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コロナがひとりのワーママをスタートラインに立たせてくれた話

私がnoteを書こうと思い立ったのはこの動画を見たとき。

けっこう前にTwitterで見て、Facebookで拡散されたものがまた最近社内slackでシェアされた。

この動画を見たとき、涙が出そうになった人は少なからずいるだろう。私も例に漏れずその一人だった。
でも、私が今回書きたいのはダイバーシティの話ではない。

ワーママとしての経歴

私のワーママ歴は約3年。
長男を出産したのが2016年5月、育休復帰したのが2017年4月だった。
長男を産む前は東京のwebマーケ会社で制作ディレクターをしていて、一応、小さなチームをまとめる立場をしていた。
夫の仕事の都合で、長男の産休開始と同時に茨城に転居し、育休中は茨城で過ごす。
web業界だからリモートワークでも働けるし、そのまま茨城からリモートワークしてもいいよと言ってもらい、すんなりと2017年4月に復帰することが決まった。
しかし、復帰前の面談で私に告げられた給与は、かつての半額以下の金額だった。そして、業務内容はひたすらアフィリエイトのための記事を書く、というものに変わった。私の評価指標は記事本数になった。
良い記事を書こうが、粗悪な記事を書こうが、どちらでもいい。本数ノルマだけが科され、記事テーマは自分で考え、ただただ一人でコツコツと書く日々が始まった。

「リモートワークさせてもらえるだけ有難い」
「子どもが熱を出して急に仕事を休むこともあるかもしれないから仕方ない」
「クライアントワークだとお客様に迷惑をかけるかもしれないし」
「対面打ち合わせができないんだからディレクターとしての仕事は難しいもんね」

そう自分に言い聞かせながら、働いた。
でも内心はめちゃくちゃ悔しかったし、悲しかった。
子どもを産んだら自分の価値はそんなにも下がってしまうのか、これまで積み上げて来た評価は、そんなにあっさりリセットされてしまうものなのか、と。

結局、私はその悔しさと悲しさに折り合いをつけることができず、2017年10月にはリモートでもディレクションをさせてもらえる別の会社に転職した。

ここまではただの昔話。オンラインディレクションを始めるきっかけを綴ったに過ぎず、当時の恨み辛みを言うためにこのnoteを書いたわけではない。

リモートでもディレクションはできた

転職して分かったのはリモートでもディレクションはできるということ。
slackやSkype、Dropbox、Googleカレンダー、それらのオンラインツールやクラウドサービスを駆使すれば出社せずともディレクションを行うことは可能だった。

ただリモートワークだと不利な要素が2つだけあった。

打ち合わせのやりづらさ

客先に出向いての打ち合わせ。
当時はまだオンラインMTGが浸透していなかったこともあり、別のディレクターが訪問し、私にSkypeを繋ぐ形でやるしかなかった。
そして、社内の打ち合わせ。
これも私だけがSkypeを繋いで行う形だった。

”Skypeがつなげるなら、MTGには参加できている”
一見そう思えるかもしれないが、現場はリアル対面で、私だけがSkype対面の場合、伝わるメタ情報の精度が違う。
誰かがボソッと言った発言は聞こえないし、ホワイトボードに書かれた文字は見えないし、現場でドッと笑いが起きてもなんで笑ったのかがわからないことも多かった。

それでも、そういうものだと私は受け入れていた。

雑談のしづらさ

リモートワークで雑談がしづらいというのは、最近リモートワークを始めた人なら実感できることだろう。私もそうだった。
オフィスで交わされる雑談、相談、課題感の共有、アイデアブレスト、突発的に発生した飲み会情報、そういったものをキャッチすることは難しかった。

それでも、それも、まぁそんなもんだろう、リモートなんだから、と思っていた。

コロナが変えてくれたもの

前提が長くなったが、ここからようやく本題。

コロナで全員がリモートワークという状況になり、前述2つのやりづらさが嘘のように消えた。

打ち合わせは、クライアントも、社内も、参加メンバー全員がそれぞれのパソコンの前に座って行うようになった。
伝わるメタ情報は、リアルよりは少ないけれども、確実にフラットにはなった。

雑談はslack内で完結するようになり、茨城にいる私でも、誰とでも雑談ができるようになった。

仕事がもっと楽しくなったし、私が前線に立つことも、当たり前のようにできるようになった。

ここで最初に紹介した動画をもう一度貼ろう。

もしこれが、

・20代独身男性
・40代既婚子なし女性
・30代既婚子あり男性
・20代既婚子あり女性
・50代既婚介護家族あり男性
・30代独身女性・・・

と言ったように、さまざまなステータスの働く男女だった場合、

・30代既婚子あり女性(地方でリモートワーク)

の私は、一歩前に出ることがほとんど許されなかった。
時には、一歩下がれ、と言われるような処遇を受けた。

そのスタートラインからゴールに向かうことは、悔しく、悲しく、ときには虚しく感じることさえあった。
自分のゴールはどこなのか、見失いそうな時期もあった。

それでも、なんとかご縁に恵まれて、リモートディレクションをできる環境を見つけ、一歩下がれと言われることはなくなった。
そのことに私は満足しているつもりだった。

そして、2020年、コロナの影響を受けて、リモートワークが当たり前になると、今度は全員揃って一歩後ろに下がった。
独身の人も既婚の人も、子ありの人も子なしの人も、もちろん年代も問わず。

その、みんな一緒に下がった一歩は、私にとって、とても意味深いものになった。
地方に住んでるハンデ、それがほとんどなくなったのだ。
「これでようやくスタートラインが同じになった」と感じるぐらいに。

地方在住でオンラインでも仕事はできていたし、ハンデなんて感じていないつもりだった。
でも、もしかしたら、やっぱり、心の底ではどこか引っかかっていたのかもしれない。

全員で一歩下がったこのラインは、社会的に見ると理想的なラインだとは思わない。この後退した距離をどう埋めて前に進むかが今の企業人に課された課題だ。
でも一人で進むのと、みんなで進むのでは違う。
かの有名な言葉にあるように、みんなで行けば遠くに行けるから。

このスタートラインからどう走り出すか。
今度は、みんなの背を見て走るのではなく、横を見ながら、声を掛けながら走れる。
もしかしたら、私がリードランナーになることもできるかもしれない。

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