花をいかすということは人をいかすということ
長いこと、お花の展覧会には、個人として出品していました。
花展によっては、ここはバーゲン会場か?というぐらいのごたごたの中で、なんとか心を落ち着けて、限られた時間の中でいつもの数倍の大きさの作品をいける。
展覧会でしかできないこの経験は自分にとってもとても大切で、いろいろむーっと思うこともありつつも、自分の所属している流派である古流松麗会の社中展、銀座松屋での古流協会展、そして流派を超えたいけばなコンクールという展覧会の3つには毎年出す、ということを続けています。
2017年から社中展に、IKERUに来てくださっている方々から出たい方を募り、「山崎社中」として参加し始めました。そしてその時から、自分だけでなく、他のメンバーのために花器と花の組み合わせを決める、という作業が始まりました。
やり始めて気づきました。私、この作業が、めちゃくちゃ好き。
はなどんや(とヤマト運輸なくして活動成り立たず、なぐらいお世話になっています)という10本単位から買える花の仲卸さんがやっている花材のオンラインショップのお花の写真を眺めながら、この人はどんな花器でどんな花の組み合わせいいかなーというのと、社中全体としての多様性やバランスの両方を考えて決めていきます。
この人はどんな花の組み合わせがいいかなーと考える際には、3つぐらいの軸があります。
①その人のイメージに合う花:その人に似合う色や服のタイプがあるように、人と花にもなんとなくの相性があります。個別の花で、「あ、この人はバラのイメージ」という人もいれば、「南国系の組み合わせが合うな」とか「和の花ですっとまとめる感じ」とか。その人のことを思うとどんな花かはふっと浮かんできます。
②その人のいけばなの経験度とフェーズ:花によって、いけやすい花と難しい花、というのがあります。どうやったら花がいきるかの見極めの難易度、とでもいえるかもしれません。どういけてもそれなりの格好がつく花と、ちゃんと人が見極めてあるべき場所・長さ・角度にいれないといきづらい花と。これは、その人のいけばな経験がどれくらいあるかで判断します。あとは、ちょっとスランプ気味のフェーズにいる方にはチャレンジ度を下げ、ここで飛べばもっといける!というフェーズの方には難易度を上げたり。
③その人の性格(主にレジリエンス):展覧会はいつもとは違う環境かでいつもより大きな作品をいける、これまでの自分を超えていける場なので、それなりに混乱したり煮詰まったりしたりすることもあります。そういう混乱に対しての強さ・レジリエンス、みたいなものも加味します。レジリエンスが高い人には、あえてその人のイメージを少し外した花や少しいけづらい花を混ぜてみる。そういう混乱を好まない人には、その人がそのままの自分でいけられる花だけにしておく、というような。
そして花器においても同様に、その人のイメージ、いけばなの経験度、レジリエンスの3つを踏まえて決めます。
2017-2018年の社中展は、それぞれ参加が5名ぐらいで、全員の経験が大体同じだったこともあり、そこまで意識せずに「この季節だから山崎社中としてこんな感じのイメージでまとめるか」ぐらいの感じで決めていました。
でも、2018年にIKERUとして初の単独展覧会をやるとなった時に、一気に参加人数が15名となり、かつ最初の頃からやっている人と、新しく参画した人とで経験値にもばらつきが出るようになった時に、明確に上記のようなことを意識し始めました。そして2019年4月28日の社中展(ページ最後に詳細)にも14名が出るので、その組み合わせを1週間ぐらいずっと考えて決め終わったところです。
IKERUに来てくださっている方が、ずっと感じていながら自分では言語化ができていなかったことを伝えてくださいました。
「花をいかすということは同時に人をいかすこと」
この人だとどんな花をいかすことができるか、と考えながら、どんな花だとこの人がいきるか、ということも同時に考えているような気がします。だから、この花と花器の組み合わせを考えるのがこんなにも楽しいのかも。自分の作品のための素材を選ぶ時よりはるかに盛り上がります。終わってしまうと寂しいぐらいに。
なので、やっぱりIKERUは、私一人が花と向き合って何かを創っていく、ということではなく、花と人がいかしいかされ合う場を創るということに自然と向かっているんだなあ、と改めて気づきました。
これについても、IKERUに来てくださっているまた別の方が、言語化してくださいました。
「花も、そこに集う人々も、それぞれが相互作用の中に可能性を引き出される場所、それが私から見たIKERUです。」
みなさまのおかげで私もいかされております。
古流松麗会 社中展
日時:2019年4月28日(日)10:00-16:00
場所:古流会館 東京都豊島区駒込3-4-2
費用:入場無料
IKERU | Mayuka Yamazaki | 山崎繭加 | いけばな
https://www.mayukaikeru.com
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?