コインの裏と表
「あー! 恥ずかしい! どうしよう……」
あまりの恥ずかしさに、喜びも束の間、吹っ飛んでしまった。
「あれ違っていない?」
夫からの一言で、間違いに気づいてしまったのだ。
有頂天になって喜んだ直後、ドーンと落とされた気分になった。
その極端にまでに、気にしてしまったこと、それは……
たった一文字の漢字の誤字だった。
「え? たったそれだけのこと?」
そうなのだ。たかが誤字くらい、間違いくらい誰にでもあるし、誰も気にしないと、やり過ごせればいいのだ。
公のところに掲載された私の書いた文章のタイトルに、誤字を見つけてしまった。
わかった瞬間に、きゅっと身体に反応が出るほど固まってしまったのだ。
私にとって、その間違いは大袈裟だが、一大事件とも感じるほど、恥ずかしかった。瞬時に無意識に起こった反応だったのだ。
どうしてそう感じたのか?
間違えることに、必要以上に恐怖を覚えることに気づいた。
同時に、勝手に出来上がっている自分像。
自分のイメージが崩れる恐怖もあることに気づいた。
その延長には、自分が否定される、批判される恐怖へと繋がっていた。
そもそも、これ本当なの?
悲劇のヒロインになった自分が、繰り広げる妄想劇場に過ぎなかった。
元々、人からどう思われるのかが、とても気になった。
「人からどう思われるか、気になる……」
こう話すと、決まって、それぞれ違う人の口から、同様なことを何度も聞かされたことがあった。
「みんな自分のことに忙しくて、あなたのことなど、そんなに関心がないし、どうも思っていないものよ」
要は、誰もあなたに関心がないから、気にしてクヨクヨするなんてナンセンス! ということだ。
それを聞く度に、
「そんなのわかっている! 頭でわかっていても、気になるから仕方ないじゃない!」
いつもそう言ってくれる人のアドバイスを聞く度に、心の中で毒づいていた。
あなたみたいに人間が出来ていないから、小さなことを気にしてしまうのよ……と。
人のことが気になると言えば、ソーシャル・ネットワーク時代。
便利で楽しい! と感じるのと同時に疲れてしまうことが多々あった。
SNSをやればやるほど、不幸になるという。科学的に証明されたというアメリカの記事を何度か目にしたことがある。
他の人達は、キラキラ良いことばかりがあって幸せそう。リア充が羨ましい。それに比べて、私の人生は……、と比較して自分はダメだと落ち込んでしまうという。
誰にだって嬉しいと感じる嬉しいことも起これば、ネガティブ感情が湧き上がる、悪いとされることも起る。
人生の波は、山あり谷あり、アップ、ダウンあるのは、
呼吸するのと同じくらい自然なことだ。
SNSの世界では、その人にある、すべてを見せているわけでない。
人の一部、光の部分を切り取って、SNSという場で披露しているに過ぎないのだ。
思い当たる節が、自分にもあった。
「あ~! よくわかる!」
と思い、人ごとではなかった。
ある人からの言葉から、傷ついたことをきっかけに、思うところがあり、日常的に投稿、チェックしていたフェイスブックと距離を置いたことがあった。
そう、完全に開くのを数ヶ月間、やめた。
その時、自分の中の悲劇のヒロインが登場。
誰も私が消えても、気にも留めてくれないし、誰も声さえもかけてくれないのね…… 寂しい。
笑ってしまうほど、メチャクチャ暗い考えが浮上してきたのだ。
今回の間違い事件で、「恥ずかしさ」が自分の中に充満してきた。その間に様々なことを考えている過程で、SNSのことを思い出し
はっ! と気づいたことがあった。
「本当だ! 誰も人のことに関心もないし、気にも留めていないじゃない!」
そんなもんなのか!? ということだった。
コインの裏か表か?
実際には、ものごとに裏も表もない。
どう出来事を捉えるかで、見方が完全に変わることに気づいたのだ。
誰も私のことを気にしていない=私も人からどう思われようと気にしなくていい!
という答えが出てきたのである。
誰も私のこと気にしてくれない……と、肩を落として泣く必要もないのだ。
誰も私のことなんて気にしないよね~。そうであれば、言いたいこと、やりたいことを、どんどんやってみたら~いいのだ!
そうか!
そんなことを発見してしまったのだ。
以前よく言われた
「あなたが思っているほど、他人はあなたのこと気にしていないわよ!」
その言葉の意味がやっと自分事として、わかった瞬間だった。
恥ずかしいという感情が起こる原因は、きちんとしていないとダメという思い込みから。
こうあるべき! こうしなきゃ! 無意識で自分を縛り、抱え込んでいた重い想いに気づいた。
大丈夫!
だ~れも、あなたのこと気にしないから、怖がらなくていいよ。
否定したり、批判したりする人というのは、幻の存在だから。
起こることは、コインの裏と表のように、ただ裏面と表面があるだけ。
正しい、間違っている……は、ないのだ。
そうであれば……
失敗しようよ、間違えようよ。チャレンジしようよ。
あるのは、新しい価値の発見だけだから……
ありがとう。
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