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別居母親 事例1                夫が子どもを連れて実家に行ってしまった


今日は母の日。子どもと無理やり引き離されて会えないでいる母親は、どんな思いでこの日を過ごしているのだろうか。

「子どもと会えない親などいない」「面会交流調停をすれば会える」「会えないとしたらよほど問題があるからだ」――そのような主張は、どこからどうして生まれたものか。
実際に子どもと会えないでいる側の声を聞いたことがあるのだろうか。
母親であっても、子どもと会えない親はいる。
なぜその存在を無視できるのか。

ここでは、アイコさん(仮名、43歳)の事例を紹介する。(個人特定を避けるために、本筋にかかわらない範囲内での工夫はしています)

「虚偽DV」という言葉があるが、女性の場合は、「虚偽虐待」で子どもと引き離されるケースが多いと感じている。アイコさんのケースも、夫から虐待を主張されている。

着々と離婚の準備をしていた夫

東京都在住のアイコさんは、この10か月、小学生の子どもに一度も会えていない。「夏休みだからおばあちゃんのおうちに遊びに行こう」と、夫に実家に連れて行かれたきりだ。
「マンションの螺旋階段から見送る私に『ママー、行ってくるねー』と子どもが元気に手をふる姿がまだ目に焼き付いています」
予定では、数日後の習いごとに合わせて帰ってくるはずだった。
「ラインを入れても、実家に電話をかけてもつながらない。どうしたのだろうと思っていたところ、夫から離婚を前提に別居を求めるメールが入りました。そして、もう家に戻るつもりはない、これからは弁護士を通してお願いします、と…」

たしかにここ数年、夫婦仲は悪かった。一流企業勤務の夫は子どもをのびのびと育てたい派で、専業主婦のアイコさんはきちんとしつけたい派。子育てをめぐる価値観の違いから、言い争いが増えていた。
「夫は子煩悩でしたが、仕事が忙しく、平日はほぼ私のワンオペ状態。私は子育てにいっぱいいっぱいで、気持ちの余裕をなくしていました。いま思えば些細なことで、子どもをきつく叱りつけたこともありました。夫はそんな私が嫌でたまらないようでした」
実際、「離婚してくれ」「子どもは俺が育てる」と言われたこともあった。しかし、アイコさんは、とても承服できなかった。
「いまは仲が悪くても長い人生、また関係性が変わることもあるだろうと、呑気に構えていたのです」
しかし、夫は違ったようだ。離婚話をもちかけても埒があかないことに嫌気がさしてか、弁護士に相談し、着々と準備を進めていたのだった。

「どうしたらいいのか途方に暮れて、まずは車で20分ほどの夫の実家に行ってみました。
お義母さんがインターホン越しに『アイコさん、ごめんね。弁護士を通してください』と繰り返すばかりで、子どもに会うことすらできませんでした」
仕方なくいったん家に戻ったら、夫の実家の最寄りの警察署から連絡があった。行ってみると、夫から実家に近づかないでほしいとの相談があったとのことだった。
「私が子どもに虐待をしていたことが理由だと言われ、子どもも『お母さんに叩かれたことがある』と言った、と。それで私はやむなく、実家に近づかない旨の念書を書くことになってしまいました」
アイコさんは、虐待などした覚えはない。ただし、叱られた子どもが親をバシバシ叩いてきたときに、子どもの手をベシッと叩き返したことはある。もちろんほめられたことではないが、どこの家庭でも、そのくらいのことはあるだろう。

保護者扱いされない別居親

夫は夏休み中に、勝手に子どもの転校手続きをとっていた。これまで通っていたところであれば、事情を理解して間に入ってくれたのかもしれないが、新しい学校は、別居親であるアイコさんを「保護者」として扱おうとしなかった。
たとえば、アイコさんが子どもの様子が知りたくて学校に問い合わせても、「同居親の許可がないとお話できません」と電話を切られてしまうのだ。

実家にも行かれない。園や学校に行くこともできない。切羽詰まったアイコさんは、弁護士を立てて、面会交流調停を申し立てた。
「この10か月、何度も調停を行いましたが、まったく進展はありません。夫は『子どもが嫌がっているので会わせられない』の一点張りです」

別れるその日の朝まで「ママ大好き」と膝に上がってきていた子が、「会いたくない」と言うなんて、アイコさんにはとても信じられない。
夫は、アイコさんが離婚に応じたら子どもを会わせると言っている。「子どもが嫌がっている」という先の言葉とは明らかに矛盾する。アイコさんは、子どもに会わせてくれたら離婚を検討すると伝えている。

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