死ぬまで僕のこと引き摺って歩いて
この言葉は主にボーカロイドやメジャーで楽曲制作をする『MI8k』と書いてミヤケと読む、彼の楽曲の中の言葉である。
とりあえず一度騙されたと思ってこれを聴いてみてほしい。
(オシャレ鬱ソングなので、そのつもりでどうぞ)
この『嗤うマネキン』を簡単に言えば失恋ソングだが、ただの失恋ソングとは言い難い。
大切な人を失ったであろう主人公の、こんなにも繊細な機微をここまでぎゅうっと言語化出来る彼の語彙力と想像力(体験談なのかもしれない)に感服する。
彼の楽曲の中でも特にこの曲にはマイナスの感情が詰め込まれているように思う。悲壮感、失望感、嫌悪感、不信感、世間へのヘイト、そして少しの狂気を私は感じる。
最後の落ちサビの歌詞に至っては、まさに"嗤いながら"歌っていそうだ。
"嗤う"にはこんな意味がある。
この曲の主人公は、もぬけの殻になってしまった自分を嗤っているのだろう。嗤うしかなくなるほどの失恋。目に映る全てに嫌気が差し、考えたって仕方のないことに思考を重ねて、また同じように昇ってきた朝日を見て自分の不甲斐なさを抱えて。何も感じなくなって、一層のこと壊しきってしまえと。
さて、私がこの曲の中で一番好きな歌詞が
冒頭にもあるように
『死ぬまで僕のこと引き摺って歩いて』 だ。
「あいつの残りの人生に十字架を背負わせてやりたい」と思うことが実際に彼にはあったのだろうか…。
後半のCメロからしてこの曲の主人公は自殺しているのではないか、と私は考察しているのだが、主人公にとってこの相手は本当に大切な人だったのだろう。
その人が死ぬその時まで、自分をシコリとして、重しとして残してやりたいって、相当な憎悪だ。
私もそう思わなくもない相手がいる。
恋人って別れると何もなかったかのようになるのが辛い。
あんなに馬鹿みたいに笑ったり喧嘩したりしたのに。
何か良かったことでも悪かったことでもいい、過ごした時間が断片的にでも残っていて欲しい。そう思う。
出来ることなら良かったことで思い出されたいけども、愛の次に強い感情は憎悪だと思うから、私を思い出してくれるならそれでもいいかな、なんてね。
捻くれ者はそう思う。
他にも。
「一人よりも二人の方が寂しくなるって知らなかったな」
という言葉にも痺れた。
同じ空間にいるのにきっと何かで隔たれたような感覚。
すぐそばに居るのに居ないよりも辛い状況。
それをこんなに詩的に表現出来るなんて…。
負の感情をオシャレに言い換えられる技術、私にももっと欲しいものだ。
私は天邪鬼だから、幸せを感じると何故か切なくなる人間なので、切なさをオシャレに言い換えられたら負の感情は良いパワーとなって返ってくるはずだ。
マイナスをマイナスに振り切って作品にするって本当に強い。私大好き。
『灰色の春』
なんて先日呟いたけれど
この曲はまさに灰色の世界で。
聴いているとどことなく落ち着いてしまう。
という、私の好きな言葉と好きな曲の話でした。
みんな幸せに生きておくれ。(?)