世界で戦う日本人レーシングドライバー イタリアF4/ユーロ4で戦う山越陽悠選手へインタビュー #04 - ユーロ4 開幕戦&第2戦振り返り
今回もイタリアF4選手権に参戦中の山越陽悠選手(Van Amersfoort Racing)にインタビューを行うことができました。#04ではムジェロで行われたユーロ4の開幕戦と、レッドブルリンクで行われたユーロ4の第2戦を中心にお話を伺いました。
これまでのインタビューはこちらから↓
—――前回のレース(イタリアF4 第5戦ポールリカール)からユーロ4の開幕戦ムジェロまで、1か月ほどレースの無い期間が続きました。この間はどのようなことをされていましたか?
山越:バルセロナとモンツァでテストがあったのでいろんなセットアップのテストをして、それが終わった後に一旦日本に帰国して気を休めたといった感じですね。日本に帰った期間は1週間半くらいで、その後ヨーロッパに戻ってすぐの3-4日後にレースウィークといった感じのスケジュールでした。
—――8月23-25日にユーロ4の開幕戦がムジェロで行われました。今年のイタリアF4(7月の第4戦)でも既にレースしているサーキットですが、同じチームで同じサーキットでのレースに挑むうえで、何か異なるアプローチなどはありましたか?
山越:同じコースで2回もレースするというのは本当になかなか無い機会で、僕らとしても前回のイタリアF4のレース3で良いセットアップを見つけていて、それが上手く機能することはわかっていたので、それを今回のムジェロでも活かせたのはすごく良かったですね。
—――逆にこの休みの期間で変わったり、改善した部分はあったのでしょうか?
山越:休みの間はダメなセットアップと良いセットアップを見つける方向性のテストをたくさんしていて、ムジェロのものも試して「やっぱりこれは機能するね」といった形でムジェロに活かせた感じはありますね。
—――シミュレータなども活用するのでしょうか?
山越:いや、夏休み前のモンツァとバルセロナのテストでいろいろテストしたっていう形ですね。(シミュレータを用いたセットアップについても)あるにはあると思うんですけど、その辺りはエンジニアの仕事なのでドライバーにはあまり伝えられてないというのもあると思います。
—――ドライバー目線の場合、シミュレータはどちらかというとコースの習熟の方がF4だとメインといった形ですかね?
山越:そうですね、そんな感じです。
—――良いセットアップが出来上がった状態で迎えたムジェロですが、今回もフリー走行が2回と予選、3つのレースといった流れでした。金曜日のフリー走行からの調子はいかがでしたか?
山越:金曜日のフリープラクティスは、僕の記憶が間違って無ければかなり良かったはずですね(FP1で3番手、FP2で7番手)。結構前向きなデータが取れて、結果もそんなに悪くなかったのが金曜日のスタートでした。
—――その後の予選ではQ1、Q2ともにベストラップで2位とかなり好調に見える結果でしたが、レース3のグリッドとなるセカンドベストのタイムで20位とかなり後方に沈む結果となりました。これは予選で何があったのでしょうか?
山越:僕ら(山越選手とチームメイトのヨンソン)は結構燃料で攻めたストラテジーをしていて、基本的にトラフィックなどそういう問題がなければうまく機能する戦略だったんですけど、最終コーナーでトラフィック…3ワイドでブロックされたり、チームメイトはそれによってコースアウトしたりっていうのがあって、その辺りで運が無く1回しかアタックできず、セカンドベストを出せずに燃料切れで終わってしまったといった形ですね。
—――7月のイタリアF4のムジェロ戦と比べて、温度差などによるタイヤの状況などについて違いはあったりしましたか?
山越:トラックの路温(路面温度)と、僕らはエアテンプ(=気温)って言うんですけど、どっちもイタリアF4のときと変わらない感じだったので、その辺りは特に変わりなく、セットアップのちょっとした変化が良い方向にハマっていってる形でした。基本的にセットアップが上手くいくとドライビングも同じように上手くいく感じにもなりますね。
—――続いて、土曜日午後のレース1はQ1の結果で2番手からスタートでした。レースはトップのアクシャイ・ボーラ(US)を追いかけるも、2位でフィニッシュとなる展開でした。前回のインタビューでムジェロはオーバーテイクが難しいという話が上がりましたが、今回もそれが表れたレースでしたか?
