「好きならできるよね?」の呪い①
今回は私の昔話をする。
初めて好きな人と付き合ったときの話で、私がノンセクを自認するきっかけになった話でもある。
※性嫌悪を感じる方は閲覧要注意
私が初めてお付き合いをしたのは大学生のとき。
相手は、サークルで知り合ったひとつ上の男の先輩だ。共通の趣味などがあり、徐々に親しくなった。二人で出かけるようになって、一年ほどで交際に至った。
彼は過去にも交際経験があったが、私にとっては初めての恋人だった。
活発なサークルだったので、サークルで毎日顔を合わせ、みんなで食事に行くとき以外は駅まで一緒に帰るのが定番のデートだった。
彼は一人暮らしをしていたけど、いつも私を駅まで送ってくれた。
優しい人だった。
そのうち、彼の一人暮らしの家に遊びに行くようになる。
すると、少しずつ体を求められるようになった。
私は当時、自分のことをヘテロでロマセク、つまり「普通」(あまりこの表現は好きではないがあえて使う)の恋愛をする人だと思っていた。恋愛もののマンガやドラマも好きだったし、違和感なく見ることができていた。好きな人と付き合えて舞い上がって、夢心地だった。
しかし、いざそのときが来ると、私はどうしていいか分からず、ひどく戸惑った。この人はなぜ私に欲情しているのだろう、とどこか他人事のようにも感じていた。
彼は華奢な方ではあったけど、それでも男性の体を前にすると、私は恐怖で動けなくなった。
彼は戸惑う私に無理強いをすることはなかった。
ただ、求めることはやめなかった。
「そのうち慣れるよ」と言い、少しずつ先に進もうとした。
ここで強引に押し切ってこないあたり、やっぱり優しい人ではあったのだと思う。
私は彼に嫌われることを恐れ、触れ合うことをはっきりと拒否することができなかった。
一度やんわりと拒んだときに、「なんで?」と彼が少し不機嫌になってしまったからだ。断ると嫌われると思った。
何度もなぁなぁにして先延ばしにしているうちに、優しい彼も痺れを切らしたのか、一泊二日の旅行を提案された。
その先でしたい、とも言われた。
私もいつまでも先延ばしにはできないと考え、承諾した。恋愛=セックスするのが当たり前と思っていたので、ごまかし続けることへの罪悪感もあり、覚悟を決めようとしたのだ。
結論を言うと、旅先でもセックスはできなかった。
優しい彼氏が、性欲に支配された獣のように見えてしまった。あの目は恐ろしくて忘れられない。
怖くて怖くて、この人は誰?と本気で思った。セックスの際に別人のようになってしまう彼を、受け入れることができなかった。
それでも私たちはお付き合いを続けた。
私は彼を好きだったし、彼も私を好きでいてくれていたから。
でも、セックスができないことで、少しずつすれ違い始めてもいた。