妊娠ってこんなんだったのか!⑥
3.妊娠が分かった瞬間から始まる食事制限について
私が妊婦になってから日々地味にストレスになっていたのが「食事制限」である。
私は妊娠判明以降、友人と食事に行った際「え、それも食べちゃダメなの?可哀想!!」「うわー俺には絶対無理やー!女じゃなくてよかったー!」と何度か言われ、非常にモヤっとした記憶がある。
本人に悪気はないのは百も承知である。しかし、お腹に小さな命を宿している責任がある以上、それがどんなに嫌で辛くても私たちは食事制限を行わなければならない。
ただ、妊婦になってこんなにも「食べるのを控えるべきもの」「食べ過ぎないようにした方がよいもの」があるなんて、私自身恥ずかしながら妊娠するまで全く知らなかった。
また、「食べるのを控えるべきもの」「食べ過ぎないようにした方がよいもの」は誰も丁寧に教えてはくれない。多くの妊婦さんは自分で情報収集し、学び、気を付けなければならないのだ。知らなければ、赤ちゃんの発育に悪影響を与える可能性があるのにも関わらず。
「無知は罪」そんな怖いことがあるなんて!!こんなに大事なことを妊婦さん任せにするなんて!!常識として周囲の人々も知っておくべきじゃないのか!!
「妊婦の生活全般で気を付けるべきこと」はもはや義務教育で教えるべきなのではないか、とまで私は考えている。社会の人々が当たり前のように「赤ちゃんを健やかに育てるための知識」を持つべきだ。そうすればきっと、妊婦さんにもっと優しい社会が生まれるのではないか。
よって、まだ妊婦さんの食生活をあまり知らない方々へ、私たちが普段どのような食事制限をしているのか記載していきたい。
【妊婦が食べるのを控えるべきもの】
・生もの(生魚、生肉、生卵、お寿司、生ハム、ローストビーフ、スモークサーモン、ナチュラルチーズなど)
理由:妊婦さんは非妊娠時に比べ抵抗力が弱い。そのため、加熱不十分なものなどを摂取すると、トキソプラズマやリステリア菌などに感染するリスクがある。
まずトキソプラズマ、これは微生物の一種だが、妊娠中に感染すると胎児の死亡、精神発達障害、てんかん、麻痺、水頭症、脳内石灰化など様胎児の発育に悪影響を与える可能性が高い。また、トキソプラズマは猫の排泄物に混ざっていることがあるので、猫の世話やガーデニングや土遊びでの感染リスクにも気を付けなければならない。
また、リステリア菌は食中毒を起こす細菌の一種である。妊婦が感染すると、流産や胎児死亡、新生児の肺炎や肺血症、髄膜炎などのリスクになる。
感染後のリスクを考えると、めちゃがくちゃ怖くないだろうか...? 微生物や細菌感染は「ほんの一口」で感染することもある。だからこそ妊婦は、お肉は中が茶色くなるまで焼けているか確認してから食べ、大好きな生ハムやお寿司は禁止、つくねや牛丼に生卵がついていれば当然食べられないのである。
また、旦時が那も含めこれを知らない人も多い。私は仕事で必要な食事会で「伊勢海老お刺身コース」と当日発表され、自分だけ何も食べられなかった時があるが、今でもとてもとても恨めしい!!
・アルコール
理由:アルコールは胎盤を通して胎児の発育に影響を与え、流産、先天性障害のリスクを高める。特に胎児性アルコール症候群という典型的な症状(発育や成長遅滞、精神遅滞や多動症、特異顔貌や小頭症などの頭蓋顔面奇形、心奇形や関節以上など)を生じることがある。
私はお酒が好きなので、旦那が飲み会に行くたびに羨ましさでイライラするときが多かった。禁酒自体は慣れてしまえばそれまでで、むしろ翌日の倦怠感や胃のむかつきから解放され仕事に専念できることにはメリットすら感じていた。しかし、「お酒を飲んではいけない!!」という制約によって、「仕事頑張ったから飲みに行こう!」「先輩とがっつり話したいから飲みに誘おう!」ができなくなり、飲み会にも誘われなくなり、居酒屋メニューを口にすることが激減。その結果、ストレス発散の機会が損なわれたことが私には非常に辛かったのである。
【妊婦が食べ過ぎないようにした方がよいもの】
・カフェイン
理由:妊娠中はカフェインが代謝されにくく母体へ蓄積しやすい。また、肝臓の発達が不十分な胎児へも蓄積しやすい。それによって、早産や発育遅延などの悪影響が生じることもある。また、カフェインは母乳を通じて赤ちゃんに移行するため、赤ちゃんがイライラしたり落ち着きがなくなる、乳幼児突然死症候群のリスクを高めるとも言われている。
これは地味に1番辛かったかもしれない。毎朝の楽しみとして、また仕事中の眠気覚ましとして飲んでいたコーヒーについて、私は全てやめた(1日数杯程度なら許容範囲だが、私はなんとなく罪悪感が勝ってしまい飲めなかった)のどが渇いたとコンビニに飲み物を買いに行っても、カフェインは緑茶や紅茶、ウーロン茶などにも入っているため、買えるものといえばは水くらい。(太るのでジュースも避けていた)ペットボトルのノンカフェインのコーヒーや紅茶はネットでしか売っていない。粉末のノンカフェインコーヒーや紅茶も、スーパーを何軒かはしごしてやっと見つけられるような状態である。家では苦手な麦茶を飲んでいたが、飲み物の選択肢が水か麦茶かくらいになってしまい、カフェにもあまり行かなくなったのは地味にしんどかった。
