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こおるかものイギリス渡英全史

この記事では、31歳で日本からイギリスの現地企業へ転職したぼくの、渡英にまつわる苦労話をしていきたいと思います。

今後のマガジンでは、この苦労話の詳細(ビザの申請手順や書類の中身)、そして渡英後のイギリス生活の情報をお届けしようと思っています。これからイギリスに行きたい!海外で働いてみたい!という方に、少しでもヒントになるような記事を書いていけたらなと思っています。

というわけで、この記事はその前段として、なぜぼくがイギリスに行くことになったのか、どんなステップを踏んで渡英したのか、簡単な自己紹介としてお読みいただければと思います。

この記事の要旨はこんな感じです。

  • 平凡なサラリーマンだったぼくが、キャリアアップを志して転職活動!お目当ての企業との面接を経て無事オファーをいただきました。

  • オファーをいただいてからの超怒涛の3ヶ月。仕事の引き継ぎ、退職手続き、英語の試験、ビザ申請、引越し準備、さらには結婚式の準備が重なり、人生最大の忙しさを乗り越えました。

  • そして、結婚式の翌日のフライトでロンドンへ!ロンドンアイから見下ろした景色を見てようやく実感が湧きました。

ちなみに、どのくらい怒涛だったかを、こちらの図にまとめましたので御覧ください。

渡英までのスケジュール

これで興味が湧いた方は、ぜひ最後までお読みいただければ嬉しいです。
それではさっそくどうぞ!

転職活動を始めるまで

ぼくは新卒で日本の企業で普通に勤めるサラリーマンでした。宇宙開発という分野であることは多少レアかもしれませんが、特別なスキルがあるわけでもない、普通のエンジニアです。

ちなみにぼくの宇宙開発のエンジニアとして歩みは、こちらの記事に詳細を書きましたので、よろしければこちらも御覧ください。

そして、6年目に心機一転、転職を決意します。自分の可能性をもっと広げて、最終的にはもっと日本や世界の宇宙開発に貢献したいと思い、海外の宇宙ベンチャーへ転職することを決意したのです。

その時点では、英語力も十分ではなかったし、自分にとって英語はコンプレックスだったので、まずは必死に英語を勉強して、自信が持てるスコアが出たら転職活動を始めようと思っていました。

その際の英語学習のお話はこちらに書きましたので、英語学習に興味のある方はぜひ御覧ください。

そして、無事に目標の英語スコアに到達したぼくは、意を決して転職活動を始めるのでした。そしてのその半年後には、イギリスのオフィスで働いているなんて、まったく想像していませんでした。

CVの準備

転職先は、自分の強みが活かせる宇宙ベンチャーというくくりで絞っていたので、あまり探すのに苦労はしませんでした。そして、イギリスにあるスタートアップに目をつけました。

実際にその企業のHPのリクルートのページを見てみると、自分にぴったりな役職を募集していました。「これは自分にピッタリだ!」となにか運命めいたものを感じてしまったぼくは、「この企業にどうしてもいきたい!」と思うようになっていました。

今振り返ると、もう少し冷静に、いろいろな会社にアプリケーションを出しても良かったのですが、当時は1社にアプローチするだけでも自分にとっては大きなチャレンジだったので、そうした余裕はありませんでした。

さて、実際に海外の企業にアプリケーションを出す際にぼくがしたことは、「とにかく完璧なCVを送る」、ということでした。CVとは、「curriculum vitae(カリキュラムビタエ)」の略で、元はラテン語だそうですが、とにかく日本でいうと履歴書のことです。

ただし、海外でCVという場合、日本の履歴書と聞いてイメージするものとは少し異なり、CVでは、自分がこれまでやってきたことをより丁寧に説明するものになります。特に、アカデミックな現場(大学のポジションなど)にアプライする場合は、自分の研究の成果を厳密に書く必要があり、時に数十ページに渡ることもあります。

ぼくは流石にそこまではしなかったのものの、約4ページに渡って、自分の専門、仕事で成し遂げたプロジェクト、資格・スキル、そして論文リストなどを載せて、徹底的にビジュアルにも凝った上で、送付しました。あとから聞いたことですが、CVの評判が非常に良かったそうです。

ちなみに完成したCVはこんな感じです。今後の記事で、詳細な書き方などをお伝えできればと思っています。

実際に送付したCVの表紙

ちなみに、他の方の海外転職活動を調べると、「Linkedinを作り込んでみんなにスキルを評価してもらって、何十社にアプリケーションを出して面接を受けまくる!」といったことをされている方が多いようです。しかし、ぼくはLinkedinはじめ、一切SNSをしていません。そんなぼくでも、CV一本勝負できちんと採用してもらえたのですから、いま転職活動をされている方も、その点は安心して良いと思います。もちろん、先方から求められているスキルや能力が足りていることは必須条件ですが。