山越:正直なところ、スピンをしていたかもしれない大きなミスをして、そこで差が開いちゃったので、そこが大きなターニングポイントだったかなと感じています。もしそれが無ければ、もしかするとオーバーテイクのチャンスが1回はあったかな?っていう気がします。
—――後ろのチームメイト、グスタフ・ヨンソンもコースアウトで危うくクラッシュになりそうなシーンが映っていました。レース1はかなり難しいコンディションだったのでしょうか?
山越:レース1は夕方で一番路温もエアテンプも高い時間、加えてセーフティカーが0回でぶっ通しで走らなきゃいけない状況でしたね。あとは追いかけられてる側より追いかけてる側の方がやっぱり体力は消耗しやすいので、あれくらいのハイスピードのバトルになってしまうと余計にですね。
—――タイヤの消耗などはイタリアF4のときと比べてどうでしたか?
山越:特に違いはなかったですね。セーフティカーが出なかった分、タイヤのタレは早かったかなっていうのはありますけど、そこまで大きな差は無かったですね。
—――レース2では、2番手スタートから1周目にトップに浮上しましたね!振り返ってみていかがでしたか?
山越:スタートは全然悪くなくて、(ポールポジションの)ボーラが少しミスったかな?って感じで後ろを確認したら、プレマ勢がとんでもなく良いスタートを決めていて、特にラシード(・アル・ダヘリ)(プレマ)がもう僕のサイドバイサイドで来ていて「あぁヤバイ!」って思ったんですけど、あれくらいの混乱になってしまうと誰が一番ブレーキを遅く踏めるかっていうチキンレースになってきます。そのチキンレースに自分が勝てて、グリップも上手く掴むことができてアウトからまくって、なんとかトップに浮上して「今から攻めるぞ!」ってところでしたね。
—――1コーナーでアウトから並びかけて、2コーナーでインを取った形ですね。トップに浮上した瞬間が中継に映ってなかったのが少し残念でした・・・。
山越:そうですね(笑)。
—――トップに立ってからはファステストラップを連発し、最終的には2位に10秒近い差を付けての圧勝でした!トップ独走のときにはどんなことを考えているのでしょうか?
山越:完全にあれは自分の中でペースをコントロールして、タイヤもコントロールして、何なら15分くらいからは流してるくらいの勢いだったんで、「なんでこんな俺だけ速いの?」っていうのが正直なところでした。
—――独走状態で中継にはほとんど映らない展開となっていましたが、レース1であったようなミスでの危ない場面も、レース2では全然なかった感じでしょうか?
山越:全然ですね。本当にゆるーくガソリンもセーブしちゃって、タイヤもセーブしちゃってみたいな(笑)。(プッシュしたら)毎周1秒近くは速く走れました。エンジニアとずっと話しながら走ってたんですけど、「全然攻めてないのに本当にこれでいいの?」っていうのを何回かやりとりしてましたね。あそこまでセットアップとドライバーが”決まる”のはなかなか珍しいことなんで、良い経験でした。
—――レースの優勝としてはイタリアF4の第2戦イモラのレース2以来、ユーロ4としては初優勝となりました。トップチェッカーを受けたときの気持ちとしてはいかがでしたか?
山越:あそこまで本当にちぎってると本当に最高の気分ですね!優勝の重みとしてはやっぱりイタリアF4初優勝のイモラの方が個人的には気持ちが良かったですね。多分イモラもセーフティカーが無ければ今回のムジェロくらいの差を付けれていたと思うので。
—――レース2の後に行われたレース3はセカンドベストタイム順のグリッドとなるため、20番手からスタートでした。ですがセーフティカーが出るまでの1周半で10台抜きの10番手まで浮上しましたね。この場面は振り返ってみていかがでしたか?
