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雪の日

私の母は10年近く前の11月に亡くなったのだが、その年の青森(私の出身地・実家所在地)は11月だというのに暖かく、コートが不要なくらいだった。
関東はもっと暖かく、母が危篤の知らせを受けた時、私はハナからコートなんか着ずに家を出た。
青森が寒かったら、母のコートを借りればいいわけだし。

葬儀を済ませ、母の遺品を片付けたりして、半月ぐらい実家に滞在した。
その間ずっと暖かったのだが、帰る日にいきなり大雪になり、積雪0cmから1日で積雪50cmになった。
(すみません、ちょっと盛りました)

実家の最寄りJR線も運休になり、動いている乗り換え線までタクシーで行った。
都会のように振替線がたくさんあるどころか、最寄り線しかないので、運休の場合バスやタクシー振替輸送になる。
タクシーなのに鉄道運賃で行けるので、ちょっとうれしい。
そうは言っても、タクシーが代行業務で出払ってしまっていてなかなか来ないとか、そもそも大雪なので道路が渋滞しているなどの理由で到着時間が読めず、早めどころか、飛行機搭乗並みにハチャメチャに早く家を出なければならない場合もある。
ワンチャン前日に新幹線最寄駅近くのホテルに宿泊することもあるが、それはそれで、居酒屋で飲んだりして楽しいっちゃあ楽しい。

暖かい関東に帰るからコートも邪魔だし、タクシーも新幹線も暖かいし、帰省した時同様、ノーコートだった。
新青森駅に着いた頃には吹雪になり、ホームでコートを着ていないのは私ひとりで、寒くて死ぬかと思った。
昼前に東京に到着して新幹線を降りると本当に暖かく、またコートの要らない世界になった。

普段いろんな意味でぬくぬくな関東だから、雪国民から見れば「関東大雪」なんて雪のうちにも入らず、それなのにワーワー大騒ぎしている関東民を見て、大笑いするわけなのだ。
母も生前、関東が大雪になるとよく電話で「大雪でも、あなたたちは大丈夫でしょう?」と言っていた。
(夫も雪国の生まれ育ち)

雪道の歩き方とか、運転の仕方とかはもちろんわかっている。
あと、雪かきの仕方もわかっているので、マンション駐車場の雪かきを(仕方なく)したりする。
しかし、マンションでスコップは準備されているのだが、それは工事用のスコップで、甚だ重い。
ママダンプなんてあるわけもない。

そういうことなのだ。
雪かき用スコップもない。
スタッドレスタイヤも履いていない。
雪国で「冬靴(ふゆぐつ)」と言われる、靴底が雪仕様にはなっていない。
かいた雪を退かす場所もない。
除雪車もないので道路もボコボコになる。
街の仕様も装備も雪国ではないんだから、いくら雪国の生まれ育ちでも、「要」で「急」な外出の必要性がなければ家に籠るしかない。
生涯雪国で過ごした母には、逆に関東仕様が理解できないんだろうなと思う。

家に籠るしかないと書いたが、「しか」というか、結構好きである。
食料を買い込んで一歩も外に出ず、温かいお風呂に入って雪国の温泉に来た妄想をしたりする。
なぜか餅を焼いて子供の頃の雪国の正月の感覚になったり、温燗にした安い日本酒をなめたりもする。
それもなかなかに楽しい。

大雪や大雨などに弱い、というか、考えが甘い関東民っぽい見事な過ごし方だと自負する、雪の日なのである。


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マユチェル
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