妊娠ってこんなんだったのか!⑤


2.妊娠は不安でびくびくするもの

これまでは私の妊娠判明後からの流れを書いてきたが、以下からは「妊娠して初めて知ったこと」をカテゴリー別に綴っていこうと思う。


まず、妊娠を初めて経験した私が1番衝撃的だったのは「妊娠ってこんなにも不安で、怖くて、孤独なものなのか」ということである。

私がこれまで思い描いていた妊婦さんのイメージといえば「幸せそうな笑みを浮かべながら大きなお腹をなでる母性溢れた姿」である。

ただ、実際の姿は180度違うものだった。それはもう、恐ろしいほどに。


まずスタート地点の段階、妊娠判明直後から妊婦には日々不安が付きまとう。先述したように、3つの壁(①子宮外妊娠していないか→②その数週間後、無事に心拍が確認できるか→③安定期に入れるか)を乗り越えなければならない。


ご存知の方も多いと思うが、流産というものはほとんど妊娠初期に起こるものであり、その確率は平均15%ほどと言われている(妊娠時の母体の年齢にもよる)

15%と聞いてどう思われるだろうか。妊婦の6~7人に1人は流産する計算になる。私は初めてその確率を目にした時、「恐ろしく多いな」とおののいた。それだけ妊娠初期の流産は珍しくないのである。

流産の原因、その多くは「胎児の染色体異常」である。つまり受精した時点で染色体にエラーが生じていて、それ以上育つことができなかったからというのが主な理由であり、決して妊婦さん自身の生活や食事のせいではない。しかし、不幸にも流産を経験した私の友人は「自分が悪かったのだ」と自分を責め、心に相当大きなダメージを負っていた。

そのため、健診を待つ待合室で私は毎回「心臓が止まっていたらどうしよう...ちゃんと大きくなっているかな...」と祈るような気持ちで震えていた。トイレで真っ赤な鮮血を見たときに「お腹にもう赤ちゃんはいないかもしれないと」パニックで泣き叫んだ。それほどに怖かったのだ。


また、他にも妊婦を不安にさせる要素は日々の生活の中にたくさん落ちている。

「妊娠検査薬を使う直前、普通にお酒を飲んでいた...」とふいに思い出して不安になったり(妊娠超初期ではほとんど影響はないとされる)、何気なく食べてしまったものでも「これって妊娠してるとき食べてはいけないものだったのでは...?」と青ざめたり。

「重いものを持つと腹圧がかかって赤ちゃんに良くないと聞いたけど、重いものって具体的に何キロから?」「自転車って乗らない方がいいの?」「花粉症で辛いけど、飲んでいいお薬とダメなお薬が分からない...」「妊娠中のストレスは良くないって言われたけど、仕事を続ける以上ストレスかかるし...」と、生活の中で不安が驚くほどポンポンと湧いてくるのである。

中には「携帯電話とか電子レンジの電磁波が良くないらしい」「妊娠中に火事を見ると痣のある子供が生まれる」なんていう、トンデモな迷信もある。

ただ毎日過ごしているだけなのに、ふとした瞬間に不安がどんどん生じてくる。疑心暗鬼になって落ち着かず、ついネットで不安要素をググりまくるのはきっと妊婦あるあるなのだろう。

安定期に入るまでは流産の可能性をふまえ周囲に妊娠を公表しないという人は多いが、そうなると誰にも相談できず一人で孤独に不安と戦うことになる。

また、産むのは女性にしかできないからこそ、仕事に関しても「今後仕事を辞めるのか、続けられるのか、産休育休は取れるのか」「今のキャリアはどうなるのか」しっかり考えておかねばならない。


また、安定期以降に無事胎動を感じ始めても「あれ、今日胎動あったっけ...?なんか弱弱しい気がする...」と不安に終わりはない。実際私は「2時間以上胎動を感じない、又は弱いときは赤ちゃんが危険な状態になっている可能性があるのですぐ病院に来てください」と先生や助産師さんから指導され、1日に1回は、胎動が合計10回終わるのに何分かかったか計測して記録するよう指示されている。

無事臨月を迎えても、「出産で死ぬかもしれない」という恐怖が持ち上がる。私はわりと心配性な性格なので、もし自分に何かあったときのために旦那には遺書的なもの(日頃の感謝、生命保険や遺品について、埋葬の希望、赤ちゃんをどう育ててほしいかなど)を書き、生まれてくる赤ちゃんに向けてのメッセージ(人生で大事にしてほしいこと、つらいとき迷ったときに私がどうしてきたかなどの参考情報)を残した。「そんな大げさな!!」と言われるけれど、何かあってからでは遅いのと、自分が思い残すことなく前向きに出産を迎える踏ん切りとして残しておいた。何が起こるか分からないのが出産だから。


このほかにも沢山の不安や恐怖心を抱きながら、妊婦さんは自分のお腹の中で10か月近く赤ちゃんを育んでいく。お腹のなかの赤ちゃんの異変に気付けるのは私しかいない、出産するのも私にしかできないというプレッシャーに耐えながら。本当に妊婦って孤独で、不安で怖い。そして、妊婦って強くて、偉くて、尊いものである。

毎日何時も頑張っているからこそ、精神的に不安定になる日もある。八つ当たりしたくなったり、不安で涙が止まらなかったり。そうした時に、旦那さんや家族、友人の支えが力になる。私は周囲の方々にこれまで沢山励まされ、助言を受け、側にいてもらえた。本当に助けてもらった。だからこそ、身近に妊婦さんがいる方には、温かい気持ちを持って接していただければと願っている。

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