面接

CVを送付したら、数日ですぐにメールが返ってきて、面接へ進みました。

一回目の面接では、今現在ぼくのマネージャーとなって隣の席で仕事をしているP氏と一対一の面接でした。時間は30分くらいで、CVに沿っていくつか質問されました。正直、緊張しすぎてうまく英語は話せなかったのですが、とにかく自分が確実に知っていて自信のあることをはっきり喋って、アピールしました。

その数日後に返事があり、「一次面接合格」のお知らせがありました。もう嬉しくて飛び跳ねたことを覚えています。そして、その時がちょうど年末だったので、二次面接は年明けの1月にセットするということになったのですが、そこで先方から課題を渡されました。かなり技術的な問題で、日本の大学院入試に近い、物理学の計算問題なども含まれていました。それを通じて、逆に自分に求められていることもよくわかった気がします。

ともかく、「課題が与えられたのなら、それを120%で返す」というが、自分の仕事上のモットーでもあるので、年末休暇を返上して、徹底して課題に取り組みました。課題に対する直接的なアンサーだけでなく、そこから一歩踏み込んで、その課題に関連する自分の経験や、計算結果を検証するためのシミュレーションをプログラミングするなどして、自分のスキルをアピールするようにしました。そして、口頭ですべて説明しきる自信がなかったので、可能な限り言いたいことはすべてプレゼン資料に書き込んでおきました

最終面接では、先方は社長とマネージャー、それからもうひとり別の部門のマネージャーと、計3人でした。3人が向こう側の同じ会議室にいて喋っているので、正直聞き取りにくかったのですが、言い訳にはできません。とにかく準備した資料を、時間の許す範囲でかいつまんで説明して、時間があれば残りの資料をぜひ読んでくださいとお願いしました。質疑応答は相変わらずあまり英語がわかりませんでしたが、なんとかやり過ごし、結果を待つことに。

一週間後、メールで「採用通知」が届きました。このときは泣くほど嬉しかったです。すぐに返信して、オファーを受けることを了承しました。

これが転職決定までのいきさつです。これが2022年1月中旬のことです。

いざ、ビザの申請

転職が決まったあと、怒涛の日々が始まります。なかでも一番不安だったのがビザの申請です。3月末までに、ビザの申請・受理・発行まで完結しないといけないからです。

しかも、ビザの申請なんて人生で一度もしたことがないし、コロナ禍で身近に最近ビザを申請した人もいない。ネットの情報もあるものの、厄介なことに、イギリスは数年前にブレグジットした影響で、システムがここ数年でガラッと変わり、ネットの情報も古いものは役に立たず。。。

仕方がないので、一度ビザ申請のコンサルティング会社に1時間1万円ほどで話を聞かせていただき、必要な書類やスケジュール感を確認しました。値段は張りましたが、これがなかったら、準備に自信が持てず、途中で心が折れていたかもしれません。(ちなみに、その会社にビザ申請の代行をお願いすることもできたのですが、ウン十万の費用がかかるとのことだったのでさすがにやめました)

ビザの申請の詳細についても、今後別の記事で紹介したいと思いますが、主に用意した書類の一覧だけこちらで紹介します。

  • 企業からのスポンサーシップ証明書

  • パスポート

  • 戸籍謄本(専門の英語翻訳が必要)

  • 銀行の残高証明書(専門の英語翻訳が必要)

  • 銀行の取引明細書(専門の英語翻訳が必要)

  • 婚姻証明(妻のビザのために必要、専門の英語翻訳が必要)

  • 英語のスコア証明(IELTSで提出)

  • 上記に加え、ビザの申請代と、イギリスの国民健康保険にかかる費用

上記の通り、いくつかの日本語で発行される証明書は、専門の英語翻訳業者にお願いして翻訳をしてもらう必要があります。これも業者によって値段や納期がぜんぜん違い、なにが正解かわからなかったので、ぼくは念のため複数の業者に並行してお願いして、期限に間に合うよう万全を期しました。

また、ややこしいことに、転職が決まったあと、正式に結婚することも決まったため、妻がパスポートの更新しなければならず、慌てて入籍し、パスポートの更新を待ってから申請をしなければならかったのが地味に大変でした。

さらに、書類をすべて準備した上で、まるで迷宮のようなイギリス政府のホームページ(通称:UK.gov)から自分の該当するビザの申請ページに辿り着き、何十ページもある申請項目を間違わずに入力しないといけないという難題をくぐり抜け、なんとか申請が完了しました。このときばかりは発狂しそうになりました。

