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【うちの子、勉強ばっかりしてるんです】

「うちの子、勉強ばっかりしてるんです」

ある保護者から頂いたお悩みです
こういう悩みって「自慢?」って言われそうで、なかなか言えないですよね

でも保護者としては真剣に悩んでいて
「友達がいないのかな」
「運動が苦手だから勉強に逃げてるのかな」
「親子の会話をする時間がない」
どんどん考え込んでしまいますよね

実はこういう「人から見ると贅沢な悩み」を抱えてる保護者って意外と多いんです
そして多くの方が「苦手な◯◯は手を付けなくて」と、おっしゃいます
得意な科目はもういいから、苦手な科目を頑張って欲しい
でも人に言うと「△△がスゴイんだからいいじゃない」と返ってくる

さて私からのお返事です
「得意な△△で突き抜けて、将来その分野の仕事しちゃいましょう!」

そこには△△が大好きな人が集まっています
だから友達も出来ます
運動が苦手でもそのお仕事には差し支えないです
その頃には苦手科目のことなんて頭から消えています
大丈夫!


【優等生の悩み】
ずっとオール5を取っていた生徒さんがいました
みんなから尊敬され、先生方から信頼され、家族の自慢でした
でも進路相談の時期、その子は私に言いました

「私の得意って何ですか?」

何でも出来るって皆んな言ってくれるけど、「何でも出来る」は「何も出来ない」と同じだと
周りの皆んなは「◯◯になりたい」「△△校に行きたい」と将来の夢や目標を進路希望書に書いてるのに、自分は何も書けないと

いつも堂々としたその子が、泣きそうな顔をしていました

ハッとしました
得意科目と同様に、不得意科目にも意味があるのだと気付いたのです

【選択肢が少なかった私】
私は小さい頃から「体育」が壊滅的でした
体育がある日はマジで学校に行きたくなかったです
当然、通知表も散々たるものでした

小学校を卒業する前に
私の将来の目標から「体育」の文字が消えました

中学になりました
不器用にも程があるってくらい裁縫が苦手なので
「家庭科」も将来の目標から消えました

高校になりました
歴史で赤点を取りました
はい「社会」も消えました

残った科目から
いつも高得点が取れている科目を見ました
「国語」か「音楽」
自然と私の目指す道が決まりました

選べる道が多すぎて苦しんでしまった優等生
選べる道が少なくて、そこにしがみつくしかなかった私

どちらがいいとは言えないのだと教えてもらった出来事です


【ジャム理論】
いま皆さんはAという店に入りました
ジャムを買おうと思っています

どのジャムを買いますか?
下から選んでくださいね

A店
①いちごジャム②ブルーベリージャム③マーマレードジャム


決まりましたか?

なるほど!
食パンにたっぷり付けていただきましょうね


さて
いま皆さんはBという店に入りました
ジャムを買おうと思っています

どのジャムを買いますか?
下から選んでくださいね

B店
①いちごジャム②ブルーベリージャム③マーマレードジャム④りんごジャム⑤アプリコットジャム⑥梨ジャム⑦ラズベリージャム⑧メロンジャム⑨柿ジャム⑩桃ジャム⑩①ぶどうジャム⑩②夏みかんジャム⑩③レモンジャム⑩④バラのジャム⑩⑤もう読むのがイヤになった⑩⑥マスカットジャム⑩⑦ストロベリージャム⑩⑧いちじくジャム

決まりましたか?

私は⑩⑤を選びました
そう何も手に取っていないのです

定番の①②③を選んだ方
本当に①のいちごジャムが良かったですか?
選ぶの面倒くさくなって、失敗がなさそうな「いちごジャム」にしませんでしたか?
⑩⑦の「ストロベリージャム」と何が違うんだろうと、裏のラベルをしっかり読んで比較しましたか?

