鹿児島県新知事就任の日、塩田康一知事がフリーランス向けの質疑応答の場を設定
7月28日、鹿児島県知事に塩田康一氏(無所属新人、元九州経済産業局長)が就任した。同日、就任会見主催者である県政記者クラブ(青潮会)から記者会見への参加を禁止されたフリーランス向けに、塩田知事との質疑応答の機会が別途設けられた。その際、私も質問をすることができた。質疑応答は以下のとおり。
――九州電力川内原発の安全性を検証する県の専門委員会(原子力安全・避難計画等防災専門委員会)について、専門委員会の構成を原子力政策の推進派だけでなく、反対派の人も入れる考えということだった。人数比はどのようになるか
塩田知事 現在の委員は基本的には学識経験者で構成されている。推進派かは分からないが、中立的立場を含め、構成員の立場は様々だろう。ただ、これまでは原子力政策に批判的な人が委員に含まれていないというご指摘があった。また、前知事(三反園訓氏)が反対派も委員に入れると言いながら入れなかったことへの批判もあった。
原子力政策に批判的な学識経験者にも委員になっていただき、議論していただく。その際、批判的な立場の委員が一人というわけにはいかないので、複数の方に入っていただく。
――立場による比率が同程度の構成になるということか
塩田知事 同じ比率になるかどうか、現在の委員の原子力政策への立場や委員会での構成がどうなっているか分からないのだが、(原子力政策に批判的な委員として)少なくとも複数の方に入っていただきたいと考えている。
――知事は(川内原発の1,2号機20年運転延長の是非について)「必要に応じて県民投票を実施」と述べられている。具体的には「必要」とする場合とはどのようなことを想定しているか。
塩田知事 色々な状況があるだろう。委員会で議論をして意見が割れる場合もあるだろう。そのような場合に、県民の皆様のお考えはどうかを聞く必要があるだろう。ただ、必要な手続きや手続きにかかる費用のこと等も含めて考慮しながら、どのような手段で行うかを検討する。県民投票を念頭に置いているが、それ以外の選択肢も排除しない。
―「凍結」と仰っている3号機は、任期中に解凍してGOはありますか。
塩田知事 凍結したものは、暑い夏でもしっかり凍結です。
非常に限られた時間でも、塩田知事からの回答は正面からの丁寧なものだった。そして最後は笑顔とウィットに富んでいた。鹿児島県の情報発信をより開かれたものにしようという姿勢が、就任初日からはっきりと示された。塩田知事と県による画期的な一歩だった。
最後に蛇足になるが、私がなぜこのような質問をしたのかを記しておきたい。
九州電力川内原発1,2号機は2024年から相次いで40年の運転期限を迎える。九電は巨額の費用を原発の安全対策に投じているため、延長申請は確実視されている。
塩田知事が、延長是非の議論を行うことになる県専門委員会の構成を変え、反対の立場の委員を入れる考えであることは報道されてきた。
しかし、反対派委員を迎えるとしても、反対派を入れる人数や委員会での立場ごとの構成比(推進派、中立的、反対派の比率)が報道では見えてこなかった。
専門委員会12人(平成30年12月19日現在)のうち、批判的立場が一人だけの起用であれば、その一人の意見はどこまで議論活性化と「徹底的な検証」へのインパクトがあるのか。言い方は悪いが「アリバイ的に」批判的といえる立場からは1人は入れました、という形式的なだけの結果もあり得るのではないかという疑問があった。そこで、批判的立場の委員の委員会内での構成比率はどうするかを聞いた。
また、「県民投票」について「必要な場合」がどのような場合かを聞いたのにも理由がある。「1号機・2号機の20年延長については、必要に応じて県民の意向を把握するため、県民投票を実施」と塩田氏公式サイトでマニフェストが掲げられている。
県民の意向を把握するための方法はパブリックコメントなど、様々だ。そのなかでも県民投票を実施するか否かは大きい。公約に県民投票が掲げられていたことも、知事選で塩田氏に投票を決めた有権者には、重みのある判断材料になったはずだ。「必要」と判断される場合はどのような場合かが示されないと「県民投票(まで)は必要なし」とされ、「県民ひとりひとりの声」を多く拾い上げるとはいい難い他の簡易な方法で取って代わられたりすることもあるだろうと考え、質問した。
今回、青潮会主催の会見に参加を許されなかったフリーランス向けの質疑応答の機会を別途設け、知事として一つ一つの質問に向き合い回答したこと自体も、県民への「新しい県政」のメッセージとなっているだろう。
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