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パリのマミコさんとわたし【11】

※過去記事パリのマミコさんとわたし【1】〜【10】の続きです!

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しばらく3人でぼうっとモンマルトルを照らす西日を眺めていた

アニスが喋り始めた

「だけど

確かに人は孤独がデフォルトなのかもしれないけど

それが真実だったとしても

僕は誰かと繋がって愛し合って

それを忘れていたいんだ

理想論だってわかってるよ

だけどそうしていたいんだ」

普段なんでも飄々とこなすアニス

珍しく彼の言葉に熱がこもっていた

マミコさんが答える

「そうよね

私も

孤独であってもこうやって誰かと一緒にいるって大事なことだと

思うわ

孤独を愛する

なんて言葉も理想論だと思う

だから、さぁ今日は飲みましょう!

アニスはやっぱりいい男ね!」

豪快に笑いながらマミコさんが言った

「あのさ、パリに来てから

しばらく、私、

友達が全然いなかったんだよね。

最初は一人暮らし用の屋根裏部屋に住んでいて

一日誰とも話さないなんてこともあった

一人でいるからさ

たくさん考えることがあって

パリまで来て何してるんだろう

って何回か思ったよ

だけどあの時間も必要だったように思う

一人で孤独でいる時って

必然的に自分と向き合わないといけないでしょ

そこで自分自身と対話する時間も大事だったなって今なら思う」

マミコさんが答える

「そうね

確かな答えなんてないと思うけど

孤独と孤独じゃない時間

どちらが良いとか悪いとかじゃなくて

そのバランスが大事なのかもしれないわね

そのバランスの配分だって人によって違うだろうしね

私も日本で生き辛くって

渡仏したものの

最初は友達もいなくて

自分のアイデンティティもいまいちわからなくて

苦労したわ

だからこそ

今なんでもへっちゃらってこともあるのかもしれないわね」

またマミコさんがガハハと大きく口を開けて笑う

オペラで会った時から怖い人だと思ってたけど

マミコさんの笑い方好きだなぁ

そんなことを思いながら私たちは夕暮れのモンマルトルで飲んで食べてよくしゃべった

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パリに住んだ作者がパリの日常と生活を書いていく短編小説です。場所などは実在の場所です。
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