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先天性心疾患持ちミドサーの急性骨髄性白血病治療:髪の毛編

先天性心疾患持ちミドサーの急性骨髄性白血病治療記です。
過去のエントリはこちら。


がん治療においてアピアランスケアは命に直結しないため軽視される傾向にあるような気がする。
私自身、病名を医師から告げられた時に「治療が終わればまた髪は生えてきますから」とさらっと言われ、「そんな何でもないことのように言ってくれるな」と内心思ったことを覚えている。

もちろん髪の毛を失っても死なないし社会生活を営むことは出来る。
しかし、年齢や性別にかかわらず、ヘアスタイルとしてベリーショートや坊主、スポーツ刈りに慣れ親しんだ経験のない方にとって、脱毛はそれなりに精神的苦痛があるのではないだろうか。
少なくとも私は苦痛だった。
それなりの手間とお金をかけて長年ロングヘアを維持していたし、当時流行りかけていたインナーカラーで遊んだりもしていたため、それらを一気に失うことへの現実感がいまいち持てなかったりもした。
入院中は鏡に映る自分の姿を見る度に「囚人みたいだな」と思っていた。

抗がん剤の種類によっては脱毛が起きないものもあるが、白血病の化学療法や造血幹細胞移植では確実に脱毛する。

移植から2年強が経ち、病気前の髪の長さに戻るにはまだあと1年はかかると思うが、一旦「脱ウィッグのプロセスは卒業と言ってよい」と思える長さまで髪が伸びてきたため、ここまでの経過を記録する。

なお、約1年前にそれまでの経過についてはInstagramに投稿をしている。



ウィッグについて

世の中には人毛のハイスペックなウィッグもあり、人工毛が人毛に勝てる要素は金額以外にあまりないと思う。
また、ウィッグであることを隠しておきたい方は、元のご自身のヘアスタイルに近いスタイルの人毛ウィッグをお使いになるのが良いかもしれない。
私は髪のない自分の姿を受け入れることは出来なかったが、ウィッグであること自体は周囲にバレても一向に構わなかったため、色々なヘアスタイルのウィッグを多い時には7つほど所持し、その時どきの気分でヘアスタイルを変えて楽しんでいた。

中古ウィッグはフリマアプリでもたくさん出品されているため、コストを抑えたい方は中古の購入を検討しても良いかもしれない。
また、自治体によってはウィッグ購入費用の助成があるため、お住まいの自治体の制度を調べていただきたい。

少し話が逸れるが、私は退院後にウィッグで通院をした日の夜に体調を崩して胃痙攣や嘔吐を繰り返すことが何度かあった。
今考えると熱中症の症状であったと思う。
屋内での短時間の着用でも熱中症になる。
夏季にウィッグで外出をする際はくれぐれも留意いただけたらと思う。

人工毛ウィッグ

治療中や、退院後1年程は主にリネアストリアさんの人工毛ウィッグのお世話になっていた。

リネアストリアについては当時がん治療の先輩であったミセスインターナショナル同期ファイナリストの東佳子さんから教えていただいた。

色々なヘアスタイルや髪色のウィッグが幅広く展開されており、選ぶのが楽しかった。
リネアストリアの中では高額な方に入るが、総手植えの天使シリーズは圧倒的に着け心地が良かったのでおすすめしたい。
もちろんリネアストリア以外にもお手軽でおしゃれなウィッグのメーカーさんはいらっしゃるので、ご自身の好みに合うところがあれば良いと思う。

地毛ウィッグ

前提として、化学療法による脱毛が始まった際に地毛をヘアドネーションのように切って保管しておいたことがある。
詳しくは過去のエントリにて。

後日、この時に切った私の髪にご自身の髪を大事に育てたものを追加する形で友人が地毛ウィッグを作ってプレゼントしてくれたため、きちんと使える形で髪を切っておいて良かったと思った。

友人は何軒もウィッグの業者に足を運んでくれ、最終的にかつら工房さんにお世話になることにした。

販売マージンが載っていないため、フルオーダーのウィッグとしては非常に良心的な価格だと思う。
これから抗がん剤治療を控えている方や、ご家族ご友人が抗がん剤により脱毛する方にもおすすめしたい。

