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鯨構文について
鯨構文とは、ふつうは次のような2つの形をいう。
no more ~ than A「Aと同様~ない」
no less ~ than A「Aと同様~だ」
A whale is no more a fish than a horse is.「鯨は馬と同様魚ではない」
A whale is no less a mammal than a horse is.「鯨は馬と同様ほ乳類だ」
しかし、ここではちょっと違う観点から説明してしんぜよう。おっほん!
鯨構文とは、「AならばBだ。しかしAではない。だからBでもない」、または「AならばBだ。しかしBではない。だからAでもない」といったふうに考えられる構文であり、形としては優劣比較・同等比較・条件文が用いられる。
A whale is no more a fish than a horse is.
この例文はこんなふうに考えられる。「鯨は馬以上に魚ではない。しかし馬は魚ではない。だから鯨だって魚じゃない(鯨はほ乳類だから)」と。この鯨構文を条件文的に言い直せば、こんなふうになる、「鯨が魚ならば、馬だって魚だ。しかし馬は魚じゃない。だから鯨だって魚じゃない」と。
これは同等比較の文でも存在する。
He is as welcome as a cockroach in the elevator.
こんなふうに考えられる。「彼はエレベーター内のゴキブリと同じくらい歓迎される。しかしエレベーター内のゴキブリなんて歓迎されない。だから彼だって歓迎されない」といったふうに。これを条件文的に簡潔にすれば、「彼が歓迎されるならば、ゴキブリだって歓迎される。しかしゴキブリは歓迎されるはずもない。だから彼も歓迎されない」とでもなろうか。
以上、2つの形式を熟語的に書き直せば、以下のようになる。
A is no more B than C「AはCと同様Bではない」
A is as B as C「AはCと同様Bではない」
優劣比較のほうは、「AはC以上にBではない。しかしCはBではない。だからAだってBではない」となる。同等比較のほうはといえば、「AはCと同じくらいBだ。しかしCはBではない。だからAだってBではない」といった調子だ。そしてどちらもより簡単に条件文に直せば、「CがBならば、AもBだ。しかしCはBではない。だからAもBではない」となる。
おわかりのように、実はほとんど同意である。注意点としては、同等比較のほうはどこにも否定語がないのに結果として否定的な訳になるところだろうか。そして、これは私も断言ができないのだが、ほとんど同意であるということは、ひょっとしたら書き換えも可能であるのかもしれない(厳密には文によるのだが)。
He is no more welcome than a cockroach in the elevator.
He is as welcome as a cockroach in the elevator.
この2つの英文は意味がとても近いように感じられるのだが。
最期に、条件文を用いた鯨構文を紹介しよう。辞書では修辞的条件文と呼ばれるものだ。
If you’re a genius, I’m Einstein!「もし君が天才なら、僕はアインシュタインさ」
これは、If A is B, C is D.という形で、「もしAがBならば、CはDだ。しかしCはDではない。だからAもBではない」というふうに考える形だ。「もし君が天才ならば、僕はアインシュタインさ。でも僕はアインシュタインじゃないんだよ。だから君だって天才なんかじゃないんだよ」といったふうに。
A is no more B than C.
「CがBである以上にAはBではない。しかしCはBではない。だからAもBではない」
A is as B as C.
「CがBであるのと同じくらいAはBだ。しかしCはBではない。だからAもBではない」
If A is B, C is D.
「AがBならば、CはDだ。しかしCはDではない。だからAもBではない」
以上が、私のいう鯨構文だ。なお大学入試では、優劣比較は狙われる表現だ。同等比較のほうは、まだ参考書などには記されていない形だが、入試問題には出題され始めている。条件文は、入試問題では私はまだ見たことがないのだが。
以上、参考にされたし!