妊娠ってこんなんだったのか!③
【1.妊婦になってからのこれまでの流れ】
③安定期
いよいよつわりが落ち着いた5か月目、待ち望んだ安定期に入ることができた。
というのも流産のリスクが大きい妊娠初期には、3つの壁があるからである。
妊娠判明次点で「子宮外妊娠をしていないか」の第1の壁、そして受精卵が大きくなって「心拍が確認できるか」の第2の壁、そして流産の可能性がぐっと減る「安定期」という第3の壁が妊婦と赤ちゃんの前には立ちはだかる。
妊婦とこれまで関りの少なかった方はは放っておけば安定期に入ると思っている人もおられるかもしれないがそれは大間違い。妊婦は無事赤ちゃんとこの壁を乗り越えられたのか、毎回試験を受けるような不安な気持ちで健診を受けているのである。
安定期に入ると人によるがつわりが落ち着く人が多いため、幸か不幸かグッと食欲が増す。特につわりが重く満足に食事がとれなかった方は、ご飯を美味しく食べられる幸せを実感し、時に食べ過ぎてしまうことが多い。
「妊婦は赤ちゃんに栄養をあげなきゃ!二人分ごはんを食べなさい」と言われることも多いが、それは間違いである。実は妊婦が安定期に摂取すべきカロリー基準は、普段のカロリープラスたった250kcalという微々たるもの。しかも、妊娠中はエネルギー吸収率が大幅にUPするのだから、私の感覚としては普通に3食摂取しただけで月に2、3㎏は余裕で増えてしまう...
それを知らなかった当時の私。周囲の先輩方から「出産後は子供中心の生活になってできないことが増えるよ!今しかできないことを心済むまでやっておいた方がいい!」とアドバイスをいただき、安定期に焦って旦那とお出かけをしまくった。
今しかできないこととは、具体的には焼き肉(焼き網が小さい子供には危険)、ラーメン(カウンター席は子供を連れていけない、子供がいるとゆっくりラーメンを食べられず麺が伸びてしまう)、映画や旅行やディナー(子供がいるとゆっくり楽しむことは不可能)などである。
出産後に後悔しないよう、私は毎週末旦那と温泉旅行や焼き肉に行き、結婚式場のレストランでディナーを楽しみ、平日はラーメンやカフェでランチを取った。
その結果、1か月で4㎏増という驚異の体重を叩き出し(当たり前である)、産科の先生には「太りすぎです!」と叱られ、栄養士さんに食事指導をいただいた。また、急激な体重増加と妊娠によるホルモンバランスの変化によって、忘れもしない12月23日、私は妊娠糖尿病と診断されてしまったのである。「今年はふたりで最後のクリスマスだね」と私は呑気にデパートのクリスマスケーキを予約していたのだが、食事制限のため私は断腸の思いでクリスマスケーキを我慢した。嬉しそうに大きな高級ケーキをほおばる旦那の顔は今でも忘れられない。
また、安定期にはひとつイベントが控えている。
「戌の日参り」である。
日本の暦は1日ずつ干支が振り分けられているのだが、妊婦は妊娠5か月目の最初の戌の日にお参りをすることで安産を祈願するとのこと。
無知な私は「なんで犬?」と思ったのだが、犬は1度の出産でたくさんの子供を産み、お産自体も軽いことから安産の守り神として親しまれているらしい。
そこで、安定期に入ったばかりの戌の日に神社などで祈祷を受け、神社でいただいたり、自分で持参し一緒に祈祷を受けた腹帯を巻くことで安産を祈願するのである。
私もネットで祈祷を受けられる神社を検索し、旦那とふたりでお参りをしてきた。まだお腹もほとんど出ておらず、自分の中に本当に赤ちゃんがいるのか実感が湧かないまま参拝した私。安産祈願のお守りを買い、「元気に生まれてきてほしいね」と旦那と楽しく話しながら神社を出た際、今まで感じたことのない澄んだ気持ちになった。「妊娠って幸せなことだな」と初めて妊娠を喜べたのである。
また、安定期に入ってからは旦那の「妊婦の夫スキル」が格段にレベルUPしたように思う。
妊婦は妊娠が判明したその瞬間から、日々雑誌やネットで情報収集し知識習得をしていく。しかし、旦那は直接身体や心に変化があるわけではないため、なかなか「妊婦の夫モード」にアップデートするのが難しいのではないかと思う。
私も妊娠初期のころは、体調不良で仕事が思うようにできず、頭痛やつわりで寝込んでいる時に旦那が飲みに行くと「私だって飲んだり好きなもの食べたい!!なぜ私ばかり我慢しなければならないのか・・・」とイライラしていた。旦那から「今妊娠何週目?」と聞かれると、「自分の子供のこともよく分かっていないなんて!!」と憤慨し、夕食後お菓子を食べる旦那を横目で見ながら「少しは気を遣ってよ!!」と文句を言っていた(旦那ごめん)。ベビーグッズ(抱っこひもやベビーベッド、肌着など)や産休に伴う会社への提出書類、産後区役所への提出書類なども調べて準備するのは全部私で、「旦那はいいなあ、仕事も生活もこれまで通り楽しめて!!身体も傷めず10か月すれば勝手に赤ちゃんができると思ってる!!」とかなりストレスが溜まっていたように思う。
ただ、妊婦生活を重ねていくと少しずつ、本当に少しずつだが旦那も「妊婦の夫」へレベルUPしていった。
つわりが酷いときには代わりに家事を全てやってくれ、私が食べやすいようにゼリーやヨーグルトを常備してくれた。体調不良のなかでも仕事をする辛さ訴えれば親身になって聞いてくれたし、名付け本や病院から持ち帰ったエコー写真をニコニコ眺めているのを何度も目撃するようになった(笑)休日ドラマ「コウノドリ」を楽しみにし、視聴後旦那は横で涙ぐんでいた。
特に友人から教えてもらった妊娠アプリ「トツキトウカ」と「ninaru」には非常に助けられた!!これらのアプリは、予定日を初期設定することで現在の妊娠週数や胎児の大きさ、成長具合(瞼ができました!とか胎動がそろそろ始まりますとか)、その時期に気を付けるべきことやよくある悩み事などを学ぶことができる。旦那は意外にも毎日チェックしているようで、「妊娠30週になったね」「今赤ちゃんはスイカの大きらしいよ、階段とか気を付けてね」と気遣ってくれることが激増した。教えてくれた友人、アプリを作ってくれた方々、本当にありがとう...
妊婦は日々自分の心と身体の変化に向き合っているからこそ、自然に母親モードへ移行していく。しかし、旦那はなかなかそうはいかない。そこで大事なのは「夫婦でしっかり対話すること」である。「妊婦はこんなにしんどいのに!旦那は分かってくれない!!キー!!」と察してちゃんを続けていても、旦那はテレパシーが使えるわけじゃない。しっかり自分の口から「何が辛いのか、どうしてほしいのか、何が不安なのか」伝えること、そして本でもアプリでもドラマでもいいから旦那とふたりで親になる準備をすることが大事なのではないだろうか。