創作怪談 『図書館』

この町の図書館は結構品揃えがいい。
図書館の場合品揃えというのか?
それは置いといて、引っ越してきたばかりの人見知りで、友達がいない本好きの私にとって、人も少なく、誰かいたとしても、お爺さんやお婆さん、お散歩がてら絵本を借りに来た親子連ればかり、居心地がいい。

親の都合で何度も何度も引越しをしている私は学校へ行くのも嫌になった。

どこから引っ越してきたの?
何部だった?
なんで引っ越してきた?
趣味は?
特技は? 
彼氏はいる?

何度も何度も、聞かれて飽き飽きして、前回の学校から、出席日数足りるようにだけ気をつけている。
自慢では無いが勉強はできる方だ。

親が家にいることも稀で、食事代や生活費をある程度置いていてくれるから好き勝手やれる。
そんなこんなで、この町に来てからは図書館が私の居場所だった。

1番奥まった所に置いてあるテーブルは2人用で椅子は向かい合わせに置いてある。

何時ものように、そのテーブルを陣取って、教師に出された課題を終わらせ、図書館内の好きな本を読む。

今日は海外文学の気分だ。
王道の悲哀に満ちた恋物語。
半分ほど読み終わって、グーッと背伸びをする。
周りの景色を見渡す。
景色と言っても、見えるのは本、本、本
ふと一番近くの本棚に目を向ける、小難しく分厚い医学関係の本が並ぶ棚。
ここの本には手を出していない。

あぁ、今日もいる。

 毎回借り出されているのか、ただの空いているだけなのか、その本棚の同じ場所には必ず隙間がある。

そこにいる。

目がいる。

目玉が、こっちを見ている。
顔のようなものは見えず、
ただ、目玉1つがその隙間に置いてあるように見える。

最初に見た時は驚いて、声を出しそうになった。
玩具か何かをイタズラで置いているのか?

近付いてみたのだが、近付くとそれは消える。
見間違えかと、もう一度机に向かってそちらを見ると、やはり目がある。

こちらを向いている1つの目玉は、オシャレな人が本棚に置いている小物のように、そこに置いてある。

不思議だ。
目がこちらを向いているから、視線?が気にはなるが、それ以外困ったことは無いから、放っておいた。
なんなら愛着すら湧き始めて、最近はオヤジと名付け、おはよう、さようならと心の中で挨拶するのが日課だ。

しかし、これはなんなんだろうか?
司書さんに、この場所に何かいわくがあったりしませんかと聞いたこともあったりする。
(その後から、変なものを見る目で見られているが、気にしない)

この目玉はなんなのだろうか?


まぁ、どうでもいっか……



 








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