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向日葵

この話はとある画家を元にした作品である
一部時系列とは異なる部分があるのだが、創作ストーリーとして見て欲しい
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「私の情熱は手に負えない 友人よ、分かってくれるか。作品には命をかけている それが私の描き方だ」

友人は思う
君はいつもそうだ 何を言おうとその情熱は失われない なのにどうしてだ 君はいつも怯えているようで 死神でもついているようなその様を見ていられない
病からの幻覚や幻聴、度を過ぎた自傷行為が君の作品の要素になっていることは知っていた ただその不安定な精神が評価されたことは無かっただろう 君は何と無駄なことを…

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈私はキャンバスを前にして黄金に塗りつぶす
あぁ向日葵よ、もっと咲いて 夏の間中ただ揺れているがいい
そしていつか、人々を照らす強い日差しに耐えきれずに果ててしまう それが君の運命だ

不安定な状態でただ書き続ける それが芸術だ 狂気性がないと人々を引きつける作品には決してならないだろう おかしくなって手に負えなくなってからキャンバスに向かう自分は自分でも制御できないのだ
痛み 絶望 感傷 どん底 全て無駄にすることなく擦り込む 

時には頭の中が制御出来ず叫ぶこともある 哀しみに涙することも 苦悩に思わず己の顔を掻きむしることもある 

だがもう痛みすら感じない

何も食べす 何も飲まず 何日も眠ることなく孤独に篭って一心に描き続ける 人々を振り向かせるような 生きた足跡を遺したい

周りは思う
彼は、いつも虚ろな目で過ごす いつ死んでもおかしくない程狂っている 精神を病んだ男に何が描けると思う 筆を握っているときのその目は一体何を訴えているのか 君の気持ちがわかる人など決して現れないだろう 

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私は 命を吹き込むために 私の命を吸い取るように ひたすらに向日葵を黄金に塗りつぶす

もう覆い隠せない 自分の狂気をただひたすらにぶつける  

黄金は決して明るい感情を表すのではない どこか切なく 孤独感を感じさせる 
この黄金の光は神の光なのだ 救いを求めるように咲く向日葵を照らすようにただそこにある

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完成された自分の作品をみて小さく頷く どこか清々しい気分でいた もう何も生むことがないこの筆を置く日が来たのか 

私はその絵を持って夏の日差しの元に出た
何日経った いやこんな眩しさを感じたのは何年ぶりか
向日葵は太陽に照らされてより一層輝くように光を放つ

向日葵、もっともっと咲いて夏の間中 ただ風に揺れていればいい
人々を誘い込む役目だけ終えたら その後朽ち果てればいい 誰にも見られず 気が付いたら生命を落としていた そんな運命を辿るのだ

私は注目を浴びることは無かった 正当に評価されることは無かったが、誰かが分かってくれる その日をただ待っていよう もっと早くこの覚悟を持っていれば…

彼はそっと銃を手に取り

「こうして死を迎えたかったんだ」

そう呟くと ひっそりと苦難に充ちた一生を終えた 

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解説

ゴッホの晩年を簡単にフィクションを交えて描いたものである 

実際は7作品あると言われている「ひまわり」を描いた一年後に自殺している 


実際にひまわりという作品に限らず、他のものもどのような背景を以て描かれたものか私にはわからない 調べたら分かるということではなく
そもそも分かるはずがないと思っている 自らをすり減らしながら生きるその様を 

彼の本心は彼にしかわからないのだ

ゴッホはその一生を終えてから有名になった
彼の狂気性を混じえた数々の絵画は高く評価され、今で言う「フォーヴィスム」として荒々しいタッチや強烈な色彩で描く方法を世に広めた

多くの作品を遺してくれた彼が、自らの評価を知ることは無い。だがしかし数えきれない多くの人が、彼の作品を通して感性を揺さぶられる 彼に思いを馳せる
この事実が存在する それが少しでも彼の救いになっていればと願ってやまない。

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彼の名言

絵を描くのは、人生に耐えるための手段だ。泣かないでくれ。僕がしてきたことは、僕たちにとっていちばんいいことなんだ。どうしようもないんだ、僕はこの憂鬱から絶対に逃れられない。  

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