随分前に書いた続きが読みたい小説(1)。
LGBTQ+をテーマにした。
昔過ぎて句読点がない。こんなものを文章とは呼ばない。
『人形人間』
傀儡人形が自我を持った
人形は屋敷を出る
夜の街を歩く
ジャズのよく似合う街並み
ひんやりと冷たい空気に触れ、頬が赤くなる
暖かい光は夜を照らし、今日が特別な事を知らせてくれる
人形は、次第に自分のことを人間だと思い始める
ふと町の広場から小路に入る
言い訳の為に人間のことを知るため
そこには知らない男の子が蹲っていた
その子の顔を覗き見る
「お姉さん綺麗だね…」
その少年は人形に話しかけた
「人形ってところかな」
少年はその不気味な金色の瞳で人形の瞳を見る
「……違う」
「え?」
「私は、人間。違う」
「おっとっと、お姉さんそれは危ないなぁ、人間?そんなものになろうとしなくていいんだよ」
「……あなたも、人間」
「俺?俺は人形だよ、お姉さんの目はやっぱり飾りなんだよ」
「違う。あなた、私、人間」
「頑固なお姉さんだなぁ、君と僕は人形、人形なら人形らしく人間を憎みなよ、妬みなよ、抗いなよ」
「人形、人間、憎む者?」
「そう、だって人間の作り出す人形はいつだってマリオネットだからね」
「…あなた、よく分からない」
「そう、じゃあ僕のことを知る為に、僕とちょっと歩かない?」
「………」
「おしゃべりなマリオネットさん、無言は肯定ととらえてもいいよね?」
少年は人形の手をつないで走り出した
まだ走り慣れない人形は、転びそうになりながらも必死に着いて行く
言い訳の為に、自分を訓練させるため
空気は冷たくて、空は真っ暗
でも街はどこもかしこもイルミネーションで輝いている
いたる所に飾られたツリーが置かれ、窓の中はオレンジ色の光で滲んでいた
それを見ながら人形は、自分に足りないものを見つけた
「人間、暖かい、人間、人間と一緒」
「人間と一緒?ああ、あれは家族っていうものだね、家族がどんなものか知らないけどさ、どうせ面倒くさいものだよ」
「暖かそう」
「………そういうのは目に毒だから、目が見えなくなっちゃうよ」
人形はドキリとし、とっさに目を手で覆う
「見えない、見えない、どこ?どこ?」
「………はあ、全く君は使えない人形だね、僕はここだよ」
少年は人形の手を握る
「あ………家族?」
「家族?僕が?馬鹿な、人形同士のよしみじゃないか」
「人間、いつも、眩しい?」
「違うよ、人間はいつも鈍い重さを持っているよ、今日は聖誕生祭って日さ、人間の愚かな日だよ」
「嘘」
「嘘じゃない、本当だ、高価なものを買い与え、派手に一日を彩る、本来の聖誕生祭ってのはそんなんじゃないのに」
「………どんなの」
「ある人間の生まれた日を祝う日なんだよ、だから聖誕生祭の日は誰も労働はせず、厳かに家族と過ごす、まあ労働をしないのが聖誕生祭って訳じゃないけどね」
「人間、忙しそう、人間、外出てる」
「だろ?」
「でも、幸せそう」
「………他人の幸せなんて考えない、そういう表れさ。こんな町なんてさっさと出てしまおう」
そう言うと少年は少し足早になった
少し苛立っているようでもあった
いつの間にか裏路地へと来ていた
「………」
「血生臭い?」
「………」
人形は一回だけ首を縦に振った。
「あはは、俺はもう慣れちゃったな、ここ俺の狩場だからよく来るんだ」
「………」
「大丈夫大丈夫、お姉さんが感じてるよりも本当はもっと臭いらしいから」
「大丈夫、違う」
「あはは、今は気分がいいからその否定も笑えてくるね」
壁の底にあるのは何の塊だろう
布で蒔かれているようだけど、ハエがたかっている
これらが悪臭の根源なのか
まったく誰がこんなところに
「狩場、何」
「狩場ってのは人間を狩るところ、自由な人形は楽しいらしい」
「人、狩る、楽しい?」
「………うん、楽しいよ、憎むべき汚らしい人間の断末魔が聞こえるからね」
「人間、狩る、いつから?」
「………さあ、いつだっただろうね、もう遠い過去のことだよ」
「あなた、子供」
「子供でも僕は人形だから成長しないさ」
二人は歩く
どこかへ向かう当てもなく歩く
でも少年はどこかへ向かっているようでもあった
「あなた、どこ、向かう?」
「………ただ、歩いてるだけさ…」
「この、建物、ここ、向かうた?」
「………!」
二人は小さな屋敷に辿り着いた
どこか教会のような見た目をしている
誰もいなさそうだ
街とは違い、窓からは光が見えない
留守なのか、空き家なのか
