事例その1 病院へ行けないカズコさんの理由①
お孫さんと三階建の一軒家で、二人暮しのカズコさん(仮)。
軽度の認知症の症状があり、私が週1でヘルパーとして関わる様になる。私がヘルパーを辞める8ヶ月後まで結局、お孫ちゃんに会える事は無かった。
訪問看護とホームヘルパーを利用していたカズコさん。初めは警戒心バリバリで、浴室で洗濯を黙々としていた。背中を見せながら、
「新しいヘルパーさん?宜しくね〜」
と挨拶をしてくれた。
初めの1ヶ月こそ、必要最低限の事しか話してくれなかったが、だんだん顔を覚えてくれ、粘り強く、他愛もない事を話し掛け続け、信頼してくれ、同じ話を何回も話してくれるようになった。
ヘルパーの仕事の内容は、服薬している薬の残数を記録する事や掃除。カズコさんは、長い間、呉服屋で販売の仕事をしていただけあって、お話が上手!べらんめい口調で明るく話してくれる可愛らしい、ばばちゃん。
三階建ての家を掃除機掛けする私の後を、膝が痛いと言いつつ、追い掛けながら話し掛けてくれるまで、関係を詰める事に成功。
彼女は、自分の様子が何かおかしい事に気付いていた。危ないから火は使わないんだ、と、自炊をやめていた。宅配弁当を頼んでいるのと、歩いて15分の商店街まで一人で買い物に行っていた。
彼女は言った。
『80超えたら何かしらの病気にならないと死ねないんだよ。病気のひとつやふたつ怖かないよ!』
さすがです。カッコイイです。
ある時、ヘルパー事務所から相談があった。カズコさんを、かかりつけの病院へ連れて行って欲しい。1年前にヘルパーさんと家族と行ったきり、行けてない、と。御本人に、病院へ行って欲しい旨を伝えると、
『一人で行けるから大丈夫!』
と言うが、1年行けてないんだ、と。
フムフム。了解しました。
早速その話をカズコさんに、した。
「カズコさん、来週の土曜、私の掃除が終わった後、11時半に、○○医院に行って欲しいと、ムスメさんに言われたの。私、一緒に行った方が良いですか??」
『ああ、分かった分かった!大丈夫だよ〜!一人で行けるから。』
「分かりました〜。とりあえず、私、掃除だけしに来ますからね〜」
『分かった分かった!ありがとね!じゃあまた来週ね!』
(前振り完了!)
そしてワタシは帰宅。
そして次の土曜が来た。カズコさんちに行くと、、、
続く