山越:とりあえず「(スペースが)空いてるなー。行ける!行ける!ぶつかんないで!」って願いながら(笑)攻めていって、セーフティカーが出てエンジニアが僕に無線してきて「結構(順位)上がってるよ」って言うので、「そんな抜いたんだ(笑)」っていうのが感想ですね。できる限り、絶対に抜けると自分で確信の持てるところで抜きに行ってるので、ちゃんと組み立てながら「これはこういう動きをするな」というのは考えながら行ってます。けど、最後は結局運次第なので。
—――リスタート後は後続の車両に抜かれ、順位を落とす展開でしたが、レース3のレースペースはどうだったのでしょうか?
山越:僕らは状態の良いタイヤを(グリッドが前の)レース1とレース2にもちろん使っていたので、その辺りが厳しかったなっていうのもあります。
—――レース3はセーフティカーが2度出動しましたが、これは古いタイヤを使っている山越選手たちには有利に働きましたか?
山越:正直いらなかったというのが本音です。あと2周くらいセーフティカー無しで引っ張れればもう少し混乱があって、もう1、2個ポジションを上げてからセーフティカーが出て、またポジションを1、2個ポジションを上げるっていうのが僕の理想的な展開ではあったので、ちょっとセーフティカーが多かったかなっていうのはあります。
—――レース終盤はイタリアF4でランキングトップのフレディー・スレイター(プレマ)のペースが落ちてきて、あと少しで抜けそうな展開に見えました。
山越:あれはあと1周あれば抜けましたね。僕の前を走ってた(マキシミリアン・)ポポフ(PHM AIX)がスレイターを抜きにいったんで、そこで一緒に抜いていければなと思ったんですけど、ちょっとペース差があったので無理だと思って、最終ラップに賭けるしかないなと思って走ったんですけど、ちょっと足りず・・・。
—――前回のインタビューで「USやプレマに関してはマシンの制作度合いでいくと90%くらい、僕ら(VAR)は70%くらいだった」という話がありましたが、今回のムジェロではその辺りの関係はどのように変化したと感じますか?
山越:僕の感覚で言うと、逆にプレマが90%から70%まで何でか知らないですけど落ちちゃっていて、USとVARが95%くらいまで詰めていたかなっていう感じですかね。
—――今回のレースから新しいクラッチシステムになるという話も前回教えていただきました。実際にレースで使用してみて変化はいかがでしたか?
山越:あれは・・・ひどいですね(笑)。スタートの順位が結構ばらけたと思うんですよ。スタートの順位から離れた順位にいる人っていうのはまだあまり慣れてない人で、この次のレッドブルリンクだとその差が結構見えていたと思います。
—――山越選手的にはムジェロの3レースのスタートはいかがでしたか?
山越:レース1はちょっとひどくて、レース2は良かったです。レース3は10点満点中6点で、「スタートしましたね」みたいな感じのスタートでした。
—――スタート自体よりもその後の動きが良かった感じですね。
山越:そうですね。レース2もそんな感じでした。
—――スペインF4のアラゴン戦もでしたが、スタート直後の位置取りやオープニングラップの組み立てが山越選手はとても上手な印象を受けます。
山越:はい!ありがとうございます(笑)。
ユーロ4 開幕戦 ムジェロでの山越選手の成績
予選1:2位 予選2:2位 セカンドベスト:20位
レース1:2位スタート → 2位フィニッシュ
レース2:2位スタート → 1位フィニッシュ
レース3:20位スタート → 11位フィニッシュ
—――3週間後の9月13-15日にユーロ4の第2戦がレッドブルリンク(シュピールベルク)で行われました。今年のイタリアF4はレッドブルリンクのレースが無いため、初めてのサーキットとなりますが、事前にテストなどで走行はあったのでしょうか?
山越:これもテストが一応ありましたね。確かムジェロのすぐ後か、ちょっと前にあったか・・・みたいな感じですね。
—――レッドブルリンクというサーキットについての印象はいかがでしたか?
山越:短くてめちゃくちゃハイスピードですね。僕はかなり好きな方のサーキットです。ハイスピードのコースは基本的に楽しいので、僕はターン9、最終コーナー手前が結構好きです。
—――逆に難しいところ、重要なところはどういったところでしょうか?
