IKERU個人向けは、こんな感じでやっています
毎月数回、個人向けのIKERUレッスンをやり始めて約1年。のべ150名ぐらいの方に来ていただいてます。
これまで自分が生徒のお稽古は、ある時間帯の中でいける時間に行って、花をいけて、先生に手直ししてもらい、いけ終わったらそれぞれ帰る、というスタイルでした。これは参加者が長期的・定期的に通う前提の場合は自分のペースで通えるためぴったりなのですが、私がやりたいのは、例えその一回しか来なくてもその時間内でいけばなの本質をぎゅっと感じる、という場づくり。
これまでいろいろな授業、学びのプログラム、会議、ワークショップの企画・運営・ファシリテーションをやってきた経験をふうわりと踏まえ、その時間での学びを最大化するような気持ちで、流れを組み立てました。とはいえ、気を張って完璧な場を創ろうとしたところで、一歳のベビーがうろうろしだしたり泣き出したりと、まあいろいろ起こるので、余白多めで。
まず、始まりと終わりの時間を揃えて、2時間半と決めました。基本的には時間通りに集まっていただき、参加した方々は同じ時間をしっかりと過ごす。そうすると、集中する時間も揃うので、より集中しやすくなる、というのがあります。
そして、必ず毎回、私がその日の花材を使ってデモンストレーションをすることにしました。基本の花型を絵に描く、という手もあるのですが、なにせ私は絵が絶望的に下手です。かつ、空間バランスの感覚、花のあるべき角度や位置を見極める感覚は、やはり3次元のまま観察した方が、身体で覚えられる。さらに、例えば花の使い方で、ここを切ると1本の花でも二つ使えます、とか、葉っぱも活用できます、みたいな、花材を活かしきるこつみたいなものも、やりながら説明ができます。
その上で、全員一斉にいけはじめます。いけている間は、私の師匠直伝、「基本放任。どうしても困ったら聞く」というスタンスです。わからないながら、こうかな、こっちかな、と試行錯誤する過程で、だんだんとこれまた身体で感覚がつかめてくる。その学びの立ち上がりの時間を大切にしています。
いけ終わったら、片付けてきれいにした上で、互いの作品を鑑賞し合う。これは、EGAKUという私の人生に大きな意味をもつアートのワークショップの真似っこ。EGAKUではそれぞれが絵を描いた後、絵を鑑賞し合うという時間をとります。同じ花材を使いながら、それぞれの花の個性が異なったり、どう花をいかしたいかの感性が違うことで、見事に違う作品ができあがるので、それを感じてもらうのが目的です。
そして、一人ずつ作品を台の上に載せて、ちょっとした手直しをして、写真をとる。この手直しは全員の前でやるので、なかなか緊張します。この時は「私ならこういける」ではなく、その人が花との対話で創り出そうとしている世界の実現をほんのちょっと手助けする気持ちで手直しをします。
最後は、その月のテーマとなる花に合わせた和菓子をいただきながら、感想などおしゃべりして、持ち帰りの花束をつくって、おしまい。
あ、それから、みなさんのいけている姿や作品をまとめたスライドと、写真セットをすぐ送るようにしています。終わった後でも、IKERUの時間の感覚を思い出せたりするように。
こうしたやり方で学びの密度が濃くなっているためか、IKERUに来てくださっている中から4名が私の所属している流派の展覧会に出品したのですが、数回程度のIKERU経験にも関わらず、それはまあ素敵な作品をいけて、華道界の全国紙に取り上げられてました。私の作品は載っていなかったのに!(笑)。
あとは、こういうやり方だと、毎回即興でばばっとデモンストレーションをしたり、公開手直しをしたりと、自分の精進ができます。自分の身体に宿るいけばなの感覚を改めて頼もしく思うこともあれば、まだまだだなと自分をいさめる気持ちになることもある。
まだまだ試行錯誤の段階ではありますが、たぶん私がこういう活動をやっていなかったら一生いけばなをやることはなかったであろう方々が、ぐーっと集中して花と向き合い対話しそれぞれに素敵な作品を創り出し、その時間を思いっきり楽しんでいる姿を見ると、「これは続けていこう」という確信が強まるばかり。心を整えながら、やるべきことをやっていきたいと思います。