友人はヘアカラーをしていなかったが、切った私の髪の色に合わせてかつら工房さん側で友人の髪もカラーリングしてくれた。

この場を借りて、ウィッグをプレゼントしてくださった友人のLua Na Clinic 松村奈津子先生に心からの感謝を申し上げたい。

脱ウィッグまでの経過

一部前述のInstagramと重複するが、下記に脱ウィッグまでの経過を載せる。
なお、「ラストケモ」とは最後の抗がん剤、つまり移植の前処置(2022年1月)を指している。

購入したウィッグが軒並みボブ以上の長さのものだったこと、ロングヘアだった時にはせっかく伸ばした髪を切るのがもったいなくてボブにチャレンジ出来ずにいたことから、まずはボブの長さを目標にした。

ちなみにサムネイルの写真は寛解導入療法が済んで一時帰宅した際のものだ。
まだ少しだけ髪の毛が残っているが、自宅でこの写真を撮ったあと夫に綺麗に剃ってもらった。

ラストケモ直前:完全に髪がない時期

今見ても囚人感がすごい

移植の前処置のためにCVを入れた日。
激痛でブチ切れている。

ラストケモから2ヶ月

うっすら毛が生え始めており、頭皮の無事を確認。
地固め療法の3クール目と4クール目の間に2ヶ月ほど期間が空き、その際にも一度髪が生えかけてきていたため、「治療が終われば髪は生える」という医師の言葉が真実であったことはその時点で分かっていたが、4クール目でまた脱毛したため、次がなかったらどうしようかと内心思っていた。

ラストケモから3ヶ月

まだこの頃はケモカールの予感もない。

ラストケモから5ヶ月

いわゆる「ケモカール」と呼ばれるものである。
どうやら化学療法によって頭皮の毛穴が歪むことにより生えてくる毛が癖毛になるようだ。
元々の毛質はほぼ直毛に近かったため、興味深かった。

ラストケモから6ヶ月:自然派マルチの勧誘

池江璃花子さんは縮毛矯正をしていたようだったので、私も髪が伸びたらすぐ縮毛矯正をしたいと思っており、このタイミングで主治医に確認したところ許可が出た。
嬉々としてそのことをインスタのストーリーにアップすると、知人からDMが来た。

「縮毛矯正の薬剤のような化学を体に入れて欲しくない」「経皮吸収は侮れない」「自分はヘナで癖毛が直った」というものであった。

この知人からは退院直後に丸坊主の投稿をした時にもDMを一度もらっていた。
「おすすめのヘナがあるから話を聞いてみてほしい」「乳がん治療をした共通の知人も癖毛を直すためにヘナを使っている」「紹介性なので品質は確か」とその時のDMには書かれていた。

言われたヘナの名前で検索するとすぐに「マルチ」という言葉が出てきた。
なるほど「紹介性」ね。
美容師資格のない素人同士で施術し合っているらしいというよろしくないこともネットには書かれていた。

「化学」という雑なくくりはどうなのか。
生まれた時から病気で服薬を続けており、白血病になってからも抗がん剤という名の化学薬品を体に入れまくって命をつないだ私に対してあまりにも雑すぎる。
自分が白血病になったら「化学を体に入れたくない」と言って標準治療を拒んで死を選ぶのだろうか?(残念ながらそういう人は一定いるのだろう)
そんなに「化学」が嫌なら今すぐ無人島に行って自給自足の生活を送ればいいのに。
などと考えた。

共通の知人のSNSを見ると、案の定ケモカールが真っ直ぐになっているなんてことはなかった。
抗がん剤治療によって癖毛が生えるメカニズムを少し調べればヘナで直る類のものではないと分かりそうなものじゃないか。。

「がん患者にマルチや変な民間療法を勧めてくる人が後を絶たないのはこういうことか」とため息が出たし、治療中にごく一部の人にしか病名を明かさなかったのは大正解だったと改めて思った。

厄介なのは、ご本人が心からの善意で勧めてきている可能性があることだ。
「食い物にしてやろう」という下心ありありで近づいてきてくれたなら「うるせぇ晒すぞ」とかいくらでも言えたが、私も共通の知人が何人もいる中で不必要にトラブルを起こしたいわけではなかった。
相手に悪意がないからこそ、まんまと絆されて取り込まれてしまう方も出るのだろう。