山越:まずターン1はミドルスピードを結構高めないといけなくて、そこが結構難しいです。ターン3のヘアピンはトラクションが命なので、立ち上がりで少しミスしちゃうと次がバックストレートなのもあってコンマ1-2は簡単に落としちゃうので、そこら辺もかなり難しいです。あとのハイスピードはメンタルなので(笑)。
—――この週末のレッドブルリンクは気温がかなり低いという情報がありましたが、実際のところいかがでしたか?
山越:9月とは思えなくて・・・。あり得ないです。朝起きてサーキットに着いたら3℃!寒すぎてやっていけないですね(笑)。
—――ここまで寒いとドライブするうえでも変わってくる点はいろいろあるのではないでしょうか?
山越:まずドライバーの体調面というか、ドライバー側の問題で言うと、手がかじかんで痛いです。それと足の方に空気が来るんですけど、その空気が冷たすぎて感覚的に自分の足が2、3倍大きくなってるように感じます。
タイヤの面で言うとウォームアップがすごく難しいので、ちゃんとフォーカスしないと厳しいです。あと、寒いと気圧の問題でダウンフォースが増えるんですよ。(レッドブルリンクは)高地だったりそういう要素もいろいろあって、ダウンフォースが増えたり減ったりでその辺りのセットアップもちょっと考えないといけかったりしますね。
今回のレース2ではセーフティカーランが雨の中だったじゃないですか、あれが本当に寒くて(笑)。基本的に僕は元々ヘルメットを被った全部の装備で67kgなんですけど、レース終わったら68kgで、スーツを脱いだら(水を含んでて)とんでもなく重くて・・・。あれはちょっとイジメでしたね(笑)。
—――ウェットのレースは今回が初めてになりますか?
山越:F4 UAEのヤスマリーナ(第4戦)のレース2が雨でしたね。
—――あー、ありましたね!中東で何故か雨が降ったレース!
山越:あとは一応この間の(イタリアF4の)ポールリカールのレース3も雨と言っていいのか・・・ちょっと微妙ですけど。(スリックタイヤを選んだドライバーが軒並み上位となったコンディションのレース)
—――ピレリタイヤで雨が降り続けるウェットレースは今回が初めてだった感じですかね?(F4 UAEはジーティタイヤ)
山越:それは初めてですね。
—――レースウィークの話に入っていきます。レッドブルリンクでは金曜日のフリー走行の時点ではいかがでしたか?ムジェロでは良い感じの流れで始まっていましたが。
山越:正直「終わったな今週」って思ってました。20番手くらいをうろちょろしていて(FP1は16位、FP2は21位)、セットアップもドライバーも全然決まってなくて「どうしよう、ヤバいな」って思ってましたね。
—――フリー走行が雨の場合は雨のセットアップで合わせていくのでしょうか?
山越:元々の予定は金土日ずっとフルウェットでレースできるかも怪しいくらいだったので、レインのセットアップを煮詰めていく感じだったんですけど、流石にドライバーが遅すぎるからヤバいっていう感じでした。
—――フリー走行は2回ありましたが、2回目で少し改善はありましたか?
山越:ゼロでしたね。もうお通夜状態で・・・。
—――予選は翌日の土曜日に行われました。金曜日の状況から考えるととても良い結果(Q1:6位、Q2:4位、セカンドベスト:4位)でしたね。振り返ってみていかがでしたか?
山越:ドライになってくれて本当にありがとうって感じですね。Q1はトラフィックに引っかかってしまってタイムを上げることができず5番手止まりで、(最終的には6位)本当だったら全然トップタイムもワンチャンあったかもしれなかったのが正直な感想ですね。
—――Q2の4番手という結果についてはいかがでしたか?
山越:最低限の仕事はしたかなってところですね。
—――金曜日の絶望的な状況から土曜日の予選はこの結果になったわけですが、フリー走行から予選にかけて何か行ったことはあったのでしょうか?
山越:ドライにセットアップを変えるくらいで、あとはドライの走り方を見直して「頑張ってこい」って感じです。
—――晴れてくれたのが一番の要因だったわけですね。
山越:そうです!
—――温度が低かったレッドブルリンクでしたが、ムジェロのような高い路温の場合とタイヤのウォームアップはまた違ってきそうですが、その辺りはいかがでしたか?