ああ、面倒くさいですね

こういった現象を「ジャム理論」というそうです
選択肢が多いのはいい事だと思われがちですが、実際は「選択肢があり過ぎると選ぶのが負担になる」という人間の心理だそうです


【不得意科目の役目】
進路の選択も「ジャム理論」と同じかもしれませんね

不得意科目が多かった私は「△△は無し、□□も無し、◇◇も苦手だから、やっぱコレか〜」と思うしかなかったけれど、いま思えば選択肢が少ないおかげで「納得して進路を選べた」というメリットがあったんですね

「何でもできる」は「何もできない」と同じ
優等生と呼ばれた彼女が言った言葉の深さを感じます

得意科目だらけの人も、得意科目がない人も「失敗がなさそうな◯◯」を選んで「思っていたのと違った」と苦しまないように
定番と言われる「人生のいちごジャム」を選んだ理由を熱弁できるまで、じっくり吟味して欲しいと思います


【勉強ばっかりしてる子の実情】
冒頭の「うちの子、勉強ばっかりしてるんです」の悩み
その勉強が楽しそうなら全然OKです
だって楽しんでるんですから

いや、でも先生
・他の子は外で遊んだりテレビみて笑ったりしてるのに
・ウチの子は読書したり、勉強系You Tubeばかり観ていて、笑顔がないんです


はい、先生エラそうなこと言いますね
「おもしろい」には「interesting」と「fun」があります

お気付きですか?
上が「fun」で下が「interesting」です
笑顔がなくても彼らは十分楽しんでいるんです
心の中ではチョー笑顔です

人間には「知識欲」があります
小さな子どもが「これナニ?」「あれナニ?」と質問攻めしてきますよね
小学校に入る前から「◯◯ちゃん(自分)の名前ってどう書くの?」と聞いてきますね
知りたくてウズウズ、書きたくてウズウズ
これが中学生になった今も続いてるんです

でも
もしお子様が「オール5を阻止しないといけない」「絶対に成績を下げてはいけない」という「悲壮感」から勉強しているのであれば、ちょっと不安です
「それはナゼ?」と聞いてあげてください

話しているうちに「そうか、自分に負けたくないんだ」と気付く子もいます
「ライバルの◯◯に勝ちたい」と思っている子もいます
そこに気付いたら「悲壮感」は「モチベーション」に変わります

勉強ばかりしている子は「勉強」が好きなのだと思われがちですが、実は「知ること」が好きだったり、「分かること」が好きだったりします
夜中になっても寝ようとしないので声をかけると、ひたすら「理科」の実験道具の絵を描いていた「図工」好きな子もいます(ウチの甥っ子)

「コピーすればいいじゃん!」と、先生としてあるまじき教えを授ける「オバちゃんの意見」は完全に聞こえなかったことにされるので、オバちゃんは仕方なくKindle開いて読書しながら付き合います


【親子の会話時間をどう確保するか】
保護者の皆さんのお話をよく聞いていると
「勉強しなさいと言っているお母さんが少し羨ましい
うちの子は勝手に勉強してるから
勉強しなさいのコミュニケーションすら無い」
そんな想いが伝わります

でも大丈夫です
会話が無くても一緒にいる時間があれば、親の気持ちは子どもに伝わります

ただ、勉強中に誰かいるのを嫌がる子もいますね
そんな「集中派」の子には、LINEなどを使って「無理しないようにね」と送ってください

あ、「もう遅いから止めなさい」だと逆効果です
途中で止めさせられると怒るのは、ゲームも勉強も同じですし、最も重要な「心配の気持ち」が伝わりません

「勉強ばっかり」に見える子は、自立心が高い子が多いです
心配に「応援の気持ち」を乗せたメッセージにしましょう

【シンパイよりもシンライ】
こういう子どもは早くから親元を離れる子も多く、センパイ保護者には「親としての役目が短くて寂しい」とおっしゃる方もいます
寮や下宿住まいの我が子に何もしてあげられなくて
「私も『毎日、高校生の息子のお弁当作りが大変!』って気持ちを味わいたかった」とおっしゃる方も多いです

うんうん、寂しいですね
でも大丈夫!
彼らは大人になって何倍も親孝行してくれます
(これホント)

「自分を信じてくれた両親に感謝しています」
彼らは口を揃えて言います

クールに見えるけど
彼らは本当は
とってもとっても優しい子たちですよ


いわゆる「フツー」とは違うお子さんを持った保護者は
「贅沢な悩み」だと言われ
なかなか理解してもらえない悩みを抱えてしまいますが

「心配」よりも「信頼」
これを目指しましょう

子どもから教わることって本当に多い
彼らの歩く道から教わることも多い

楽しみにしていてください!

見に来てくれてありがとうございます! 「国境の島」で先生してます。以前は香港で先生してました 先生として保護者としてオンライン上の親戚オバちゃんとして、子ども達に伝えたいことを文字や音声にしています (トップ画像は私が撮影した「島」の写真です)