バリ島のバリアンの話🔮
39歳独身、単独で移住を決めたバリ島。
そんな晴れやかなはずの人生の新天地でも、すぐさま
恋愛依存症を発症し、悩める日々を送っていました。
ある日の真夜中、住んでいたアパートの敷地で、
当時恋愛関係にあった男性と口論になり、
彼がその場を立ち去った後、一人ワンワンと
泣き崩れたことがありました。
その数日後、同じアパートの住人だったインドネシア人の女の子から、声をかけられました。
「あなた、この前あそこで泣いてたでしょ。
とても辛いのが伝わってきたわ。今だって、
とても悲しそうに見える。あのね、大きな声では
言えないんだけど、サヌール(地名)にすごい場所が
あるの。そこでは、一人のご婦人が神様とつながって、
私たちにパワーを授けてくれるのよ。それで辛い状況
から抜け出せた人、たくさんいるの。
あなたもよかったら、一度行ってみない?」と。
そんなきっかけで訪れることになったのが、
“バリアン”でした。
“バリアン”とは、日本で言うところの“呪医師”か
“呪術師”とか“シャーマン”のことです。
神々、宇宙、豊かな自然などから特別な力を得て、人々の病気を治したり、悩み事を解決に導いたり、
未来を予知したり、死者の声を聞いたり、多岐に
わたって、私たちを癒してくれるヒーラーのような存在です。
日本人である私たちには、なんとも馴染みのない
ことですが、ここバリ島では、ごく当たり前で身近な存在なのです。
誘ってくれた女の子曰く、そこを訪れる際には、
バリの正装とチャナンというお供物が必要だという
ことで、全て用意して向かいました。
私が伺ったのは、サヌールにあるバリアンです。
そこは一般的なバリ様式のご自宅でした。
その敷地内に、バリアンをサポートしていらっしゃる
神様をお祀りする部屋、また、実際に施術を行う
スペースなどが設けてありました。
バリアンであるご高齢のおばあちゃまと、
そのサポート役としてのおじいちゃまと息子さん。
ご家族3人で切り盛りしていらっしゃいます。
普段、儀式は日が沈んでから行われるらしく、
私たちも日没後、そこに到着しました。
儀式の開始を待っている間にも、次から次へと
集まって来る人々。
おそらく、その夜の相談者だけでも、軽く15組を
超えていたように思います。
バリアンのカウンセリングやヒーリングを受ける
のには、決まった料金設定はありません。
お布施という形で、チャナン(花びらを盛ったお供物)
の上に思い思いの金額を置いて、神様にお納めします。
施術を始める前、バリアンおばあちゃまの
体の中に、特別な力を宿す儀式が始まりました。
バリアンによって、それぞれ方法は違うと思いますが、このおばあちゃまの場合は、祭壇に向かって
マントラ(お経のようなもの)を唱えた後、
タバコをひと吸いすることで、特別な存在を体の中に宿していました。
このおばあちゃまとご縁の深い特別な存在とは、
インドネシアでは海洋を司る女神として知られる
“ニャイロロキドゥル”と、その“お母様”でした。
主に、“お母様”がおばあちゃまの体に入り、娘の
“ニャイロロキドゥル”と連携を取りながら、様々な
悩みに応えてくださるのです。
その“お母様”が憑依した後のおばあちゃまは、まるで
別人格でした。そして、次から次へと、パワフルに
丁寧に、休みなく施術を行います。
ご高齢のおばあちゃまには、すごくハードなことの
ように思われますが、おばあちゃまご本人ではなく
宿っている神的エネルギーによって動かされているからこそ、成しえることなんだろうなと思います。
日本のように、完璧なプライバシーが求められている訳ではないので、施術を受ける際には、相談内容は他の人にも丸聞こえだし、どんなことをされるのかも丸見えです。
かくいう私も、他の人がどんな悩みを抱えて来ているのか、とても興味がありましたから、実際に施術を受けてる人の様子に、目も耳も釘付けになっていました。
すると、なかなか子供が授かれない若夫婦、原因不明もしくは医師でも治せない病をわずらった人、ブラックマジック(黒魔術)によって誰かに呪いをかけられ、その呪いを解きにきた人など。本当に多岐にわたる悩みを抱えた人が、救いを求めてバリアンにやって来ていることが、分かりました。
その一つ一つに、丁寧に応えるバリアンおばあちゃま。嘘のような本当の、漫画のようなリアルの光景。日本人の私にとっては、とても興味深く新鮮な景色でした。
