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第0日目-3【メンタル病んだので最長片道きっぷの旅に出ました】

 1月25日。最長片道きっぷの有効期間開始日であるが、私は未だ旭川にいた。
 依然として道北の暴風雪は止まず稚内行きの列車は運休、この日も足止めが決定した。

 あまりスタート前のことを長々と書いても面白くないと思うので、写真メインで極力簡潔にまとめていきたい。

↓前回はこちら


旭川滞在時にお世話になった「ホテルルートインGrand旭川駅前」
ルートインのホテルは基本的に朝食無料で、大浴場も完備しているのが魅力だ。
今回の旅で最も利用機会が多かったのがルートインなのだが、このときに公式アプリの会員になっておけと当時の私に言いたい。2泊で税込23,200円。

 私は旭川の宿を最初の予約段階で2泊分確保したが、これには理由がある。勿論翌日も列車が動かないことも想定してのことだが、もし翌朝に宗谷本線が運転再開される場合も、以下のような予定を考えたためだ。

  1. 朝9時発の下り宗谷号に乗車。稚内に12時42分に到着

  2. 稚内で観光(滞在時間約5時間)

  3. 17時44分発の上り宗谷号に乗車(最長片道きっぷの旅をスタート)し、旭川21時26分帰着、同じ宿にもう一泊して翌日に網走方面へ

 この予定ならば、大荷物をホテルに預けて身軽に行動できる上、2泊目の荷解きの手間もない。それに、当初予定になかった日中の稚内観光も可能になる。5時間あればバスで宗谷岬まで往復することも可能であろうし、悪天候でそれが叶わないなら駅併設の映画館で『ゴールデンカムイ』でも観るのも一興だろう。

 もう一つ考慮しないといけなかったのが、28日に乗車予定の「SL冬の湿原号」だ。
 もし翌26日に宗谷本線が動いても、上記の予定で行動するとこれには絶対に間に合わないのである。例えば下り宗谷号から、その折り返し便であるサロベツ4号(稚内13:01発~旭川16:49着)でとんぼ返りすれば同日中に網走まで乗り継ぎ、27日中には乗車駅の釧路に到達できるが、少々無茶である。
 このSL冬の湿原号については残念ではあるが指定席券を払い戻した。

特急カムイ7号(旭川10:25着)
789系1000番台 HL-1001編成

 前日に見られず悔しい思いをした『ゴールデンカムイ』ラッピングの789系だが、この日、カムイ7号としてやってきたのを写真に収めることができた。ひとまずこの旅の「サブクエスト」一つ達成だ。
隣には除雪用機関車・DE15形(1535号機)が停車していた。
機関車本体の前後にラッセルヘッドを連結した姿を見たのは初めてかもしれない。これから雪で運休になっている線区の除雪に向かうのだろうか。
12時頃、バスで旭川市彫刻美術館へ。
建物は、旧陸軍第7師団の将校や師団関係者の親交の場として建設された「旭川偕行社」であり、『ゴールデンカムイ』の原作漫画にも一部登場するシーンがある(と、友人に教えてもらったのが此処を訪れたそもそもの動機だ)。
館内には彫刻作品だけでなくこの建物に関する展示室もある。
再び旭川駅に戻ると今度は新型の除雪車・キヤ291形の姿が。
先程のDE15もそうだが、大雪で足止めを食らっている身としては、除雪に活躍する“彼ら”に対して祈るような気持ちにもなる。
札幌まで一往復し、カムイ17号として戻ってきた『ゴールデンカムイ』仕様の789系(HL-1001編成)。
折り返しのカムイ30号に乗車して一駅目の停車駅・深川ふかがわへ。車内は特に作品に因んだ装飾などはなく、通常の内装だった。
深川駅からは所定16:08発の留萌本線(4929D)で終点の石狩沼田いしかりぬまた駅へ。遅れていた別の列車の接続を取ったため10分程度遅れ、16:35頃に到着。
留萌本線は2023年3月末に石狩沼田~留萌間が廃止され、現在はここが終着駅だ。
筆者は廃止前の2022年に留萌まで乗車しており、同線の訪問はそれ以来である。
石狩沼田駅の駅舎内。
往路の列車(4929D)の遅れにより、滞在時間が5分程度しかなく外観の写真までは撮影できなかったのが悔やまれる。
折り返しの深川行き(4928D)は16:40発。深川駅には16:57着。
深川駅までの往復に利用した「Sきっぷ」。特急の自由席にも乗車できる便利な往復割引きっぷだ。同様の割引きっぷは他社にもいくつかあるが、近年は縮小気味なのが気がかりである。
旭川駅に戻ると翌日(1月26日)の宗谷本線の運転計画が発表されていたが、なんと翌日も運休が決定……
旭川買物公園通りのコメダ珈琲店でみそカツパンをヤケ食いする図。
いつになったら稚内に辿り着けるのだろうか……