・水銀を多く含む魚(マグロ、金目鯛、マカジキ、フカヒレ)
理由:魚は豊富な栄養素を含むため摂取が推奨されているが、ただ中には水銀を多く含むものがある。妊婦が知らず知らず水銀を摂取すると、胎盤を通じて胎児に蓄積され、特に神経の発育に悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、妊婦が摂取してよい魚の大きさが母子手帳などには細かく記載されている。
・ビタミンAを多く含む食べ物(レバー、鰻、ホタルイカなど)
理由:ビタミンAは赤ちゃんの発育に必要な栄養素のひとつであるが、過剰に取りすぎると催奇形のリスクになる。少なくても多くても良くないとは、バランスが難しい... そのため、私はうな重を一口だけ食べ残りは泣く泣く旦那へ。結婚式で出た滅多に食べないフォアグラも旦那の皿へ。また、旦那の親族が私の好物と聞いて送ってくださったホタルイカの一夜干しや沖付けも、よだれを垂らしながら我慢した。
・昆布やヒジキ
理由:昆布はヨウ素が多く含まれ、過剰摂取は胎児の甲状腺機能を低下させることがある。また、ヒジキはヒ素が含まれるため、大量摂取すると胎児に催奇形や脳障害のリスクになる可能性がある。
昆布やヒジキも栄養豊富で食べた方が良い。毎日毎食モリモリ取るくらいの大量摂取しなければ大丈夫であるが、私は「昨日もヒジキ食べたなあ」となんとなく避けてしまったりしていた。
・辛いもの(キムチ、タバスコ、スパイスなど)
理由:胃に負担をかけやすいので、妊婦の体調管理上は食べすぎ注意
・インスタント食品やスナック菓子など
理由:塩分や油分が多く、摂取しすぎると妊娠高血圧(胎児の発育不全、流産や死産)の原因になる。塩分に関しては、妊婦の摂取推奨量は1日7g未満とされる(一般女性の1日摂取平均量は10g弱くらい)
ざっと思いつくだけ記載してみたが、どうだろうか?
「食事制限めちゃめちゃ多い & 細かすぎる!!」と感じた方が多いのではないだろうか。
しかも、自分で調べて勉強しないといけないなんて!知らずに食べている人もいるだろうに!怖すぎる!
特に生ものを食べて感染した際のリスクの重さに恐れおののいた私は、家で生肉を切るときはビニール手袋を着用し、使用後のまな板は熱湯で消毒していた。焼き肉の時は、トングひとつは生肉専用にすることを徹底。少しでもレモンが生肉に接触して置いてあれば、そのレモンを塩タンに使うことをや避けた。
また、カフェインを避けようと飲んだハーブティーも後から調べれば子宮収縮作用があるので避けるべきとネットに書いてあったり、身体に良いからとに食べていたショウガや豆腐も取りすぎはよくないと耳にし、パエリアを食べる間にふと調べたサフランライスにも子宮収縮作用があるなんて、日常生活に落とし穴はたくさんある。
私はだんだんと毎日毎食の食事に神経質になり、不安であれば「妊婦 ○○」スマホで検索。気にしすぎだと自分でもわかっているが、もし自分が何も知らず食べたものが赤ちゃんを苦しめたらと考えると、目の前のおいしそうな食事に毎回疑心暗鬼になっていった。
他にも、摂取するタバコや薬にも気をつけ、妊婦は出産するまでの10か月、毎日毎食過ごしていかなければならない。
また、逆に摂取すべきと言われる葉酸(無脳症などの先天異常防止)、鉄分やカルシウム(妊婦に不足しがち、貧血の原因にも)をサプリで補ったりする妊婦も多い。
こんなにも大変な食事制限をこなしている妊婦さん、みんな威張っていいと思う!!
世の旦那さんたち、妊娠が分かったときには奥さんと一緒にこの食事制限について勉強してくれないだろうか。「え?これも食べたらだめなの?」なんて我関せずな発言をした際には、きっと奥さんは悲しい思いをするはずだから。
また、旦那さんたち、どうか奥さんの前でこれらの食べ物、飲み物を自分だけ美味しそうに食べるのはやめてあげてほしい。奥さんは、大好きなあなたの子供を健康に育てるためにこれらを我慢しているのだから。もしどうしても食べたい飲みたいのであれば、奥さんのいないところで食べ飲みする努力くらいしてくれないだろうか。
直接かかわらずとも、周囲に妊娠している人がひとりでもいるならば。一般知識として、妊婦さんはこれらのものを食べられない、たくさん食べてはいけないことを知っておいてほしい。知っていたならば、きっと妊娠している方々への接し方が少し変わってくると思う。配慮してもらったこと、優しくしてもらったこと、きっと妊婦さんは感謝するし、その気持ちをずっとずっと忘れないから。
私は旦那には「出産後にはご褒美として回らないお寿司に連れていってほしい」とお願いしている。頑張って産んだ後には楽しみが待っている、そう考えると少しだけ出産の恐怖が和らぐのだ。
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