山越:かなり変わりますね。タイヤの空気圧もそうですし、あとはウォームアップに時間をどれくらい費やすか、どれくらいアグレッシブにウォームアップをするかというのも変わってきて、ウォームアップは(ムジェロとは)真逆の方向性でしたね。
—――F1やF2のピレリタイヤでは一気に温めようとすると逆にタイヤがダメになるというような話もあるようですが、F4ではいかがでしたか?
山越:今回の場合はすぐに温めるのは不可能だったので、気合で温めるっていうところでしたね(笑)。激しめだけども丁寧にっていう感じです。F4のタイヤでもちょっとアグレッシブすぎるとすぐにタイヤが終わってしまいますね。その辺りがF2の宮田選手が苦戦している部分だったりするのかなとも思います。
—――土曜日午後のレース1は6番手グリッドからでした。ライブタイミングのリザルトでは5位でしたが、誰かのタイムが復活したり、山越選手側に何かペナルティがあったりしたのでしょうか?
山越:多分誰かのタイムが復活したんですけど結局誰か分からず(おそらくマキシム・レーム(US)のタイムが復活した)で、僕もグリッドに着いて初めて6番手だって知りました。
—――レース1はスリックタイヤでのスタートとなりましたが、この時点で雨は降り始めていたのでしょうか?
山越:そうだったはずです。雨がわーっと多めに降ったり、ポツポツ降ったり、降らなかったりをずっと繰り返していた感じですね。
—――レース1は映像を見る限りスタート、オープニングラップ共に良い感じの展開に見えましたが、実際はいかがでしたか?
山越:スタートも1周目もかなり良かったんですけど、2周目(のターン3)でマキシム・レーム(US)にアウトからクロスラインをしようとしたところで実は接触していて、そこで僕のフロントタイヤが曲がって、ハンドルが真っ直ぐにならなくなって、まさにバクーのベアマン状態でした。そこで「ヤバい、ハンドル曲がったからどうしよう」みたいな感じだったんですけど、意外とペースも良くてうまく走ってました(笑)。
—――そんな状態でも4番手をキープしている展開でしたが、レースが進むにつれ雨がだんだんと強くなっているように見えました。走っている側としてはいかがでしたか?
山越:若干滑りやすくなったり、トラクションをかけづらくなったりっていうのはあったんですけど、レッドブルリンクは凄く水はけが良くてすぐに路面が乾くんですよ。その影響もあって、本当に毎周毎コーナーで路面状況が違う状況でした。だからこそトップ2のペースよりも僕と(3番手を走る中村ベルタ)紀庵(プレマ)のペースが良かったっていうのはあったと思います。僕らの目線だと彼ら(トップ2)のドライビングを見て、「それぐらい(の路面状況)なんだ」っていうのがわかるので。
—――後方ではウェットタイヤに交換しているドライバーもいましたが、そこまでの雨量ではなかったですか?
山越:全然なかったですね。
—――残り10分ほどのタイミングで後方でクラッシュがありセーフティカーが導入され、残り5分ほどでリスタートとなりました。リスタート後のターン4で一気に集団に飲み込まれることになりましたが、ここでは何があったのでしょうか?
山越:まず僕がターン3で凄いブレーキに自信を持って走ってて、ブレーキをちょっと遅らせて真っ直ぐブレーキをしたところ、(前を走る)紀庵がブレーキで動きながら僕の方に寄ってきて、押し出された形で濡れてる縁石に乗ってブレーキが効かなくなり、オーバーランしてしまいました。その後ラシードとサイドバイサイドでターン4に向かっていったところ、ラシードがそのまま止まりきれずに僕の目の前でグラベルに入って、そこでブレーキテストされた形になり思いっきり順位を落としたというストーリーですね。
—――混乱がありながらも次の周には5番手までポジションを回復していたところ、再びターン4で・・・。
山越:刈り取られてしまいました。
—――一応何が起こったか伺いたいと思います。
山越:気づいたら僕のリアタイヤが吹っ飛んでました(笑)。僕とサイドバイサイドのドライバーがオーバースピードで入ってきて、僕に接触してきた感じですね。
—――当てられた瞬間はどんな気持ちだったのでしょうか?
