですが、自分から動かなくても勝手に大人が手を差し伸べてくれる「全自動のヘルプ」は生きる力を失わせてしまうのです。

子どもは“学習(ラーニング)”の天才

ちなみに、台本の読み仮名に関して実は保護者が手を出さなければ子役達はほとんど心配ありませんでした。
むしろ高校生や大学生の場合ほぼやってくる子はいません。わからない漢字はわからないままレッスンにやってくるのです。

なぜこうなるのだろうかと観察してみたところ、恐らくこれまで親や先生が先回り(全自動のヘルプ)してきたことで「なるほど、どうやら自分は“子供”という弱い存在で、周りの大人に任せておくのが最善だ」と、大人の持っている「子供像」を自分に与えられた役柄としてラーニングし「子供」に甘んじているのではないか、というのがワタクシの考察でした。

一方で芸能スクールでは“当たり前”の基準値を上げるよう接しています。
もちろん身体的に出来ないことや経験値が足りずに出来ないことには配慮しますが、態度として無闇にハードルを下げることをしません。
子役達に「君たちはこれくらいは普通に出来るよ」という態度で接していると、自然とこちらが提案している「子ども像」をラーニングして順応出来てしまいます。

よく考えてみると、子ども達は赤ん坊の頃から周りを観察してこの世界の法則やルールを理解し、二足歩行が出来るようになり、全くなんの言語も知らないところから概念と言語を紐付けて覚えるなど、出来ないことを出来るようにする天才、つまりラーニングの天才なのだと思います。

子ども達の学習能力はAIに負けていない?

この、子どもの学習能力がいかに優れているか考えてみると、近年話題に上がっているAIと比較しても十分に子ども達の能力が高いことがわかると思います。

例えば「猫」という言葉を理解する際、子ども達は全く違う色や姿をしている様々な種類の猫を「猫」だと理解することが出来ますし、イラストに描かれた猫、はたまたストーリーが理解出来るようになることで「ドラえもん」も猫の一種として理解することが出来るようになります。
しかしAIに同じように「猫」を理解させる場合とてつもない量のデータを必要とするそうですが、人間の子どもは圧倒的に少ないデータから「猫」を理解することが出来ます。

この辺りの理解の仕組みは専門家の先生に聞いてみたいところではありますが、実感として子ども達の学習能力は今現在のAIと比べても秀でている部分が多分にあるのだと思います。

この子ならできる。今出来なくても必ず出来るようになる、と信じ切る

ここまで芸能スクールの子ども達との関わり方「子供扱いしない」という部分をお伝えしましたが、改めて子ども扱いしないとは、ある意味では100%の信頼と敬意を持って接するということです。
この子なら出来る。今出来なくても必ず出来るようになる、と信じて接すること。「子供だから出来ない」とこちらが考えた瞬間、出来るものも出来なくなります。

【次回記事】怖がることなく「結果を提示する」

「子供扱いしない」でいると当然たくさんの失敗を子ども達が経験します。
失敗経験を活かす為に芸能スクールで大切にしていたのが「結果を提示する」こと。子ども達は皆、「結果」を元に考察し、学習します。、
次回は芸能スクールで実践していた「結果を提示する」ことについて、まとめてみたいと思います。

【次回以降記事】必要なのは「褒め」ではなく「エール」

【次回以降記事】演劇教育がもたらす効果

【次回以降記事】オーディションでは保護者を見ている


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