【#青ブラ文学部】何かが起きる
私はわかっていた。
女の第六感は鋭いとよく聞くけど……まさか身を持って実感するなんて思ってもみなかった。
私がこうして生きていられるのも第六感のおかげ。
キッカケはスプーンを落としたのが始まりだった。
朝のルーティンであるコーヒーを飲もうとして、いつも通りに砂糖を入れて混ぜようとしたら、手から滑り落ちてしまったのだ。
普通の人だったら「ついてないなー」とか言って新しいのと交換するかもしれない。
けど、私は違った。
今日は何か嫌な予感がすると思ったのだ。
いつもと違う何かが起きようとしている。
それが今日……私は辺りを見渡してみるが、何一つ変わらない日常があるだけだった。
私はコーヒーを飲むのを止めて、急いで寝室に戻った。
ベッドの上では愛猫と愛犬がゴロゴロしていた。
「チロ、タロ! 出かけるよ!」
口笛を鳴らすと、犬のタロがパチっと目を覚ましてベッドから飛び降り、そのまま部屋を出た。
チロは相変わらずのんびり屋さんなので、背伸びをして二度寝をするだけだった。
私は彼女を抱きかかえてゲージの中に入れた。
チロはスヤスヤと眠っていた。
私は棚から銀行の通帳と印鑑、犬猫の予防接種の証明書など……なくしてはいけないものをリュックの中に詰めた。
すると、タロがカバンをくわえて戻ってきた。
中にはリードと犬用のお菓子とドックフードが入っていた。
うん、賢い子だ。
飼い主の状況をちゃんと分かっている。
私はタロの頭を撫でると、猫用のチュールとキャットフード、あとは犬と猫のトイレシートをカバンに入れた。
よし、忘れものは……あっ、リード付けるの忘れていた。
私は急いでタロにリードをつけると、チロが寝ているゲージを持って家を出た。
すると、その直後だった。
巨大な足が私の家を踏み潰したのだ。
見上げてみると、スベスベした肌をした巨人が何かと対峙していた。
「ギャォオオオオオオ!!!」
遠くで巨人と同じくらい大きな怪物が叫んでいた。
巨人が人の家を踏みながら怪物の方へと向かっていった。
タロは吠えまくり、チロは怯えていた。
私は唖然としていたが、それと同時にもし第六感が働かなかったらと思うとゾッとした。
今頃、私達は巨人の足にペチャンコにされていただろう。
本当に第六感が働いてよかった。
「さぁ、行こう、タロ。ほらほら、吠えないの!」
私は口笛を鳴らして愛犬の気を逸らさせると、程よい力加減でリードを引っ張った。
とりあえず、しばらくは実家に戻ろうかな。
家のローン、どうしよう。
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