見知らぬ男に言われた6年前の言葉が、今でもずっと心に残っている話を、今日初めてしてみる。
ふと、今から6年前のことを思い出した。
というか、その時のことが、良い意味で今でも忘れられなくて、ふとした瞬間に何度も思い出してしまうのだ。
今日はそのことについて書いてみようかな、と思う。
その日は、大学3年の夕暮れ時だった。
ケーキ屋のアルバイト帰りだった私は、ひどく落ち込んでいた。
とにかく不器用な私は、仕事を飲み込んで慣れるまでに、とにかく時間がかかる。
一度できるようになってしまえば、無敵状態で仕事をこなせるんだけど、その段階にたどり着くまでの道のりが、いつもとにかく長くて、壮絶なのだ。(ちなみにケーキ屋の仕事は、始めて2年後の、大学4年の春にやっと慣れた。そしてそのケーキ屋は、秋に潰れた。笑)
その日も、会計でミスをしまくり、ケーキを倒して廃棄を山ほど作り、商品を詰め間違え、勤怠の入力を忘れて店長の仕事を増やし、もう何をやっても空回りばかりで、消えたくなっていた。
やっとの思いでバイトが終わったのだが、気持ちがブルー過ぎてそのまま家に帰る気にもなれず…
ふと思い立ったのが「あ。海でノート書こう。」だった。
当時の私は、頭の中のごちゃごちゃした感情を整理するために、よくノートを書いていた。
愛用していたのは、B5サイズのちょっとコンパクトなノート。
おそらく1年で2〜3冊はゆうに書いていたと思う。
バイトでの失敗、どうしたら上手くいくかの計画、人には言えない気持ちや不安、そして将来の夢ややりたいこと。
とにかく、何でも書き出していたし、どこへ行くにも、そのノートを持ち歩いていた。
友だちが全然いなかったし、家にも居場所がなかった当時の私は、そうするしか自分の気持ちを吐き出す手段がなかったのだ。
だからその日も、バイトでモヤモヤしている感情を、ノートに書き出して一旦整理しようと思った。
そして、海辺に行けば、少しは気持ちが落ち着くかもしれないと思ったのだ。
やっとの思いで海に到着し、夕暮れの浜辺を歩いていると、Nikonの一眼レフを首から下げた、短髪の中年男性が歩いているのを何度か見かけた。
その時私は、ノートを書けそうな場所を探してフラフラと歩き回っていたんだけど、なんか私と同じように、フラフラしてる人がいるな〜って感じで。
それで、ようやく落ち着けそうな場所を見つけて腰を下ろしていたら、その男性が近づいてきて、私に声を掛けてきた。
「今、写真を撮りに来ていて、後ろ姿だけでもいいのでモデルになってくれませんか?」
と。
彼は、小さな会社の社長で、ときどき趣味でこうして写真を撮っているのだと言った(たしか建築関係の会社だった気がしたが、詳しくは忘れた)。
正直、社長というのが本当かどうかはわからなかったけど、一応それらしき名刺ももらった。
今考えれば、少し怪しいと感じても良かったかもしれない。
でも、そのときの私は、家も学校もバイトも何もかもが上手くいかず、全てがどうでも良くて、自暴自棄になっていた。
だから「もうどうなってもいいや」という思いで、カメラのモデルになることにしたのだ。
5分ほど歩いた所にある桟橋の端にたどり着き、私はそこに座って夕日を背に、カメラのモデルになった。
とくになにか怪しいことがあった訳でもなく、ただ座って後ろ姿のモデルをやった。
撮影が終わると、なんとなくの流れで、桟橋から駅のほうへ一緒に歩き始めた。
「将来、何かやりたいことはあるの?」
ふと、その男性が尋ねてきた。
私はちょっと考えて、
「カフェをオープンしたいです。こんな海沿いに建てられたら嬉しいな、なんて」
みたいに答えた記憶がある。
すると、その後、男性はこう言ったのだ。
「将来やりたいことは、忘れずに心にずっとしまっておくといい。何年先になるか分からないし、うんと年を取ってからになるかもしれないけど、いつか叶うから。」
この言葉が、今でもやけに心に残っているのだ。
今思えば、確かに、心からやりたいと願ったことは、時間が掛かったとしてもたいてい叶ってきた気がする。
というか、そもそもやりたいと思わなければ、その夢に向かって進もうとすら思わないだろうし、諦めたらその瞬間で可能性は0になるから、当たり前といえば当たり前のことなんだけど。
その後、彼は私を夕食に誘ってきたが、さすがにそれは怖いと思ったので、断って帰った。
後日、名刺に書かれていた会社名で検索してみたけど、それらしい会社は見つからなかった。
今思えば、結構危ないシチュエーションだったのかも…と思ったりもする。
それでも、その時の言葉が、6年も経った今でも頭にずっと残って消えないのだ。
「やりたいことは、忘れずにずっと心にしまっておくといい。何年先になるかわからないけど、いつか叶う。」
本当に、ふとした時にフッと頭に浮かぶ。
しかも、定期的に。
あの男性が一体誰だったのか分からない。
この話も、今まで誰にもしたことがなかった。
だけど、何だかふと発信してみようと思った。
というか、あんな達観した言葉を誰かに言えるのって、シンプルにすごいなと思う。
なんか、悟り過ぎてて。笑
自分もいつか、そんな風に言えるときが来るのかな〜。なんて!
そんな思い出話でした(^^)
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