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経理で叶えるタロットに夢 #7
祖父の精霊との再会
その夜、風香はいつものように子供たちに絵本の読み聞かせをした。今夜の絵本は風香が子供のころ一番のお気に入りだった『ぐりとぐら』。
懐かしさを感じながら読み聞かせしていたら、いつの間にか子供たちはすっかり眠ってしまっていた。この絵本のときはいつも自分がお話の中の住人になってしまう…。
子供のころ、おじいちゃんがよく聞かせてくれていた絵本だった。
さて…子どもたちが眠ってから夫が帰宅するまでの束の間が風香にとっては貴重な時間だった。今夜も一日の疲れを感じながら、いつものようにタロットカードを広げた。しかし、その瞬間、部屋の空気がふと変わり、どこからともなく優しい光が差し込んできた。不思議に思って顔を上げると、そこには懐かしい姿があった。亡くなったはずの祖父が、穏やかな笑顔で立っていたのだ。
「おじいちゃん…?」驚きと喜びが入り混じる中、風香の目から自然と涙がこぼれた。
「風香、どうした?何をそんなに泣いているんだい?」祖父は優しい声で語りかけた。その声には、生前と変わらない温かさが宿っていた。
風香は涙を拭いながら、これまでの苦悩を祖父に打ち明けた。「おじいちゃん、私、自分のビジネスを成功させたいの。でも経理がどうしても分からなくて、何度やっても失敗ばかりで…」そう語ると、言葉にできなかった不安や焦りが次々と溢れ出した。
祖父は風香の話を静かに聞き終えると、優しく微笑んだ。「経理はな、単なる数字じゃない。そこにあるのは、ビジネスのストーリーだ。お前がやりたいことを支えるための道具であり、未来を描くための魔法なんだよ。」
その言葉に、風香は胸の奥がじんと温かくなるのを感じた。ずっと苦手意識を抱いていた経理が、祖父の言葉で少しだけ親しみのあるものに思えた。
「でもおじいちゃん、私、本当に大丈夫かな…。数字がたくさん出てくると、頭が混乱しちゃうの。」風香は不安そうに続けた。
祖父は笑顔でうなずきながら言った。「風香、今は便利な道具があるんだよ。会計ソフトを使えば、数字を手作業で管理する必要がぐっと減るんだ。それに、ソフトは間違いも少ないし、時間の節約にもなる。試算表や損益計算書も自動で作ってくれる。これを使わない手はないぞ。」
「会計ソフト…?それって難しいんじゃないの?」風香は少し不安げだったが、祖父は安心させるように続けた。
「心配するな。少し慣れるまで時間がかかるかもしれないが、基本さえ押さえればお前ならすぐに使いこなせるさ。まずは簡単な操作から始めるんだ。例えば、日々の収入や支出を入力してみるだけでもいい。それがすべての土台になる。」
祖父の声はどこか懐かしく、安心感に満ちていた。
「ありがとう、おじいちゃん。私、もう一度やり直してみる!会計ソフトも試してみる!」風香の目には、かつてないほどの強い意志が宿っていた。
その夜、風香は祖父の教えを元に、早速、会計ソフトのことを調べてみた。ちょっと見ただけで数種類のソフトがあり、どれにするか決めることができなかった。
一体どれにしたらいいのだろうか…
そこにちょうど夫の祐太が帰ってきた。
「なにか調べ物してるの?」
風香は会計ソフトが決められないことを祐太に話してみた。
「経理に詳しい人に聞いてみるのが一番いいと思うけど。もし自分で見れるんだったら、最初はシンプルな作りのものが使いやすいと思うよ」
祐太は、なぜシンプルなものが良いのか理由も付けて優しく話してくれた。
もう少しだけ見てみて決められなかったらシンジさんに相談してみようか…と思いながら見ていた風香だったが、一つの会計ソフトを開いたときに「これだ」とひらめき、早速アカウントを作成してみた。
会計ソフトのチュートリアルを読みながら、少しずつ基本操作を覚え、日々の収支を入力し始めた。最初は戸惑うことも多かったが、入力した数字が整理される様子に少しずつ楽しさを感じるようになった。
祖父との再会は、風香にとってまるで光が差し込むような希望の瞬間だった。そしてその光は、風香が自分の夢を叶えるために進む道を照らし続けてくれる気がしてならなかった。会計ソフトを使いこなす日が来るのを目指して、風香はまた一歩を踏み出したのだった。
つづく