番外編3:『薄暮』から考えるパロディ(第二部)
第二部:庵野監督編
庵野秀明氏のファンからは「全く関係の無い山本氏と一緒にするな!」という声も聞こえて来ましょうが特撮作品からのパロディが多いことから庵野氏について考えます。
(ちなみに第一部で取り上げた山本寛氏から庵野氏に対する見解は
等で述べられているので参考材料の一つに。逆に庵野氏から山本氏をどう見ているのかは筆者には不明。)
1:『(旧)サンバーバード』からのパロディ。
日本での初公開が1966年のことであるSF人形劇のことです。後の回でテレビ電話も登場する世界感でありながらその第一話「SOS原子旅客機」では"SOUND ONLY SELECTED"の状態、つまり顔を出さす音声通話の状態にして旅客機に爆弾を仕掛けたと語るフッドの姿が。
これが庵野氏監督作品の『新世紀エヴァンゲリオン』におけるゼーレの"SEELE SOUND ONLY"のテキストだけのモノリスの元ネタであるのが定説となっています。
エヴァの側で考えると最初に自己紹介含めての顔出しを行っただけで後は作画の手間を省くため・・・という見方もできなくはないですが。
(ここでフォロー。後述する漫画版『新世紀エヴァンゲリオン』ではvolume13においてモノリスとゼーレの顔像を重ねて描いたコマも。こちらは時間を掛けた分より丁寧になった描写があります。)
最も庵野氏が単なる一ファン以上に『サンダーバード』に関わったのは古く正式ライセンス製品である再編集版ビデオ『コンプリート・サンダーバード』が発売されたのが1985年9月5日のことでした。
この節の最後に余談を。
間もなく劇場版『サンダーバード』の映像ソフトが発売になるので、サンダーバード1号(以下”TB1")発進シーンについて一考。TB1の機体上面には"THUNDERBIRD"の文字が記されています。劇場版においては発進直前おいて機体がカメラに対して横を向いたままのため見えなくなるのに対して、劇場版より前に制作されたテレビシリーズでは終始文字が見えます。
劇場版の方が途中で機体が転回する不自然さをなくした結果によるものでしたが、テレビシリーズではより長い間"THUNDERBIRD"の文字が見えていました。この点に対する指摘も庵野氏からだった記憶があります。演出は整合性の順守よりも視聴者へのアピールを行うことが時に大事でしょう。
2:SF特撮ドラマ『謎の円盤UFO』からのパロディ。
「『謎の円盤UFO』を観ずして『新世紀エヴァンゲリオン』を語るなかれ。」『謎の円盤UFO完全資料集成』の存在を紹介しただけでもそう断言して良いでしょう。
・碇ゲンドウはストレイカー司令官
・冬月コウゾウはフリーマン大佐
からそれぞれ衣裳だけでなく性格付けも元ネタとなっていることが有名です。
ここで少々脱線。『新世紀エヴァンゲリオン』キャラクターデザイン兼漫画版作者貞本義行氏からの『謎の円盤UFO』への思い入れはについては庵野氏より資料が少ないです。
とはいえ貞本氏が「エヴァンゲリオン」に関わった仕事量は半端では無く
ゲンドウ、コウゾウの姿を描き続けたのみならず時間が掛かっても漫画版を完結させました。
さて庵野氏に戻ります。最も『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』のエンドクレジットに『サンダーバード』の日本国内での販売権利を持つ「株式会社東北新社」並びに「謎の円盤UFO」の文字があることが全てを語るでしょう。言わば”公認”でパロディを行ってきました。
第二部のまとめ
さて、ここでこの他にも庵野氏は様々な特撮作品からの元ネタを自らの監督作に反映させていますが、問題なのはそれらがどれだけ意味のあることなのか?ということ。
例えばドラマ『スペース1999』の話の発端は1999年9月13日に起こった月での出来事から。そしてそのちょうど1年後はエヴァでのセカンドインパクトの日。どちらも劇中で天体移動軸に多大なる影響を及ぼしたのだからその両方を知って「いかに大変な日か」と「監督」筆頭とするスタッフの存在を抜きに解釈してもいいでしょう。
少なくとも私には庵野氏のパロディ要素が「無くてもいい」とは言えません。参考にするだけではありません。模倣元作品の様式や作風の研究結果をビジネスにしているのですから。
終章
改めて最初に協調した「セルフ」の意味を確認。
「自身。自分」
やれやれ山本氏は漫画原作からのアニメ化であっても作品は監督のものだと言いたいのであろうか。『謎の円盤UFO』のパロディからはじまったゲンドウ、コウゾウの衣裳を描きまくった貞本氏は大いに笑える権利がありましょう。
また「セルフ」なるものを考えるには『ドラえもん』「正義のみかたセルフ仮面」の一読を。この回のメインゲストとなる「セルフ仮面」の装備はドラえもんの道具ではなくあくまで劇に使った単なる衣裳。
つまり、この回はのび太自身の力(まあ大人を呼んだだけというのもあったが)で様々な難題を解決してゆくお話。
「"セルフ"パロディー」を一笑に付すことが出来る人物に野比のび太をも加えたい次第です。
お約束の註釈
1:『私の優しくない先輩』の原作者は日日日氏です。また映画版主演は川島海荷、金田哲の両名です。
2:原作の無いオリジナル作品に言及する際には主演者らのお名前を出すのが一般的です。
『Wake Up, Girls!』の主な出演者は
吉岡茉祐、永野愛理、田中美海、青山吉能、山下七海、 奥野香耶、高木美佑
の計7人です。
3:『らき☆すた』の原作者は美水かがみ氏です。
4:『涼宮ハルヒの憂鬱』を含む一連の「ハルヒ」シリーズの原作者は谷川流氏です。また挿絵はいとうのいぢ氏が担当されました。
『(旧)サンダーバード』、『謎の円盤UFO』、『スペース1999』含む一連のイギリスSF作品はジェリー・アンダーソン氏が主に手掛けた作品です。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?