RCP(Random Close Packing)の大雑把な近似について

※この記事の内容の受け止めについては自己責任でお願いいたします。

Israelachivili(2013)を読んでいた時、非結晶の固体構造がおよそRCP(Random Close Packing)である、という記述を見つけて気になったので、ラフに近似をしてみよう、というお話。

方針: hcpの粒子同士が接する方向にrandomnessを持たせる。具体的には一層目を最密充填から正方形型の充填まで動かし、その間二層目は孔から隣の孔まで二粒子と接しながら動かして平均を取る。

言葉で説明してもよくわからないので、図解。まず一層目に関しては下の図の$${\theta}$$を$${\dfrac{\pi}{3}}$$から$${\dfrac{\pi}{2}}$$まで動かす。

画像1

次に下図のように第二層の積み上がる位置$${\phi}$$を動かす。$${\phi}$$の範囲は孔から孔までなので、計算すると図のように隣の格子の孔まで移動する際は、
$${\cos^{-1}\left(\dfrac{\tan\dfrac{\theta}{2}}{\sqrt{3}}\right)}$$から$${\cos^{-1}\left(-\dfrac{\tan\dfrac{\theta}{2}}{\sqrt{3}}\right)}$$まで
であり、同じ格子内のもう一つの孔に移動する際は、
$${\cos^{-1}\left(\dfrac{\tan\dfrac{\theta}{2}\cos\theta}{\sqrt{3}}\right)}$$から$${\cos^{-1}\left(-\dfrac{\tan\dfrac{\theta}{2}\cos\theta}{\sqrt{3}}\right)}$$まで
となる。

この時、第一層、および第二層の上の第三層で囲まれる体積$${V}$$は、粒子半径を$${a}$$とすると、簡単な幾何的計算でわかり、
 $${V=8\sqrt{3}a^3\sin\theta\sin\phi}$$
となる。
これを重み$${1}$$で$${\theta}$$および$${\phi}$$について積分した平均値は、
$${\tilde{V}=8\sqrt{3}a^3\cdot \dfrac{1}{\frac{\pi}{2}-\frac{\pi}{3}}(\dfrac{2}{3} \cdot \int_{\frac{\pi}{3}}^{\frac{\pi}{2}}\sin\theta\cdot\frac{1}{\cos^{-1}(-\frac{\tan \frac{\theta}{2}} {\sqrt{3}})-\cos^{-1}(\frac{\tan \frac{\theta}{2}} {\sqrt{3}})} \int_{\cos^{-1}(-\frac{\tan \frac{\theta}{2}} {\sqrt{3}})}^{\cos^{-1}(\frac{\tan \frac{\theta}{2}}{\sqrt{3}})}\sin\phi + \dfrac{1}{3} \cdot \int_{\frac{\pi}{3}}^{\frac{\pi}{2}}\sin\theta\cdot\frac{1}{\cos^{-1}(-\frac{\tan \frac{\theta}{2} \cos \theta} {\sqrt{3}})-\cos^{-1}(\frac{\tan \frac{\theta}{2} \cos \theta} {\sqrt{3}})} \int_{\cos^{-1}(-\frac{\tan \frac{\theta}{2} \cos \theta} {\sqrt{3}})}^{\cos^{-1}(\frac{\tan \frac{\theta}{2} \cos \theta }{\sqrt{3}})}\sin\phi d\phi d\theta}$$
となる。
そのうち実際に充填される体積は$${v=\dfrac{4}{3} \pi a^3\cdot 2}$$なので、充填率を計算すると、
$${\dfrac{v}{\tilde{V}}\approx 0.6497}$$
Israelachivili(2013)に載っている値は$${0.635}$$なので、fccの充填率が$${0.74}$$なのと比べると、割合良さそうな近似になっている。

ちなみに、円盤のランダム充填率はIsraelachivili(2013)では$${0.82}$$となっているが、これにも今回のラフな近似を適用してみる。第一層の時と同じように考えて、面積$${S=2a\sin\theta\cdot2a=4a^2\sin\theta}$$について円盤が占める面積は$${s=\pi a^2}$$である。平均を取ると、
$${\tilde{S}=4a^2\cdot \dfrac{1}{\frac{\pi}{2}-\frac{\pi}{3}}\int_{\frac{\pi}{3}}^\frac{\pi}{2} \sin\theta d\theta=\dfrac{12a^2}{\pi}}$$
だから、
$${\dfrac{s}{\tilde{S}}=\dfrac{\pi^2}{12}=0.8225}$$
であり、こちらもちゃんと良さげな近似。

球にしても、円盤にしても、実際のRCPとのズレは$${\theta}$$および$${\phi}$$の揺らぎのせいで格子に含まれない面積・体積があることが影響してそう。加えて球の場合は、下層の孔に複数の球が入る(そもそも格子の形が違う)可能性もあることから、ズレが大きくなっているのかもしれない。

という感じで今回は以上。拙い初投稿でした。
ではでは。

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