山越:「まあそんな気はしてたよね~」っていう。明らかに流れが悪かったので、なんかダメ気がするけど・・・みたいな感じでした。
—――チャンピオンシップを考えるとノーポイントになってしまったのは痛かったように見えます。
山越:そうですね。やっぱりあそこで潰されちゃうのは辛いところではあります。
—――翌日のレース2は4番手グリッドから、完全なウェットコンディションのレースで、セーフティカースタートでした。ヨーロッパでは初のフルウェットでのレースでしたが、いかがでしたか?
山越:めちゃくちゃ楽しかったですね。あれくらいグリップレベルが低い中で自分の限界を探るのは意外と楽しかったりします。
—――セーフティカーが何度も出るレースで、上位勢も接近したバトルがありました。2度目のリスタートではトップ2のプレマ勢が激しく争い、結果的にターン4でトップのトーマス・シュトルツェルマニス(プレマ)がコースアウトすることとなりました。後ろからはどう見えていましたか?
山越:「サイドバイサイド・・・あ、押し出された。当たるのには気を付けながら行こ」みたいな感じで(笑)。ちなみにあのくらいの雨量だと前は結構見えていました。
—――コースアウトしたクルマを抜いて3番手に浮上した後は、チームメイトのグスタフ・ヨンソンと2番手争いになりましたが、オーバーテイクまでは至りませんでした。あの場面はいかがでしたか?
山越:(オーバーテイクまで)ちょっと足りなかったし、「絶対クラッシュするなよ」っていう圧が無線で飛んできたんで(笑)。VARは去年のイタリアF4のイモラ(のレース4)でイヴァン・ドミンゲスとブランド(・バドエル=ルカ・バドエルの息子)が(同士討ちを)やってるという最悪な記憶をチームは持ってるので、しかも2、3番手争いっていう全く同じシチュエーションでしたね。
—――レース2では直接オーバーテイクをしてポジションを上げるシーンはありませんでしたが、ウェットになるとオーバーテイクの難しさは変わってくるのでしょうか?
山越:ブレーキミスをしたらそのまま吹っ飛んじゃうんで、それがちょっとリスキーではあります。けど、ミスしやすいコンディションでみんなビビるんで、若干簡単にはなるのかな。
—――3位でフィニッシュとなりましたが、レース2で優勝したスレイターは10秒以上先を行っていました。山越選手から見てこの結果はどう見ますか?
山越:特には気にしてないです。ただ、イギリスF4で走ってたドライバーたちは雨に強いんですよ。(去年イギリスF4に参戦していた)グスタフとスレイターに結構ついていけたし、グスタフの前に出られればもう少しペースを上げれていたんで、そういうところを考えると結構ポジティブな結果ではありましたね。
—――金曜日のフリー走行では雨のセットアップでかなり苦戦されていましたが、レース2ではかなり改善されたと見てよさそうですか?
山越:セットアップも結構変えて、これも良い方向性に行きましたね。
—――レース3も4番手から、今回はドライのレースになりました。スタートは動き出しはかなり良かった反面、加速で少し遅れたように見えました。ご本人的にはいかがでしたか?
山越:本当に大正解で、リアクションは多分一番速くて、コンマ2とかそういうレベルの良い反応をしたんですけど、ちょっとクラッチを攻めすぎてホイールスピンしちゃいました。リアクション速度でなんとかごまかせましたね(笑)。
—――4番手をキープしたまま、ターン4では2番手を走るチームメイトのヨンソンがトップのスレイターに押し出される形となりました。後ろから見ていていかがでしたか?
山越:僕は完全に(3番手の)トーマス(・シュトルツェルマニス)(プレマ)とサイドバイサイドだったので、「俺はアウト側行かないけどどうするんだろうな」と思ってました。レース2で目の前でトーマスが(ターン4で)押し出されるのを見てるのもあって、アウト側に行くとああなるのはもう目に見えてたので、僕は絶対にアウト側には行かないっていう強い意志を持っていました。
—――3番手に浮上したあと、今回も何度もセーフティカーが出るレースでした。2度目のリスタートでは目の前のトップ2台のバトルがかなりヒートアップしていました。真後ろで見ていていかがでしたか?
