歌の波

子どもの頃の私にとっての歌は、コミュニケーションが苦手な私の表現ツールであり、言葉を人に伝える一番好きな方法だった。歌にしてしまえば、うまくいかない言葉のコミュニケーションも、全て一気に伝わる気がしていた。

小学生から高校生まで合唱団に入っていた。大学では聖歌隊に入って、人と声をあわせることをしてきた。合唱は、とても面白くて、自分の声と人の声をあわせて大きな音のうねりを作るイメージ、私は時々音の波ができる瞬間が好きだった。

仕事をはじめて、合唱はやめてしまった。
仕事をして10年した時に、出身大学の現役学生とOBGで聖歌隊の練習をする機会があった。仕事が終わった後に練習場へ足を運んだ。私が向かったときには、練習はすでに始まっていて、現役学生だけで歌う曲の練習をしているところだった。

私は、学生達の歌を聴きながら、音の波が自分に押し寄せてくることを感じた。疲れた心が洗われて、キラキラしたエネルギーが心に染み込んでいった。感動して涙が出てきた。ハーモニーが美しいのも、もちろんあるが、若いエネルギーと言葉の力が音楽によってパワーをもって私の心を癒してくれたのだと思う。

仕事をしてから、ある合唱団の見学に行った時にも、同じ感覚を味わった。とてもレベルの高い合唱団だったので、ついていけなくなりやめてしまったが、やはり合唱の力を感じた。

歌の波は、いつも私の心を癒してくれる。歌っているのが人間であることが、その秘密だと思う。