いよいよ私の番になり、バリアンのおばあちゃまの前に座ると、相談内容を伝えました。
おばあちゃまとのやりとりは、少し日本語ができるおじいちゃまが、通訳として助けてくれます。
相談に対するアドバイスをいただいた後は、おばあちゃまを通して流れてくる“ニャイロロキドゥル”のエネルギーを受け取ります。
それは、とても優しく包み込まれるようなエネルギーに感じました。
私はすっかりこの不思議体験に魅せられて、その後も、私を誘ってくれた女の子や、その他のご近所さん達と一緒に、定期的にこのバリアンを訪れるようになりました。
その中で、出会った人々や、目の当たりにした光景から、たくさんのことを感じたり学んだりしました。
それは、、、
もちろん、神様や特別な存在のエネルギーや施しが、直接的に病気を消したり、悪霊を追い払うこともあると思うのだけど、そういった奇跡のように見える現象って、結局のところ、自分の意識が整うからこそ起きる現象なのだろうなと思うのです。
バリアンを訪れて、アドバイスやエネルギーを受け取ることで、「よし!これで私は大丈夫だ!」という、自分に対する絶対的な確信が生まれるからこそ、その“私は大丈夫”という思いが潜在意識に働きかけて、見事な奇跡を起こす。
どんな現実だって、自分の意識の投影なのだから、自分のエネルギーを本来あるべき状態に整えてもらうことで、もちろん自分の意識だって整っていく。そして、問題だらけ(のように見える)の現実を映し出していた意識が、“大丈夫”の意識に変わり、問題が解決していくんだろうなと。
なぜ、そのように感じたのかというと、バリアンの常連さん、すなわち、悩ましい状況が一向に好転しない人たちの中には、自分の不幸をいつも誰かや何かのせいにしたり、いつも誰かや何かに幸せにしてもらおうとする、まるで自分の力を諦め切ってしまっているような人も見受けられたからです。
そうやって、自分の意識不在のまま「神様、仏様、どうか私を幸せにしてください!」と、一方的にお願いをするだけでは、せっかく流してもらうエネルギーを、十分に受け取れるだけの器が無いのと同じなんだろうなと思いました。
何はともあれ、日本の皆さんにも、ぜひバリ島にいらしたら、体験してほしいバリアン体験。
バリ島の人々が、神様や見えない存在をリスペクトして、共に生きていらっしゃる姿はとても美しいし、そのような在り方を目の当たりにすることで、本来、神々と共に生きてきた日本人のDNAを、良い意味で刺激してくれるのではないかと思うのです。
ちなみに、おばあちゃまバリアンに恋愛の悩みを相談していた私が、どのような経緯をたどったかと言いますと、おばあちゃまを通して“ニャイロロキドゥルのお母様”から伝えられた一発目のメッセージは、「この男は良くない。とにかくお金のことしか考えてないジゴロだ。」という、なかなかドストレートな一言でした。
ジゴロだろうがなんだろうが、彼を好きだった私は、どうやったら彼とうまくいくのかとアドバイスをもらい、自分でも「おおっ、、なんだか上手く行きそうだ」と思えるまで至ったんですが、結局、最後にこのバリアンを訪れた時に、「彼のあなたに対する気持ちは70%に減ってる」と宣告を受け、本当にその通り、数日後に彼から“私は彼女にできない宣言”を言い渡されるという衝撃の展開。
でも、バリアンに行く度に、「必ず自分の力で、今よりももっともっと幸せになります。だから、どうぞお力をお貸しください。」と、祈っていた私にとっては、その辛い展開も一つの通過点に過ぎなかったようです。
その後すぐに、現在の旦那が彗星の如く現れ、夢にまで見た結婚と妊娠というハッピーイベントまでもが立て続けにやって来る、一大幸せ期に突入。
「自分で自分を幸せにする」と誓っていた私に、いつもパワーをくださり、見守ってくださり、幸せの道はこっちだよと導いてくださっていたんだと思うのです。
そして、導いてくださった先の幸せは、当時の自分の想像や期待を遥かに超えるものでしたから、
“ニャイロロキドゥル”にも“お母様”にも、バリアンおばあちゃまにも、心からの感謝しかありません。
これを書いていたら、久しぶりにこのバリアンに行って、自分を整えたくなりました。
日本で流行っているらしいサ活ならぬ、バ活です。
ぜひ皆さんも、バリ島にいらしたらバリアンで整ってみてください。