山越:「いやぁ危ないなぁ。やめてほしいな~。目の前で2台でスピンされたら避けきれないよね(笑)。」って思いながらでしたね。
—――結果的に最終コーナーでシュトルツェルマニスがコースアウトし、山越選手が前に出ることとなりましたね。
山越:あそこはアウトに行くかインに行くかの2択だったんですけど、僕がトーマス目線だったら絶対にイン側に行くだろうと思って、もちろんイン側を守るのが常識ではあるので。多分トーマスもイン側を意識してイン側のミラーを見てると思ったので、アウト側に行ったのが上手くいってトーマスを本当に綺麗に抜くことができましたね。あとはスレイターをどうしよかなって(笑)。
—――その後はスレイターと山越選手のトップ2のバトルとなりましたが、順位はそのままで2番手でフィニッシュでした。DRSがあるシリーズではオーバーテイクの多いレッドブルリンクですが、F4だとどうなのでしょうか?
山越:正直に言えば、しようと思えばできたっていうのが僕の感想です。チームから一応「スレイターは(1周目の押し出しで)ペナルティになると思うから、とりあえず5秒以内に収まっていればいいよ。リスクは絶対に取らないで」って言われていて、(押し出されたのが)チームメイトだったのもあってそれがどういうシチュエーションだったかはチームもよく知っている状況だったので、一旦5秒以内に収めておきました。ただ、「最終ラップだけやるよ」っていうのは言っておいて、ターン3でクロスラインを上手く狙いに行ったらホイールスピンをしすぎて立ち上がりで離れちゃったんですね。だからこそレース後の僕の何も嬉しくなさそうな顔でした。「ちょっとそれは無いだろ俺」って思いながら(笑)。
—――チームの考え通りレース後にスレイターには5秒ペナルティが出たため、山越選手が繰り上がりで優勝となりました。ペナルティはレースが終わってすぐに出たのでしょうか?
山越:レースの後すぐに出ました。僕が帰る前にトロフィーを手に入れたんで。
—――イタリアF4のイモラ戦でありましたが、繰り上がりで優勝になった際は元の優勝者がトロフィーを持ってくるというのがあるようですね。
山越:今回はスレイターではなく、プレマの代表(F4部隊の人)が持ってきましたね。僕のトロフィーは(3位でフィニッシュした)ラシードに行きました。
—――レッドブルリンクはDNFと3位、優勝という結果でしたが、振り返ってみていかがでしたか?
山越:今回は特にチームとしての団結力、そういう力強さを見せることができたかなと思います。外側からは分かんないですけど、F4のグループ内だとそういうところを見せられたかなというのはあります。金曜日のフリー走行であれだけ下の方からスタートして、結果的には2回の表彰台で1回の優勝という形で終われたのは本当に最高の結果だと思います。
—――レッドブルリンクではFRECA(フォーミュラリージョナルヨーロピアン)も併催でした。このシリーズにもVARは参戦していますが、こちらとコミュニケーションを取ったりはするのでしょうか?
山越:そうですね。イタリアF4のムジェロから結構向こうのパドックにはお邪魔して遊びに行ったりしてるので、そこでいろいろ話したり、セットアップだったり、路面のことを聞いたりしてます。
ユーロ4 第2戦 レッドブルリンクでの山越選手の成績
予選1:6位 予選2:4位 セカンドベスト:4位
レース1:6位スタート → リタイヤ(25位完走扱い)
レース2:4位スタート → 3位フィニッシュ
レース3:4位スタート → 1位(2位フィニッシュから繰り上がり)
ユーロ4 ポイントランキング(2/3ラウンド終了時点)
1位 94pts:フレディー・スレイター(プレマ)
2位 83pts:山越陽悠(VAR)
3位 78pts:アクシャイ・ボーラ(US)
4位 54pts:グスタフ・ヨンソン(VAR)
5位 52pts:トーマス・シュトルツェルマニス(プレマ)
—――次のレースはイタリアF4の第6戦バルセロナですが、このサーキットについてはいかがですか?
山越:バルセロナは個人的にすごい好きなサーキットの一つで、本当にずっと待っていた感じですね。やっと走れる!みたいな(笑)。去年のスペインF4の最終戦でルーキーポディウムを獲れたのは本当に嬉しかったのもありますし、結構得意なサーキットですね。
—――注目ポイントなどはあったりしますか?
