身体が勝手に動く
数週間体調を崩していた88歳の友人に、久しぶりに会った
スモールトークも説明も、天気の話題も必要ない
無理をせずに隣にいてくれるひとの存在を、わたしはとてもありがたい思う
3年前のロックダウン中、わたしはその人に車の運転を教えてもらい
今でもたまに運転手をさせてもらって、りんごとワインを買いに行く
大きな車は、音や振動がより伝わってくるところがいい
低速のギヤにして丁寧に角を曲がるときや
アウトバーンを降りるときにエンジンブレーキのかかる重圧
身体を使うことが、わたしは好きだと思う
マッサージの仕事やヨガをするときもそうだし
覚えた指でピアノの鍵盤を自由に叩くときの開放感や
下手なギターで、はじめて指を見ないで動かせたときの快感
身体が勝手に動く、その心地よい瞬間は
思考を忘れることができる
生きることは苦しみでもあると、思うことがある
誰しもが、身体が老いていくことは避けられないし
精神は、年齢を問わず、冷静を保てるひとのほうが少ない
だからわたしは、こうして文章を書いているし
また下手で苦手なギターをはじめようとしている
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あなたはあなたらしく、わたしはわたしらしく。