嫌な夢、悪夢の現実。
嫌な夢を見た。
俺は学校へ行きたくなかったんだ。でもどうしても「学校へ行きたくない」って親に言えなくて、俺は渋々家を出る。中学校は都会にあるから、本当は電車に乗るために駅へ向かわなければいけない。しかし俺は、駅へ行く道とは別の道を歩いていた。それは、地元の小学校へ向かう道。俺も通った、田舎の小学校。
その道を、なぜかペンギンの人形を抱えて歩いていた。服装はたしか今の中学の制服。歩いていると、俺についてひそひそと話している声が聞こえてくる。周りには誰もいないのに、その声だけが聞こえてくる。汗が頬を伝う思いで俺は歩いていたけど、その途中で「この道は小学校へ行く道だった」と気付く。それまでどこへ行く道かもわからずに歩いていたのだ。ただただぼーっと、目的地へ辿り着く気も無く。
「俺は中学生なのに、小学校へ行ってはダメだ」と思った俺は、道を引き返して家へ向かって歩くんだ。さっきまで朝の冷たい空気が漂っていたのに、晴れの日の昼下がりになっていた。多分午後1時くらい。青空が広がっており、清々しい気持ちの良い天気。そんな空の下を淡々と家に向かって歩く俺。虚無に襲われながら歩いていた。
川沿いにある旧道の細い道を歩く。零れた金木犀の花びらを踏みながら、短いトンネルを通ると、俺の家は見えてくる。長い階段の上に俺の家はあった。その階段を登ろうとするが、なぜか崖とも言える急勾配になっていた。なかなか登れなくて、必死によじ登ろうとしているところに、よく知った小学生2人がダルがらみしてきた。1人は現実世界ではもう中学生になっているはずだが、なぜか小学生のままの姿だった。もう1人も俺の知っている小さな姿。それなりに仲が良くて、こんな俺でも仲良くしてくれていた、よく面倒を見ていた、赤ん坊のころから知っている2人だった。
そして場面は急に切り替わり、俺は家に辿り着いていた。家のリビングに倒れてぼーっとしていた。すると階段を上る足音が聞こえてくる。誰か家族が来たんだと分かった。買い物袋を提げた母親だ。リビングにいた俺を見て、母は凶弾するでも問い詰めるでもなく、ただ「何で学校行ってないんだ?」という静かな圧をかけてきた。俺は必死に抵抗をする。抵抗をして、母は静かに昼ご飯のパスタを作ってくれた。
そこから先の夢は覚えていない。俺は目を覚まして、ぼーっと天井を眺めた。夢の内容に放心していた。
当然いい気分ではなかった。嫌な夢を見て、現実逃避をしたかった。
でも、でもなぁ。こんなふわふわとしたものが日常なんだと思い知らされた気がする。安定した日常。社会の歯車から外れたような柔らかい日常。下手なBGMの無い日常。最低限の生活音しかしない日常。
現代人が渇望しているんじゃないかと思う日常を送れていることを、親に感謝しなければならない。と思った次第。
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