山越:結構スリップストリームが効きやすいんですけど、最終コーナーのダーティエアが大きいので、そこをどれだけ上手くまとめられるかがトップ以外の人たちの問題点ですね。あとはタイヤのデグラデーションが大きいコースなので、タイヤの良し悪しでペースも変わってくると思います。タイヤマネジメントがかなり重要だと個人的に思ってます。
—――イタリアF4のバルセロナ戦の翌週には続けてユーロ4の最終戦モンツァが待っています。ポイントランキングは2位で、トップのスレイターとは11点差で臨みますが、こちらの意気込みも伺いたいと思います。
山越:流石に(スレイターの)3シリーズチャンピオン(UAE、イタリア、ユーロ4)は止めなきゃなって。とにかく勝たないとほかの人たちに顔が立たないので(笑)。
—――モンツァのサーキットについての印象はいかがですか?
山越:デグラデーションが本当に低くて、多分全周フルプッシュのレースになると思います。あとやっぱりスリップストリームが本当にとんでもないほど効くので、どうなるか分からないくらいにクレイジーなサーキットではありますね。その辺りは運次第としか僕は言えないかもしれません。
—――ちなみに今年のユーロ4は最終戦のポイント2倍キャンペーンはあるんですかね?
山越:多分ないと思います。僕もあんまりルール分かってないですけど(笑)。
—――イタリアF4の最終戦もモンツァなので、その前にユーロ4でレースがあるのは良い材料になったりするのではないでしょうか?
山越:そうですね。ただイタリアF4のモンツァは僕のバルセロナの結果次第でしかないので、まずバルセロナのレースが終わってからなるようになれって感じです。ただ、最終戦前にチャンピオン決定を阻止するためにバルセロナで何とか75ポイント差以内には収めないとですね。(現在86ポイント差)
イタリアF4 ポイントランキング(5/7ラウンド終了時点)
1位 265pts:フレディー・スレイター(プレマ)
2位 179pts:山越陽悠(VAR)
3位 174pts:アクシャイ・ボーラ(US)
4位 140pts:ジャック・ビートン(US)
5位 138pts:アレックス・パウエル(プレマ)
—――最後に・・・来年に向けて言える情報が・・・もしあれば・・・!
山越:ギリギリ一応レースは出来ます!契約はもうほぼほぼみたいな感じのところまで行ってるので、なんとかレースは出来ます。
山越陽悠選手の各種SNS
X(旧Twitter)https://x.com/HiyuYamakoshi
Instagram https://www.instagram.com/hiyu.yamakoshi
イタリアF4選手権とユーロ4選手権のレースはYouTubeでライブ配信が無料で視聴可能!
次のレースのイタリアF4 第6戦のバルセロナは9月27日~29日に開催されます!
9月27日(金) 18:54~ フリー走行1
9月27日(金) 24:21~ フリー走行2
9月28日(土) 16:00~ 予選1
9月28日(土) 16:25~ 予選2
9月29日(土) 19:35~ レース1 LIVE
9月29日(日) 18:05~ レース2 LIVE
9月29日(日) 24:15~ レース3 LIVE
(すべてのセッションでライブタイミングが利用可能)
その次のレースのユーロ4 最終戦のモンツァは10月3日~6日に開催されます!
10月3日(木) 21:00~ コレクティブテスト
10月4日(金) 16:40~ フリー走行1
10月4日(金) 20:20~ フリー走行2
10月5日(土) 15:30~ 予選1
10月5日(土) 15:55~ 予選2
10月5日(土) 21:50~ レース1 LIVE
10月6日(日) 15:40~ レース2 LIVE
10月6日(日) 22:40~ レース3 LIVE
(すべてのセッションでライブタイミングが利用可能)
2024年のイタリアF4選手権/ユーロ4選手権のフルレース動画まとめ(YouTube)
今後のイタリアF4選手権とユーロ4選手権のレース日程
9月27日~29日 イタリアF4 第6戦 スペイン:バルセロナ
10月4日~6日 ユーロ4 最終戦 イタリア:モンツァ
10月25日~27日 イタリアF4 最終戦 イタリア:モンツァ
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