 1月26日。この日も宗谷本線の運休で足止めが決定した。

 前日夜のことだったと記憶するが、函館本線の銭函ぜにばこ駅〜朝里あさり駅間の日本海沿岸を走る区間で線路が高波を浴び、札幌と小樽を結ぶ大動脈でもある同線が長時間に亘って不通になったというニュースを見た。まったくとんでもない時期に旅のスタートが重なってしまったものだと呆然とするばかりだった。

 しかしここまで動けないと、もう一生稚内まで辿り着けないのではないかとさえ思えてくる。
 以前「人が心を病む最大の要因は、(いじめやパワハラ等、他者から責められること以上に)仕事が思うように進まない状態が続くこと」だという説を聞いたことがあるが、この状況はまさに似たようなものだ。メンタル不調になって気晴らしのための旅に出たというのに、これでは全く本末転倒である。

 一応事前に北海道・東北地方の大雪などによる足止めを考慮して、3日程度の余裕日数を見込んではいたが、まさかスタート前に使い果たしてしまうとは思ってもみなかった。
 これ以上予定が遅延するとこの後の行程にも大きく影響するため、この最長片道きっぷ旅行自体の断念も検討しなければならない……


 宿泊していたルートインも、この日は満室でこれ以上の連泊ができず、泣く泣くチェックアウトして旭川の街へと繰り出した。おかげで強制的に外に出ることになり、宿に引きこもって鬱々とせずに済んだとも言えるのだが。

 旭川滞在も3日目。そろそろ暇つぶしのストックも無くなってきた。せっかくなので旭山動物園にでも行こうか……などいろいろ考えたが、結局見送った。まだ旅の「本編」が始まってもいないのに、歩き回って体力を消耗するような行動は控えたかった。

翌日、喫茶店「珈琲亭ちろる」にて。おそらく旭川でも有名なお店だと思う。
今後の計画を練りながら昼食。


結局この日も深川駅に足を運び、駄目押しで『ゴールデンカムイ』ラッピングの789系電車(カムイ19号)を撮影。
旭川駅に戻り、駅前のイオンを物色。映画館フロアには『ゴールデンカムイ』の巨大なポスターが。PRが大々的なように感じるのは、やはり作中の舞台でもある北海道だからなのだろうか。
せっかく暇だったのだから観てもよかったかな……とも思ったが、稚内の映画館で観るかもしれないのでここでは見送った。
余談だが私は丁度この旭川滞在中、同作の原作漫画を最終回まで読み終えたところだった。


この日宿泊したワイズホテル旭川駅前。前日までの宿が満室で連泊できなかったためやむなく移動したのだが、こちらも大浴場完備で快適なホテルだ。
シングルの客室(写真)からは旭川駅の駅舎が見えるが、ツインの客室はトレインビューになっているようだ。一泊7,650円。

 宿にチェックインした後、私はJRのウェブサイトで翌日の道北エリアの運行情報を確認した。この結果如何では、旅行の断念も考えなくてはならない。

 しかしそこに並んでいたのは、宗谷本線の運休の情報だった。まさかのゲームの本編スタート前からのゲームオーバー!?

次回に続く。

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