政府は、結果に何の責任も持たないくせに、頼まれてもいないのに、病気と向き合う当事者の心の隙につけ込んでエビデンスのないものを押し付けてくるマルチや民間療法の業者やその手先からは一律で一億円くらい没収する法律を今すぐに設けてほしい。

※民間療法の全てを否定はしません。例えば標準医療では手の施しようがない状態になった場合に、気休めとしてダメ元で試してみるというのは選択肢のひとつとしてありだと思います。しかし、日本の安い皆保険の制度が適用出来る標準治療の余地がある場合に標準治療を根拠なく否定し、エビデンスのないものを無責任に勧める存在はもれなく全員Evilだと私は考えます。

ラストケモから7ヶ月:ヘアサロンからのアドバイス

ウィッグを脱ぐと髪がぺしゃんこ
「M字角刈りパンチパーマ」と自称していた。
前髪の伸びが遅いのはケモあるあるらしい

私は八丁堀にあるYes! Styleというヘアサロンに学生時代から10年以上お世話になっており、やはり10年以上お世話になっているオーナーの庄司さんに「縮毛矯正をお願いしたい」と連絡をした。

その時に庄司さんから言われたのは、

  • 抗がん剤後に生えてくるケモカールの髪はたんぱく質がしっかりしていない弱い毛である

  • この弱い毛に縮毛矯正をかけると、ダメージで毛がちぎれてしまうおそれがある

  • またそのうち元の毛質の髪が生えてくるようになるので、伸びてくるのを気長に待ちながらケモカール部分を切って全体を整えていく方がよい

  • 抗がん剤でケモカールになった人の髪はたくさん切ってきているので安心して大丈夫!

ということだった。
私の周りにはがん治療後の脱ウィッグを経験した知人友人がいなかったため、特にこの最後のひとことが非常に心強かった。
何より、ご自身に短期的な利益が出るような方向に私を誘導することなく本当に私の髪のためになる内容を直ちに教えてくださったことがありがたかった。

ラストケモから9ヶ月:初のヘアカット

前髪は相変わらずM字だったが、後ろの毛がかなり爆発してきたため一度庄司さんに見ていただくことにした。

「まずは一回整えてみましょう」ということで、伸びの悪い前髪とトップにはあまり手を加えず、爆発していたサイドと後ろの毛をざくざく切っていただいた。

前髪が猫っ毛なのでポンパドールのようになっている
髪がこんなに短かったことは今までの人生でなかったので新鮮
自分のEラインが極めて残念なことにこの時初めて気づいた。
ショートヘアは色々と浮き彫りにしてくれる

ケモカールを活かしたいわゆる外国人風ベリショというもので、とても可愛い。
ヘアスタイル自体は可愛いのだが、私自身のヘアスタイルとしてベリショになりたいわけではないのが難しい。
庄司さんは「自分が目指したいヘアスタイルがこれではないという気持ちは大事にした方がいい」と言ってくださった。

社会人になってからずっと髪を染めてきたため気付いていなかったが、髪が黒いと白髪が目立つことが分かり、次回は髪を染めようと決めた。

ラストケモから11ヶ月:ヘアカラーをする

前髪とトップは依然猫っ毛でボリュームがない。
一方でサイドと後ろの髪の毛はだいぶ元の毛質に戻ってきていた。
髪が伸びてきて毛先のケモカールが気になってきたことと、やはり髪色を明るくしたいと考えて再度ヘアサロンへ。

耳のあたりを境に上半分は長め、下半分は短めのツーブロック風のヘアスタイルにしていただき、髪が短い分ロングだった頃より少し明るめのカラーにしていただいた。
私には髪色が明るい方が抜け感が出て似合うと思う。

これはこれでとてもおしゃれなので、人がしていたら「素敵!かわいい!」と思うのだが、自分自身のヘアスタイルとしてはこれでもまだ短すぎるので、早くもっと伸びればいいのにと思っていた。

