とある電車の落とし穴
ヤァ、久し振り。
と、フォロワーもいない世界に呟く行為にはドMのワイも、
流石にこたえるものがあります。
今日、野暮用で電車に乗りました。
快適な日常生活を心がけるには、日々の心構えが必要というもの。
ワイも、まるで石ころのようにたくさん落ちているトラブルの水風船を間違って踏み潰さないよう、気をつけて歩くのが常になっております。
ふと、ワイは電車内を見渡しました。
すると、そろそろ若いと言われなくなっただろう男性が停車駅でもないのに席を立ちました。
1番端の席だというのに。
捨てるには勿体無い気がする。
ワイは周りを見渡しました。
男共が立っています。だのに、誰も座らない。
ならば。ワイは徐にその席に座りました。
すると、尻に冷たさを感じました。
アッと、気づいた時には大抵の物事の好機というものは過ぎ去っているもの。
ワイはトラブルの水風船を踏み潰したようで。
正面を見ると、女子高生が2人。
スカートがとても短い。しかも、あられもない。
なるほど、先ほどの男性は、自分に降りかかる災難を予期していたのだろう。
「なに見てんの。キモいんだけど」
そうは言われなくとも、女子高生の話の種にされ、彼女達の学校で綺麗にその棚が植えられ、枯れ果てるまで馬鹿にされるのは必至。
それを予期したのだろう。あの男は。
ワイはスッと席を立つ。
さっき座ったばっかなのに。と車内の乗客が後ろ指を刺してくるようだ。
それでもいいのだ。
男には弁えるべき瞬間というものがあるのだ。
席を離れざま、先ほどの男とすれ違う。
自ずと目が合った。
「そうだろう?」
「いや、まさしく」
そういう問答くらいなら、目を通わせるだけでできる。
男なら。
帰り際にプロテインと揚げ鶏を買った。
揚げ鶏を食べようとした時、手が絡まった。
揚げ鶏はアスファルトの上にいた。
雨が降っている。
しばらく、それを見つめてやった。
雨の日は普段、外出しない。
少し気が変わっただけで、こうだ。
水風船を避けて生きていくという信条。
足元の水風船に気を取られ、上からのものには気が付かなかった。
雨が降っていなかったら、拾って食べていたものさ。
濡れたアスファルトの上に落ちてしまえば、揚げ鶏だろうとなんだろうと人間の口には合わない。
そもそも外出するべきではなかったのだろう。
ワイは水風船という足元に気を取られたばかりだった。
雨は災厄の元じゃあないか。
アスファルトで雨に打たれる揚げ鶏。
揚げ鶏。
ナァ。
不本意に殺されて、揚げられたことには同情するが、
今の君は薄い衣の上から水浸しになっている、まるでグラビアアイドルのようだよ。
電車の女子高生より慎ましく、エロいというものだ。
ワイはふと、あの電車の男を探していた。
なんとなくだが、
あの男なら、この無様で艶かしい鶏に同じく興奮してくれそうだったからだ。