兄と妹。その2
私は昔から匂いに敏感。
例えば、中学高校の部活ジャージが誰のものなのか区別がつかなかったら、私の嗅覚で判別したり。
帰宅してから、犬のように鼻をクンクンさせ、留守番していた愛犬の粗相に気付いたり。
ちょっと変態?
って感じる人がいてもおかしくないけど、そういう鼻をしてしまっている。
だから、香水とかでもないその人本来の香りや、香りの変化がわかる。
...
久々に会った兄から、違う家の人の香りがした。
私たち家族と同じ香りじゃなかった。
おかしい、とても不思議な感覚だった。
それと同時にどこか切ない寂しさのような想いも生まれた。
もう、一緒に住んでいないから、そりゃ当たり前の話なのだけどさ。
そんな服、持ってたんだね。
というような服が増える。
いつのまに髪の毛そんなに伸びたんだね。
というような会話が生まれる。
この人と家族なんだなーって、思いながらもそれがふと信じられないような感覚にも陥った。
その日の夜は一緒にBBQをしたのだけれど、ずっと火の前で肉を焼いてくれていた。
なんだか頼もしく、寡黙な人になったなー。
あんなお兄ちゃんじゃなかったはずだぞ?…
妹の私は心の中が不思議さと驚きでざわざわしていたけど、平静を装いながらみんなとの時間を楽しんだ。
...
家を出たら兄と連絡とったりしなくなるんだろうなと思っていたけれど、案外そうでもなかった。
むしろ、家を出てからの方がLINEをしてたりする。
お母さんとお父さんのことで悩むと、ほぼ愚痴感覚で気づけば兄にLINEを送っていることもあった。
そうすると、一言ぽつんとだけ返信が来て、
私が取るべき行動、答えを与えてくれたりした。
なんだか、図太くて逞しい人になってしまったんだな。どうしちゃったのさ、一体。
昔は私の言葉なんて耳にも入れないような兄だったのに。
社会人になって、一人暮らしを経験して、大切な人ができて、同棲して…兄も私たち家族から離れてから、私たちと同じ年月を彼なりに生きてきたのだと思う。
その中で、自然と彼も変わっていったのだろうか…
時の経過とは不思議なもので、
兄と妹の将来に、今はちょっと明るい光が灯っているような気がしてる。
だから、今年の兄の誕生日は例年よりちょっと高いプレゼントを買ってあげる予定…ふふっ