創作怪談 『公園の秘密』
小さな町に住む来実は平凡な日常を送っていた。
平凡ながらも忙しい大学生活、まだ少し慣れないが、一人暮らしの生活はそれなりに楽しいものだった。
休日には、友人たちと町を散策するのも楽しみの一つだった。
ある日、来実は友人たちとともに町にある古い公園を訪れた。幽霊が出るという噂がある公園だった。
そんな噂が気になって、しかし夜は怖いからという理由で、昼間なら大丈夫だろうと公園を訪れたのだが、その公園には昔ながらの遊具や古びたベンチがあり、「エモいね」なんて言いながら皆で写真を撮りあい、SNSにアップロードしていた。
幽霊の噂がある割には、公園を訪れる人も多い。
しかし、日が暮れる頃にはほとんど人が訪れなくなった。友人たちは楽しそうに写真を撮り、話に花を咲かせる。来実はふとした瞬間に一人の老人を見かけた。
老人はしわくちゃな顔で、白髪の真っ白な髪だった。
公園に来るには上品な服装で公園のベンチの隅に座っていた。誰も気づいていないようで、来実だけがその姿を見かけたようだった。老人は静かに時折何かを呟いているが、少し距離があるせいか、その声は風に消えてしまい聞き取れなかった。
老人は一瞬、目を離した隙にいなくなっていた。
友人たちは帰り支度を始め、来実もその流れに従って公園を後にした。しかし、次の日、来実は再びその公園を訪れていた。なぜだか気になってしまったのだ。
友人たちはバイトなどで忙しくて行けないという理由で、来実は一人公園への道を歩く。
公園に到着し、公園の中を見渡す。昨日と同じ時間なのだが、今日は、他に人はいなかった。
老人がいた。今度は老人を見つけたその一瞬で、その後姿が見えなくなってしまった。来実は恐る恐るその場所に近づいてみる。
そこには何もなかった。
ただ、不思議な気配が残っているような感覚に襲われた。
次の日から、来実は公園に行くのを避けていたが、なぜだか老人のことを忘れられなかった。
結局興味のままに、町の歴史やその公園について調べ始めた。すると、近所のお年寄りから気になることを聞くことができた。
その公園の場所にはとある家があって、昔一人の老人が住んでいた。
老人は、その地域の人々から疎まれていたそうだ。理由は当時子どもだったそのお年寄りは、知らないと言った。
来実も調べてみたが、いくら調べてもなんの情報も出てこなかった。
老人は孤独な生活を送っていた。町中で彼の姿が見かけることは、滅多になかった。
そして誰も知らぬ間に、老人は突然姿を消してしまったという。
そのうち、家は取り壊され、公園ができていた。
そんな話だった。
来実はその話を知り、孤独な老人の霊が未練を残し、元々家だった場所である公園に現れているのではないかと考えた。
来実は友人たちには言わずに、再び公園に行くことにした。夜が更け、公園は静寂に包まれていたが、老人の姿は現れなかった。
何度か公園に通ってみたのだが、結局老人が現れたことはなかった。
その後、公園で幽霊を見たという噂は一切聞かなくなったし、それ以上、その老人のことは分からなかった。その老人は来実に何か伝えようとしていたのではないか?
でも、何を伝えたかったのだろうか?
来実は公園での出来事を忘れることができなかった。