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箱の中の女

わたしはギャンブルというギャンブルは何もしないのですが、唯一たまーにすると言ったらそれはスクラッチ宝くじです。といっても1年以上していないかな。むかしはたまーにヨガの後に同じエリアに宝くじ売り場があったのでスクラッチをするとヨガの後は気が良いのか時々五千円くらいはあたってうきうきとしていました。大抵は千円分買うのですが(5枚)全部外れます(笑)

本日は一粒万倍日とか書いてあって、本当の意味はよくわかっていないのですが何か運がいい日だよ、みたいなことだろうなという感じですよね。
結果をすぐ知りたいので、待つタイプの宝くじはあまりしないのでもっぱらスクラッチ専門です。そして宝くじ売り場というのはだいたい箱みたいなのに一人か二人女性が入ってますよね。大きさは一人用か二人用かという感じでそんなに大きくはないんですけど、あの箱でずっと仕事をしている印象です。この間はその箱からでてストレッチしているおばあさんくらいの女性がいました。ずっと座りっぱなしもむくみますよね。
あの箱が仕事場なのです。とても不思議な仕事場に思えます。

私は時々実家に帰っているので、最寄りの駅にも宝くじ売り場があります。そうすると、たぶんもう7年くらいはずっとその箱にいる人がいるんです。(要するにそこで働いている)メガネをかけているおばさまなのです。おやさしそうなおばさまです。
宝くじを買ったことがあるのでそれで知ってます。

そんなある日、私は仕事か何かに行かなくてはならずその駅のエスカレーターを降りていました。すると、エスカレーターに乗って登ってくる女性とすれ違いました。緑のカーディガンをきています。
「みたことある人だよね」
すれ違って3秒くらい経って気づきました。
「あ!宝くじ売り場の箱の中にいる人だ!」
そうなんです。わたしはその方が箱から出ている姿を初めてみたのです。
「思ったよりちっちゃい人なんだ!」
いつも座っているので背の大きさもわからないし、そりゃあ箱から出ている時間(仕事をしていない時間)もあるでしょう。宝くじ売り場は、販売していない時間は何をしているのか、考えたこともありません。
だけど、お金を扱う仕事場なことは確かなので、このご時世だから襲撃されないとは限らないし(そこはビルなども近いのでなにかあれば助けを求めることはできるけれど)、よく考えたら女性だけであの箱に入っているというのは治安がいいとはいえませんよね。やっぱりこのご時世だから。

都内などの宝くじ売り場は銀座を含めて、けっこうがらっぱちなお婆さんみたいな人が入っている印象があって、なにかあっても撃退できそうな強さを感じるのですけど、地方都市の場合はもうすこしおばさん感があります。
若くてきれいな女性が入っているのをみたことがありません(すいません)
やっぱり一人であの箱の中に入るのにはちょっとしたリスクもある気もします。エコノミー症候群になる可能性もあるし、人が来なかったら暇だろうし、かといって現金を扱うだけだし、売り上げを毎日どこにどうやっているのか、お金がたくさんあるのかないのか、銀行と繋がっているのかそうでないのか、色々な不思議がよく考えるといっぱいあります。
だけど、一般的に言ってパチンコなどに比べるとそこまでダーティなイメージはありません。(パチンコ屋さんはいまはクリーンなイメージありますけど、昔住んでいたところに換金所が近くにあったんだけど、やっぱりなんとなく雰囲気としては堅気ではないイメージもありました。裏路地みたいな感じで。時々換金している人もいて、数字が見えちゃったりして妙にリアリティがありました。コロナでちょっとつぶれたりしているところもありました。だけど、だいぶクリーンになっているのは知っています。もちろん)

きっとあの宝くじ売り場のお姉さん(というかおばさん)はそこまで給料は高くないでしょう。だけど、ちょっとだけ命を張って仕事をしている感じもします。もしかしたらそこまでは何も考えていないかもしれません。タバコやとドッキングしているところはまだいい気がしますが、最近タバコやっていうのも少ないですしね。あの箱のことを考えるとなにかすごく色々な想像が膨らみます。

なんとなく箱から出ているおばさんを見つけた時に、あのおばさんにも箱以外の人生もあるんだよな。だけどやめないということはけっこう居心地がいい場所でもあるんだろうか?(そこは二人用タイプの箱ですので一人用に比べたら広いかもしれません。だけどプレハブっぽいから寒そうだし暑そうですよね。クーラーが入るほどの大きさはないんだし)
とか色々考えます。
そろそろまた宝くじでも買ってみようかな。


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