『感じる能力』
そのいぬの名前は『くる』だと
わたしは言った
zoomのカメラ越しにかざす写真を見て
存在を認めてくれる人がいることでわたしは救われた
いきものに責任をもてない人間だと思っていたわたしにも
以前は、そのいぬに対する愛があった
その黒くどこまでも深い瞳と
がむしゃらに噛みつく小さな歯と爪は
何かに対する抵抗に見えた
その場所に置いてきたものを、わたしは遠くから見ている
「ごめんね、許してくれる?」
と声に出して言ってみた
その黒い瞳は何も変わらない
何も変わらないけれど、何かを伝えているかもしれないと思う
その眼を見るたびに、後悔できなかったあの日のことを思い出そう
情け無い自分に向き合う勇気をもとう
あなたはあなたらしく、わたしはわたしらしく。