見出し画像

大アルカナ 5 司祭・神官

はじめに

「風の時代」って最近よく聞くけど、「ホルスの時代」っていう言葉はあまり耳にしないよね。でも実は、タロットや西洋神秘主義に関心があるなら、こっちの方が面白い。

「ホルスの時代(Aeon of Horus)」は、アレイスター・クロウリーが**『トートの書』**で提唱した概念で、単なる占星術の話じゃなく、人類全体の霊的進化や意識の変化に関わる壮大なテーマ。

クロウリーによれば、歴史には**3つの時代(アイオーン)**がある。

  1. イシスの時代(母なる女神の支配する時代)

  2. オシリスの時代(父なる神、犠牲と従順の時代=キリスト教的価値観)

  3. ホルスの時代(自由・意志・個の覚醒の時代=新しい霊的秩序)

これ、なんとなく「風の時代」にも似てない?古い価値観が終わり、自由と変革が求められる時代っていう点では、占星術的な「風の時代」とクロウリーの「ホルスの時代」はリンクしてる。

で、この変化を象徴するのがタロットの**「神官(The Hierophant)」。ウェイト版や他のタロットだと伝統や権威を象徴するカードだけど、トートタロットでは「新しい時代を導く者」**という、ちょっと皮肉の効いた意味を持つ。

じゃあ、「神官」は風の時代やホルスの時代とどう関係するのか?
タロット・占星術・グレートイヤーを絡めて、じっくり考察してみよう!

ウェイト版とトートタロット共通の知識

「神官(The Hierophant)」のカードは、タロットの体系の中で特に象徴が多い。ウェイト版とトートタロットで解釈は異なるが、基本的な概念としては共通する部分もある。生命の樹との対応、ヘブライ語、星座、そして歴史的な変遷を押さえることで、神官の本質が見えてくる。

1. 生命の樹における神官の位置

タロットの大アルカナは、生命の樹の22本のパスに対応している。神官のカードは、ケセド(慈悲)とコクマー(知恵)を結ぶ「ヴァウ(Vav)」のパスに対応している。

ケセドは秩序や慈悲、物質的な安定を司る領域であり、コクマーは宇宙の知恵や直感を象徴する。この二つを結ぶ神官のパスは、**「宇宙の知恵を地上に伝える者」**としての役割を持つ。

ウェイト版の神官は「伝統的な教えを広める者」として描かれ、従来の宗教的秩序を体現する。一方で、トートタロットではその役割が変化し、「新しい時代の知識をもたらす者」という要素が強調されている。


2. ヘブライ語「ヴァウ(Vav)」の意味

神官に対応するヘブライ文字は「ヴァウ(ו)」であり、「釘」という意味を持つ。

釘は、本来離れているものを結びつける働きをする。

  • 神と人間

  • 天と地

  • 霊的叡智と現実世界

神官は、この結びつきを仲介する役割を果たす。単なる宗教的指導者ではなく、異なる世界をつなぐ存在といえる。特にトートタロットでは、従来の固定化された秩序を維持するのではなく、時代の変化に応じて新しい知識をもたらすものとしての側面が強調されている。


3. 神官に対応する星座

神官のカードは、**牡牛座(Taurus)**に対応する。

牡牛座は物質世界に根ざし、安定や継続性を重視する性質を持つ。神官が象徴する「伝統」や「知識の継承」との関連性が強い。また、牡牛座の支配星は金星であり、美や調和の原理がそこに反映される。

ウェイト版の神官は、この牡牛座的な「安定した秩序」「伝統的な教えを守る姿勢」を強く打ち出している。一方、トートタロットでは、この安定を超えて「新しい霊的秩序を示す存在」としての側面が加わる。時代の変化に合わせた知識の伝達者であり、単なる伝統の守護者ではない。


4. ヴィスコンティ・タロット、マルセイユ版の神官

タロットの歴史を振り返ると、「神官」のカードは長らく宗教的権威者の象徴として描かれてきた。

  • **ヴィスコンティ・タロット(15世紀)**では、「教皇」として表現され、ローマ・カトリックの権威を示すものだった。

  • **マルセイユ・タロット(17世紀)**でも、「法王(Le Pape)」として登場し、宗教的秩序の維持者としての側面が強調されている。

ウェイト版の神官も、この流れを引き継ぎ、「伝統を重んじる者」として描かれる。

しかし、トートタロットではこの枠を超えて、「新しい時代の神官」としての解釈が生まれる。ホルスの時代において、従来の宗教的秩序に縛られるのではなく、新しい知識をもたらす者としての役割が強調されるのが特徴的だ。

ウェイト版の「神官」の象徴


Wikipediaより転載

ウェイト版タロットの「神官(The Hierophant)」は、伝統・宗教・知識の継承を象徴するカード。でも、それだけではなく、「知識を管理し、ふさわしい者にのみ伝える存在」でもある。

ウェイトは、このカードを「教皇(The Pope)」ではなく、「神官(Hierophant)」と名付けた。その理由について、彼はこう述べている。

「彼は三重の冠をかぶり、二本の柱の間に座しているが、これらの柱は高位の女司祭が守護する神殿のものではない。」

The Pictorial Key to the Tarotより

ここから先は

7,332字 / 2画像

¥ 1,000

期間限定!Amazon Payで支払うと抽選で
Amazonギフトカード5,000円分が当たる

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?