ラストケモから1年3ヶ月:脱ウィッグ

まだまだ短いが前髪と呼べるものが出来、毛質もだいぶ元通りになってきた。

毛先のケモカールを活かしたエアリーなショートにしていただいた。

このあたりからようやく自分のありのままのヘアスタイルを受け入れることが出来るようになり、ウィッグなしで外出出来るようになった。
新しく知り合った人に元々ロングだったことを言うと「今のヘアスタイルが似合っているのでロングだったのが信じられない」「短い方が似合うのでは」と言われることもあった。

庄司さんが「抗がん剤をしたお客様はたくさんいるし、そういう人を何人も見てきているから大丈夫だよ」と再度おっしゃったので、私は「そういうことこそお店のブログに書いて欲しい」とお願いをした。
抗がん剤によって脱毛し、その後本当に髪が生えてくるのか、くるくるの毛が生えてくると言うけれど、どうやって元のヘアスタイルに戻していけば良いのか、私自身良く分からなくて不安だったからだ。
SNSに載せてくださっている当事者や美容師の方もいらっしゃるが、サンプルは多いに越したことはないと思った。

庄司さんは早速お店のブログに書いてくださった。

ラストケモから1年8ヶ月:ショートボブへ

夏の間に後ろの毛を結べるようになった。

嬉しくてこんな写真を何枚も撮った

襟足がケモカールでぐりぐりになり、根元のプリンも気になるようになった。
ヘアカラーの利点は、根元がプリンになることでどれだけ髪が伸びたか実感出来るという点にもあると思う。

襟足のケモカールはすっかり切っていただき、サイドと襟足の長さを近づけるようにしていただいた。
「そろそろショートボブと言っても良いのではないか」という旨のことも庄司さんに言っていただきとても嬉しかったことを覚えている。

ラストケモから1年11ヶ月:ハイライトと、憧れの前下がりボブ

カラーをしたことに加えて波乗りで海に入るようになったため髪が傷むようになった。
意外と髪が伸びたようで根元のプリンも気になるようになり、一年の終わりをすっきりして迎えるために再度ヘアサロンへ。

当日を迎えるまでの間「どんなヘアスタイルにしていきたいか」を考えているうちに「やはりちょっと遊びのあるヘアスタイルにしないとつまらない」と思うようになった。
「髪があるだけ幸せだ」と思っていた時期が確かにあったのに「普通のヘアスタイルじゃつまらない」と思うようになるので、人間とは随分と欲深く贅沢な生き物だと思う。

当日「今回は予約時に伝えていなかったので諦めるが次回あたりにまたブリーチを入れたりバレイヤージュをしてみたいと思っている」と言うと、庄司さんが「普通のヘアスタイルに飽きちゃったんでしょ」「工程をものすごく巻けばハイライトを入れられるかもしれない」とおっしゃってくださった。
わがまま放題の客だが、長くお付き合いいただいているので私がわがままであることもある程度織り込み済みなのかもしれない。

髪に長さがあるとEラインも茶を濁せるから良いですね

髪をかき分けるとハイライト部分がランダムに出てくるため飽きが来ず、まさに私が求めている髪色にしてくださった。
私がハゲている間にインナーカラーが爆発的に流行ってしまったため「今更インナーカラーにするのもな」と思っていたこともあり、別のやり方でブリーチを出来たのがとても楽しかった。
庄司さんからは「生え始めの時に縮毛矯正をしなかったらから今ブリーチが出来るんですよ」とおっしゃっていただき、あの時いただいたアドバイスを守って本当に良かったと思った。

また、かなりギリギリの長さではあったが、この時に遂に毛先を切り揃えていただくことが出来た。
ロングヘアの時代からやってみたくても踏み切れていなかった憧れの前下がりボブになれたのだ。

この時のことも庄司さんはブログの記事にしてくださった。

土壇場での私のわがままな要望にプロとして応えてくださった様子がありありと書いてあり、読む度に申し訳なさとありがたみが増すばかりである。

ラストケモから2年3ヶ月:脱ウィッグ卒業

白血病の発症前にインナーカラーに使っていたカラーバターの残りがあり、ブリーチ後は自宅でセルフで色を入れて赤や紫の頭にして遊ぶことが出来るようになった。
ハイライトだけなので全頭ブリーチをしたわけではないが、カラーバターを入れると全頭赤や紫のように見えるので面白かった。
※本来は開封後1年経過したものは処分した方が良いと思います