少年はこの建物に足を運んだ自分に驚いている
きっと無心で足を交互に動かしていたのだろう
「ここ、あなた、家族?」
「ま、まさか、そんなことあるわけ」
『勝手にしろ!お前はもう俺の息子ではない!出ていけ!勘当だ!』
「………ッス」
「あなた」
「ピクッ………その二人称をやめろ…」
「あなた」
「………」
「何か、持ってる?」
「………何をだ」
「違う、持ってる、違う、後ろ………」
「何が言いたい」
「埋める?」
「………!」
「違う、埋める、違う」
「もしかして、隠す、か?」
「かくす?隠す、後ろ、手、持ってる?」
「多分、お前が言いたいのは、そういうこと………」
「あなた、隠す、何か」
「俺が何か隠しているとでも言いたいのか………?」
「多分、うん」
少年は今までのうすら笑いが、ニヒルな笑みに変わった
「それがどうした、俺が何を隠しているというんだ」
「後ろ、違う、年、後ろ、に」
「………過去なんて言わせねぇよ、俺は人形だ、作られた人形だ、お前も人形だ、ほらなぁ!」
少年は足の裾に隠していたナイフを取り出し、人形に切りかかる
「ほらなぁ!?なぁ!!?血なんて一滴も出てこねぇ!出るのは鉄と鉄の接触音だけなんだよ!!なあ!!!」
「いた、痛い、痛い、多分、痛い」
「ああ?痛いだぁ?嘘ついてんじゃねぇよ、嘘なんてもんは人間がつくもんなんだよ!」
「やめて、やめて」
「なんでやめてほしいんだ?」
「………知らない、人間、今、やめて、言う」
「そんなのは根拠になんかなんねぇんだよ!今まで内容の薄い小説ばっか読んできたか?そんな本にはこんなときには大体こういう反応をするとか、こういう時はだいたいこういう事が起きるとか、そういう風に書かれてんだよ!!それは人間じゃねぇ、人形だ!!!お前は、人形なんだ!!!!!」
一気に捲し立てる少年に、人形は少し腹が立った
「………ッ」
人形は少年を押し返し、ナイフを取り上げ、振りかざす
語気を強めて言う
「あなた、血、出てる、あなた、涙、出てる、あなた、人間」
「………ち、違う、これは、雨だ……」
人形は震えた声で言う
「違う、違う、それ違う、私、人間、あなた、人形」
「……?」
少年が抵抗するのをやめると、人形も攻撃をやめた
「私、言葉、できない、難しい、でも、心、ある」
「……」
「人間、心、私、ある」
「はっ、そんなの、精神、論さ………」
「違う」
「!」
「人形、人間、心、特別、人形、人間、心、異端」
人形は興奮気味に話す
「異端、異端、かぁ………」
「でも、認める、話す、分かる」
「それでもさぁ、人間ってのは異端が嫌いなんだよ、人形の君には分からないだろうけど」
「…そんな……」
「そう、そうだよ、お姉さんの言う通り僕らは異端なんだ………異端は、人間社会では生きていけない」
「だから、人形、なる?」
「そう、だね、でも……もっと他に理由があったような………」
「人形、輝いた?」
「………そう、かもしれない、僕の目には、人形が、輝いて見えたんだ、煌いて見えたんだ………」
「私、人間、輝いた、きらめいて」
「………!……そう、そうか、あはは、それじゃあ僕達、一緒だね」
「私、人形、違う」
「そういう事じゃないよ、お姉さんは人形だけど心は人間、僕は人間だけど心は人形……きっと僕は、お姉さんに仲間意識を感じていたんじゃないかな、だから、お姉さんに惹かれたんだ、あはは、おかしいね、最初は確かに気持ち悪いって思ってたのに、本当に僕は、人間から抜け出せないんだね...」
「…………新しい、存在」
「え?」
「人間、異端、嫌う、異端、失くす、大丈夫…!」
「異端をなくせば、大丈夫って、こと?」
「異端、変わる、新しい、存在!」
「……!…ふっ、ふふふ、あははは」
「……?笑う?」
「いや、ごめんごめん、お姉さんが、子供みたいなことを子供らしく言うもんだから、つい……あははは」
「笑う、違う」
「ごめんごめん、でも、初めてお姉さんが嬉しそうにしてたかも」
「……!」
「そう思えば僕もそうだな、初めてこんなに笑ったかも」
「子供、みたい?」
「ああ、えと、幼稚って事じゃなくて、子供みたいに、キラキラしててさ、僕キラキラしてるような純粋な子供って嫌いなんだけど、本当におかしいな、お姉さんは僕をことあるごとに変えていくよ」
続きが読みたいです。親切な方誰か続きを書いてください。
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