退職

ビザ申請と並行して、会社の退職手続きもしました。

正直、ビザの申請が上手くいくのかどうかが本当に不安だったので、本当に退職しちゃって大丈夫かな、4月から無職になったらどうしよう、、なんていう不安もありましたが、さすがに退職手続きをしないわけにはいかないので、意を決して退職届を課長や人事部へ送信しました。

また、お世話になったいろんな人から励ましの言葉をいただいたり、会社の同期が送別会を開いてくれたりと、本当に周りに支えられた6年間だったことをつくづく実感しました。幸い、これからも宇宙開発というフィールドは変わらないので、これからも一緒に切磋琢磨していけることを願っています。

ついでに、少額ながらきちんと退職金も出たので、それで引っ越し費用などが賄えたのは良かったです。

引っ越し

いきなりイギリスに行くことになったので、大慌てて家具の処分、荷物の輸送の準備をしました。これも、ネットでいろいろ情報を調べた結果、日系の運送業者の海外引越パックでお願いしました。値段はそれなりでしたが、サービスはとても良かったです。(現地についてからも、日本人が対応してくれました)

イギリスへの荷物の輸送は、船便で送ることが一般的です。僕の場合、大した荷物はなかったのもの、本だけは大量に持ち込む必要があり、船便だと重さではなく体積で値段が決まるので、その点は助かりました。

ただし、コロナ禍で船輸送の需要がかつてないことになっているということで、到着がいつになるか読めないと言われました。半年以上かかる可能性も、と。なので、仕事に必要になる本や書類などは、できるだけスキャンして電子化しなければならず、夜な夜なスキャンする作業をひたすらするのが辛かったです。

ちなみに実際は、3月中に送って、6月に現地に届いたので、良かったです。

結婚式

ビザの申請・退職・引っ越しの準備と並行して(どんだけ並行してやってるんだろう….)僕たちは結婚式の準備にとりかかりました。

もちろん、イギリス行きが決まった時点で、双方の親戚にもすぐに伝えていたのですが、コロナ禍ということもありなかなか挨拶に伺うことができずにいました。そこで、せめて結婚式は、コロナ対策をばっちりした上で、身内の方々を招待してこれまでのお礼を伝える場にしたいと考えていました。

また、これも自分たちのこだわりで、結婚式は自分たちが昔からお世話になっている教会で挙げたいと考えていたのですが、その教会は結婚式用の式場でもない普通の教会(教会とは本来そういうものなのですが。。。)だったので、自分たちですべてプランニングから、会場設営、軽食の手配などをやりました。

毎日深夜まで婚約者の彼女と話し合い、ケンカもしながらでしたが、なんとか乗り越えられたのは良かったです。ふたりでバージンロード用の布を買いに、新宿のオカダヤに行ったのはいい思い出です。


自分たちで買ってきて貼り付けたヴァージンロード

そして結婚式当日。お互いに一人暮らしの部屋を引き払って、イギリス行きのスーツケースを引っ提げて会場入り。晴れて良い結婚式ができたのでよかったです。

渡英

無事に結婚式とプチ披露宴が終わり、親戚を結婚式場から見送ったあと、自分たちで教会の清掃・片付けをして、夜に浅草の旅館で一泊しました。そして翌朝、成田空港へ向かいます。

自分でも無茶苦茶な計画を立てたと今でも思っているのですが、フライトを結婚式の翌日にしたのは、結果的には良かったです(大変なことも良い思い出になったことも含めて)。

飛行機に乗ったときにようやくこれまでのすべての疲れが出たのか、ここで初めてぐっすり休むことができました。転職活動を始めた12月からの、怒涛の4ヶ月。これを乗り切ったことは本当に自分にとって良い経験になりました。

イギリスに着いたあとは、新婚旅行と称して数日ロンドンを見て回りました。初日に乗ったロンドンアイからの景色を見て、「本当に着いたんだ…」と感慨にふけっていました。

ロンドン・アイからのながめ

その後、これからのイギリス生活の拠点となるオックスフォードへ移動し、Air B&Bで予約したゲストハウスにて、ぼくらの新しい生活が始まるのでした。

最後に

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。これでぼくの渡英全史の紹介を終えます。渡英後のお話はまたこれから記事をゆっくり書いていきたいと思います。もちろん、オックスフォードについてからも、いろいろなトラブルや困難に見舞われます。

今後、この「イギリス生活あれこれ」マガジンでは、渡英後の様々な苦労話や、楽しかったことなどを紹介していきたいと思います。

また、上記で紹介した「転職活動」「CVの書き方」「面接対策」「ビザ申請」「海外引っ越し」「バージンロードの布の買い方(笑)」などの詳細もお伝えして行く予定です。

どうもありがとうございました。
これからもよろしくお願いいたします。

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