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9 | 冠水と限界。

かわいそうな私の洗濯物。というか私。

こっちに来てから2回だけ、服を手洗いして裏庭に干したことがあります。
それは見事に、2回とも雨にやられました。

思い出すだけでも切なくなります。

ちょうど1ヶ月前、出張中の職員さんと一緒に行動していた日。
「ちょっと洗濯してきます〜」なんて言って、私はわざわざホームステイ先に帰りました。

服の山を両手に抱えて裏庭に出た瞬間、駆け抜けていった巨大なネズミ。
静かにドアを閉じました。

しかし、初めて見たドブネズミに大変ビビりながらも、私は諦めません。
(こんなんじゃ途上国で生きていけないぞ……)
どうにかネズミを閉じ込め、また現れないかドキドキしながら、なんとか慣れない手付きで洗濯を終えました。

私は勝ち誇った顔で職員さんのところに戻りました。

夕方になりました。
スコールです。
「これがフィリピンか……」

私は学びました。
日中どれだけ晴天でも、夕方になると必ず降り出すのがフィリピンの雨季。
これからはお金を払ってお店で洗濯してもらおう。もう張り切ったりしないぞと。

しかし今週のことです。
洗濯物を出してお店から帰ると、部屋には取り残された数枚の洋服が。
出し忘れてしまったようです。

私は悩みました。
今週は珍しく、一日中晴れの日が続いていました。

数枚くらい自分で洗っても良いんじゃないか。
もし降ってきたら、雨除けが機能しているうちに急いで帰宅すればいいのではないか。
日本から持ってきた私のボールドがかわいそうだ。

そんな思考を経て、私は再び裏庭に出ました。
これが2回目のセルフお洗濯です。

そして今日。

結果がこれです。

急いで帰ればいいなんて考えは浅はかでした。

この辺りは、大した雨量じゃなくてもすぐに冠水します。
作業していたカフェを出て初めて雨が降っていることに気づいた私は、道路に足を踏み出して事態の重さに気付きました。

私がいるこのエリアは格子状に道が走っています。
そしてどこの通りも、通りの真ん中の車道部分は高く、外側の歩道部分に移るにつれて低くなる作りです。

つまりどういう風に進もうと、歩行者が行くべき場所は川と化しているのです。

完全に身動きが取れなくなりました。

私は忘れていません。

スコールに襲われたとある夜、家の近くに攻略不可能なほど立派な川が出現し、帰宅できなくなったことを。

ウロウロし続ける私を見かねた現地の方が向こう岸から手を差し伸べてくれたので、意を決して飛び越えることにしましたが、私の運動神経では無理があったことを。(片足が丸ごと飲み込まれました。)

今日はまだ時間が早かったので、雨が止むのを待ち、水かさが落ち着いたところで移動を再開できましたが、覆水盆に返らずです。

今頃私のスカートは、私の愚かな判断を嘆いているでしょう。

という訳なので、私はもう自分で洗濯しません。

一年後、家事ができる娘が出来上がっている事を母は期待しているかもしれません。先に謝っておきます。ごめんなさい。

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