SO LONG GOOD BYE 4.新年
2020年1月9日 京都府立文化芸術会館にて
京都府立医大のコンビニにはふつうのコンビニにはないものがたくさんある。
ケアぼうしや大腸内視鏡専用検査食などの医療用品から、ふつうのコンビニには売っていないような調味料まで。すぐそばに京都府立医大病院があるので、入院を見越したものなのかな、と感じる。
入院ってわたしは子供のころ以来したことがないのだが、他の人のお見舞いなど行くと、予想以上に生活でおどろくことがある。そりゃそうか。
町のコンビニは棚がガラ空きなんてことも少なくないが、このコンビニはいつでもみっちり商品が詰まっていて人口密度も高い。活気あるのだが、白衣を着た人や医療衣(なんていうのか分からない)を着た人が多く、独特の雰囲気がある。
新年初の府立文芸に訪れると、50周年ののぼりが立っていた。
予定より早巻きで稽古がはじまり、あやこさんが現場復帰。お勤めご苦労さまでした。なんだか患う前より元気になったそうだ。なによりです。
河井朗は今日出稼ぎに行っていた北海道から帰ってきて、キャリーケースを引いてそのまま稽古場に来た。あざやかな黄緑色のキャリーだった。
皆、今日はどこか饒舌だった。
河井朗は、ひさしぶりに知り合いに会ったから! と言っていた。
わたしも「今日なんかよく喋るな」と言われた。家から出て人と話すのがだいたい一週間ぶりだからだと思った。
一週間ほどずっと家でひとりで作業をしていて、それは自分で決めたことだしどっちにせよやらなきゃいけないし、その作業じたいにはなんの不満もないのだが、やっぱり化粧をして外に出て人と話すと気分がちがう。生活というか人生に張り合いができるなと再確認した。
おみやげを囲んで話をした。
今回、明確なワードがいくつか出た。言っていいのか分からないのでだまっておく。
なにかの拍子に、あやこさんが「〜〜3分」と言った。「3分は英語やで」と河井朗が言う。「日本語やで」とあやこさん。「英語やでと河井朗。「日本語やで」「英語やで」「日本語やで」「英語やで」
ちなみに「プン」はタイ語で「ちょうど〜した」という意味らしいですよ。
何やらごそごそと具体的な動きを指示している。
仕事道具を持っていると安心する、というはなしをした。
それが肩書きの代わりになるし、精神的な拠り所として機能する。
自分がいる意味が相手に伝わらないというのは不安だ。それってひょっとすると、存在する意味がない、という評価につながるかもしれないので。
わたしはたしかにカメラを持っていると安心する。
撮影の現場では、黒い上下でカメラを持つと、人は私をカメラマンだと認識してくれる。カメラマンであれば写真を撮るためにここにいるのだという理由が明確になる。
仕事の場だけでなく、わたしはカメラを持っていると安心する。人からの見られ方だけでなく、自分がここにいる理由が明確になる気がする。わたしは写真を撮るためにここにいるのだ。わたしの仕事は写真を撮ることなのだ。
そういうフィルターを一枚かますと、わたしって邪魔じゃないかなあとか、別にここにいる理由もないよなあとか、もう帰っちゃおうかなあとか、そういう余計なことを考えずにただそこにいることができる。
結局他者からの評価を気にしているというそれだけのことなのだが、道具ひとつで心持ちがこうも変わるのなら、お守りのようにしてそれを持つのもありだなあと思う。
河井朗は今日と明日で脚本を仕上げると言っていた。その言葉、年末にも聞いたような……。
帰り際、河井朗が「そこのパン屋さんに、愛美さんが好きそうな張り紙が貼ってあった」と教えてくれた。
「失敗したので12時から開けます」だそうです。好き。
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第41回記念Kyoto 演劇フェスティバル
〈U30支援プログラム〉採択作品
ルサンチカ『SO LONG GOOD BYE』
「人は一日八時間食べてはいられないし、一日八時間飲んでもいられないし、八時間セックスしつづけもできない。八時間続けられるものといえば、それは仕事だ。それこそが人が自分も他の人すべても、こんなに惨めで不幸にする理由なのだ。」
3CASTS vol.19 参加公演
2020年1月16日(木)
開場18:30 / 開演19:30
UrBANGUILD
【料金】
予約:1,800円+1drink
当日:2,200円+1drink
俳優割引:1,400円+1drink
第41回記念Kyoto 演劇フェスティバル
2020年2月9日(日)
ホール開場15:40 / 開演16:00
京都府立文化芸術会館 ホール
【料金】
一般前売:1,000円(当日1,200円)
高校生以下前売:500円(当日700円)