【#シロクマ文芸部】金魚鉢の思い出
金魚鉢を見て思い出す事がある。
あれは確か私が小学生の頃だった。
当時、生き物係というのを担当していて、私は金魚の世話をしていた。
しかし、不器用な私は一匹死なせてしまった。
当然先生にこっぴどく叱られてしまった。
「次、金魚を死なせたらしょうちしないですからね!」
そうキツく言われてしまったので、私は二度と金魚を死なせないと誓った。
新しい金魚が来てから、私は変わった。
絶対に飢え死にしてはいけないと、毎回金魚に餌をあげた。
その次の日も次の日も、これでもかというくらい餌をあげた。
しかし、ある時。
とあるテストの採点をするために並んでいると、金魚鉢の中にいる金魚が水面に浮かんでいた。
まさかと思い顔を青ざめながら、金魚の腹をつついてみた。
ピクリともしなかった。
大人になった今だからこそ分かるが、餌をあげるだけでは金魚は長生きしない。
しかし、この時の私はなぜあんなにも尽くしたのに死んでしまった理由が分からなかった。
そして、頭の中に先生の怒った顔が浮かんだ。
ここで、私は悪魔的な思いつきをした。
死んだ金魚を隠せばいい――そう思ったのだ。
これが金魚だから可愛いが、人だったら普通に犯罪だ――なんてツッコミを誰かに言われる訳もなく、私は昼休みにこっそり亡骸をすくい出して、花壇の中に埋めた。
万が一化けて出てきたら困るので、心の中でごめんなさいと祈った。
しかし、悪い事はすぐにバレるもの。
空っぽになった金魚鉢を見た先生は私に詰め寄ってきたので、泣きながら白状した。
先生は溜め息をついて、「もし今度何か失敗した時は隠し事をせずに、すぐに先生に言ってください」と指切りげんまんをして、事事なきを得た。
あの出来事からもう何年も経つ。
あの時、先生に言われた言葉を忘れずにここまで来た。
さぁ、空っぽの金魚鉢なんか見てないで、行こう。
会社横領事件の首謀者として、今から記者会見だ。
↓今回参加した企画はこちら