ドラえもんのび太と鉄人兵団について独り熱く語る

ドラえもんのび太の鉄人兵団は1986年と2011年にそれぞれ映画化されているが今回は1986年版について語らせていただきたい。

最初に言うと私は平成初期生まれで、大山のぶ代さんのドラえもんで育った世代である。
映画も当然全部観ていて、鉄人兵団は特にお気に入りでよく観ていた。
鉄人兵団として、人間をロボットの奴隷として支配する使命を与えられ地球に送り込まれた美少女ロボットのリルルが、のび太やしずかちゃんと触れ合い自分たちのしようとしていることに疑問を覚え葛藤する様子は子供心に考えさせられるものであった。

物語の終盤、しずかちゃんとリルルは鉄人兵団を止めてもらうため、タイムマシンでリルルの故郷メカトピアの過去に行き、鉄人兵団の開発者(博士)に掛け合う。博士は鉄人兵団の始祖のロボットに優しい心を植え付け、鉄人兵団が生まれないように対応してくれるのだが、そうすると当然鉄人兵団の一員であるリルルは存在しないようになってしまう。博士の説明を聞き、そのことを悟ったリルルは一瞬とてもショックを受ける表情をする。しかし、一瞬で笑顔に切り替えしずかちゃんに良かったわね。と言葉を掛ける。そして体調を崩しロボットの修正をやり遂げられなくなった博士に変わり、なんと自ら修正作業を名乗り出てやり遂げるのだ。

リルルがここまで変わったのは、しずかちゃんの影響が大きい。しずかちゃんはリルルが敵であると分かっていながら、故障した彼女を手当した。リルルが治れば地球を攻撃する指揮をとる役目を負っていると知りながら。(この時しずかちゃんは敵である自分を手当することを理解できずにいるリルルに「時々理屈に合わないことをするのが人間なのよ」と言っている。とても小5の言葉とは思えない)リルルは人間はロボットよりずっと下等でロボットの奴隷にすることになんの疑問を持っていなかったが(リルルの故郷ではそれは当然の考えであった)しずかちゃんの優しさに触れて段々と考えを改めていったのである。
しずかちゃんもロボットの歴史を変えればリルルが消滅してしまうことが分かっているが、リルルを止めることはできない。もちろんここで止めれば地球が滅んでしまうこともあるが(現にのび太たちは鉄人兵団と命懸けの戦いをしている)何よりリルル本人の強い意志があるから。

リルルは消滅する前に「今度生まれ変わったら天使のようなロボットに(なりたい)」と言い、しずかちゃんはそんな彼女に「リルル、あなたは今天使になっているわ」と告げる。二人は永遠の友情を誓い合い直後にリルルは消滅してしまう。二人の少女の人間とロボットという壁を超えた尊い友情を感じた。リルルは残虐なことをする自らの運命を自分の手で作り変えたのだ。

私はリルルの態度に少なくない衝撃を受けた。今ここにいる自分が消滅すると同時に自分が存在したという事実さえ抹消されるというのに、それを一瞬で受け入れる様に。子供向けアニメにしてはなかなかショッキングなシーンだったとも言える。だからこそ忘れられない作品になったと思う。

今でも時どき鉄人兵団を観ているけれど、もし自分がリルルの立場になった時、同じことができるかを考える。そして生きているうちに、リルルのように自分の全てを犠牲にしてでも守りたいものに出会いたいと思うのである。

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