ピンクではなく紫

前回ブリーチをしたため根元の地毛との色の差が今まで以上に目立つようになり、また、毛先が肩につくようになったせいか色々な方向に散らかるようになったため再度整えるべくヘアサロンへ。

前回毛先を綺麗に切り揃えていただいたため、今回はカットは不要とのことだった。
つまり、伸びてきたために毛先が散らかるようになったというのは私の乾かし方やその後のセットが良くないということだ。
そこまで髪が伸びてきたことが本当に嬉しかった。

実はまだ顔周りの一部の毛先にケモカールが残っており、小さい縦ロールが出来る。
それでもきちんとストレートアイロンで伸ばせば伸びてくれるので、あとは私がどこまできちんとヘアスタイルをセットしたいかというやる気の問題である。

ヘアカラーは少し青を混ぜた透明感のあるアッシュにしていただいた。
前回ブリーチした部分はまた色が抜けてくるが、根元は今回のカラーリングの色が残るので前回ほどプリンが目立つこともなくなると思う。

「脱ウィッグ」からの卒業

今回ようやく「抗がん剤による脱毛」「脱ウィッグのプロセス」から卒業出来たと思えた。
正確には1年前からウィッグは使っていなかったが、「自分が基準とする、自分が自分を好きになれるヘアスタイルになれた」と思ったのがこのタイミングだったのだと思う。

これまでは「元のヘアスタイルに戻るために髪を伸ばす」ことをずっと考えてきた。
白血病になる前は胸にかかるほどの長さがあったため、冒頭の通りその長さに達するには更にあと1年はかかると思う。
けれど、正直今はもうその長さまで伸ばさなくても良いかなという気になっている。
胸の長さまで伸ばすかもしれないし、伸ばさないかもしれない。
でも伸ばさなかったとしても、それは「元のヘアスタイルにすることを諦めた」のではなく「自分がなりたいヘアスタイルを選択した結果伸ばさずに切った」ということだと心の底から言える。
ここから先は、純粋に自分のヘアスタイルを楽しんでいこうと思っている。

ここまで折に触れ的確なアドバイスをくださり脱ウィッグのプロセスを伴走してくださった庄司さんにも心より感謝申し上げたい。

脱毛を経験して

ちょうど髪が生えかけてきていたタイミングで以下の記事を読んだ。

ヘアドネーションをする方に裏表のない善意があることは間違いなく、それは非常に尊いことだと思う。
しかし、そもそも「髪がないことは恥ずかしい」という価値観にしばられているからこそヘアドネーションが存在するのだという渡辺さんのお話に大きな衝撃を受けた。
実際、「髪がなくても死なない」と思いながら私はその頭をウィッグで隠しているではないか。

私は元々、次に心臓の手術を受けることがあれば、そのタイミングで手入れが楽になるようにロングヘアを短くし、切った髪をヘアドネーションに出そうと思っていた。
自らの傲慢さが本当に恥ずかしかった。

私がウィッグをかぶらずに外を歩けるようになった頃、友人が乳がんに罹り抗がん剤治療のため脱毛した。
不要になったウィッグやケア帽子のいくつかを彼女に譲ったが、その際に会った彼女は(猛暑のせいもあっただろうが)髪のないそのままの頭にキャップだけをかぶって、サイケデリックなピアスを耳からぶらさげて堂々としていた。
「このピアスいいでしょう」と自慢された。
たしかに坊主頭にとても良く似合っていて、私はそんな彼女をかっこいいと心から思った。

友人の乳がん治療記はこちら

彼女が髪のない自分を受け入れられていたかどうかは分からない。
けれど、一度くらい私もそのままの頭で堂々と歩いてみれば良かった、とその時に思った。

自らの意思で再度坊主にする覚悟はつかないが、当時のありのままの姿を出すことは出来る。
このエントリで、抗がん剤治療による脱毛を控えている方や脱毛中の方の参考になる部分が少しでもあれば幸いに思う。


その他のエントリはこちら

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Mayo Kakizaki
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