見出し画像

不快な空腹。

 僕は年に一度か二度くらい、際限なくお腹が空いてしまう日があるんです。それが昨日と今日でした。
 普段僕は食が細く、おにぎり二個とホワイトチョコ2欠けくらいで昼食が済まされるほどなのですが、昨日と今日は食べても食べても空腹感が残り続けていました。今もそうです。その空腹感がまた不快なもので、トラックにぎゅうぎゅうに詰められたたくさんの段ボール箱の中に、一か所だけぽっかりとスペースが空いているような、そこだけ不自然に空白になっているような、そんな違和感と不快感が胃の中にあるんです。おまけになんだか咀嚼も極力したくなくて、胃を直接引き戸みたいに開けてそのスペースにちょうどの栄養ブロックを入れて収めたくなる感覚がありました。ゼリーが良いかなと思ったんですが家に無くて、夕飯直後はバナナを食べました。頭では満腹と言っているのに胃に流れる電気信号自体は空腹と囁いている感覚はどうにもこうにも気持ちが悪い。風呂を上がってからもその不快な空腹感は収まらず、1人暮らし中の兄弟の為に母が買ってきた白桃缶を「黄桃が良かったな」と文句を垂れながら全部食べました。さくさくしゃくしゃくしていておいしかったです。それでも収まらないので、冷蔵庫の中にあった昨日の夕飯の残りの春雨を全部食べました。昨日も不快な空腹感の前兆のような微空腹に襲われて、夕飯前にその春雨を馬鹿食いしました。にもかかわらず夕飯の魚の煮つけもお刺身も母の日に兄弟が送ってきた日本酒(飲んでないです)も平らげてなお、胃が訴えていました。当然、馬鹿食いした夕飯直後はもう無理だ絶対無理だと思っていたし気を抜けば全部リリースしてしまいそうな程満腹感が胃を叩いてはいたのですが、しばらくしてまた空腹が再来してきました。そしてまた満足するまで残りの春雨を食べて寝ました。流石に全部は食べられなかった分が、今日の風呂上りに今日の僕によってすべて平らげられてしまいました。その春雨の後は、今日の夕飯の残りの煮物でした。筑前煮っていうんですかね。あれ僕大好きです。母が作ってくれた煮物、味のしみ込んだ大根、とろとろのにんじん、齧った断面の白いさつまいも、ほろほろの鶏肉、あの日体育館倉庫で見た先生のあなからいくつもいくつも生まれてきたウミガメの卵みたいなピンポン玉の姿をしたこんにゃくたち。馬鹿食いしましたが、これを書いている今も空腹は収まりません。その衝動に身を任せ、今これを書いています。誤字脱字なんて知ったこっちゃありません。脳に浮かばれた言葉が勝手にタイプされていくだけです。
 そんな空腹感が最初に訪れたのは、うら若き小学校の、土曜日の塾から帰った昼食の時のことです。昼食と言っても、親が買ってきた複数のカップラーメンから選んで湯を注いだだけのものです。僕辛い物が昔から得意で、グリーンカレーをものともしない子でした。(当然やせ我慢の節もあります。)ですから一番辛そうな、一番容量の大きいカップラーメン(大容量!!ってでかでかと書かれてあったような気がします。)に湯を注ぎました。その頃から僕は食が細い、というか、食べるのが遅かった子供でした。学校の給食はかなりの頻度で昼休憩を使って食べてました。お代わりをするくせにです。そんな僕が大容量のカップラーメンを選んだ理由は、やはり、不快な空腹を抱いていたからです。食卓の前では座ってテレビを見ている父がいます。一緒にテレビを見ながらずぞぞぞぞぞぞと麺をすすっていると、突然不思議なことが起きました。なんと、カップの中が空っぽになっていたのです。自分で驚いていました。体感時間はおよそ5分。その時僕は程よい心地の満足感を感じていました。まだお菓子の一袋でも入りそうな具合です。今振り返りながらも、あれはすごい出来事だったと思います。そもそも、僕はあまり麺類が好きじゃありません。なぜなら、食べても食べても減らないからです。増えている気すらします。多分麺が汁を吸っていますから、絶対に増えています。間違いないです。そんな僕が食べても麺が減らないというストレスを全く感じずにカップラーメンを完食してしまった。これは赤飯物です。僕は自分という人間に可能性を見出していました。その後、父と母に報告をしたほどでした。
 その次に大きい不快な空腹感を感じたのは、小学校の修学旅行の夕飯でした。大きな広間で、御膳が出されて興奮していたのを覚えています。品数も多く、全部食べられるかと心配していたのですが、あいつがやってきました。異常な空腹です。食事の終盤、周りの友達が煮物の小鉢を残しているのを見ていると、突然フラッと来たんです。次の瞬間には片手で数え切れないくらいの友達の小鉢を平らげていました。修学旅行で、クラスメイト全員と共にする夕食という、非日常がそうさせたのかもしれませんが、明らかにあの日の僕はおかしかった。パンパンのお腹をさすりながらエレベーターへ乗ったことは今でも鮮明に思い出せます。その後、寝ている僕のお腹を友達が走りながら踏んずけていった時は本当に焦りました。めっちゃ痛かった。
 中学になってからは元来の小食に拍車がかかり、朝も昼も夜もろくに食べねえ引きこもり生活になってからあまり認められなくなっていたのですが、昨日と今日、空腹襲来。二日続けて襲われたのは初めてでした。なんでしょうね、やっと体が高校生という器を受け入れ始めたのでしょうか。おせえんだよなったくよぉ。

 さて、僕の不快な空腹の旅はいかがだったでしょうか。この感覚を記録しておきたい一心で書いたので、多分楽しくないと思いますが、僕は書いていて楽しかったです。まだ書きたいことたくさんあるのですが(せんちひ見てたら父が乱入してきて珍しくエンドクレジットのおしまいまで見ていったこととか)そろそろお時間も迫ってきております。では、今週も張り切っていきましょうー!提供は僕でしたー!また逢う日までー!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?