彼への独白
それは、私がまだ赤いランドセルを背負っている頃だった。私はクラスの中で一番背が高い女の子で、クラスで一番小さな男の子に恋をしていた。
彼は私にとって全てが心をときめかせる存在だった。
いつもテストで満点を取って、字が綺麗で、食べ方も綺麗で、話しかけても私のことをからかわず何気ない会話をしてくれた。
さらにいえば、走るのも早かった。
競争心が強く、弟がいて優しい兄であった。
彼の苗字と私の名前は響きがあった。
私は彼に恋をしていた。
しかし、私はこの気持ちに素直になることはできなかった。なぜなら、私はそれ以上に自分に対しておごりがあったからだ。
私は、学級委員長で、成績表は全て最高評価で、字は綺麗で、食事マナーもよく、ミニバスケットのキャプテンで、姿勢も良くて、私に想いを寄せる同級生も少なくはなかった。スカウトをされるぐらいにスタイルも抜群によかった。
変な話だが、自分の恋愛市場での価値を過大評価していた。
だから、私からは想いを伝えることは考えてはいなかった。
その男の子は転校生で、自己紹介の時に心を奪われたのを今でも覚えている。
ある年のバレンタインには、その子の顔より大きいハート型のチョコを渡した。その子の苗字と自分の名前を合わせて書いて見たり、渡すこともできないのに手紙を書いたりもした。
初恋は叶わないという迷信を恨んだりもした。私の恋は、特別なんだと。
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今は、私は愛するパートナーがいる。
彼は、私の心に安らぎを与えてくれる存在である。
教養があって、美術を評価していて、料理も上手で、話し上手で聞き上手で、いつも私を笑わせてくれる。
さらに言えば、走るのが速い。
労わることを忘れない、苦労をしてきた優しい兄でもある。
わたしの苗字を素敵だと彼は褒める。
私は彼との恋を、違う何かもっと特別なものに変えたいと思っている。
彼以上に私が素直になれる存在はいない。
彼は常に私にその誠実さを証明してくれる。
私は、彼の最高の彼女として日々を幸せに過ごしている。
初恋は叶わないという迷信を今は恨んではいない。私の恋は特別だ。
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