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経理で叶えるタロットの夢 #9
精霊の助言
その夜、早々に寝てしまった子どもたちにしっかり布団を掛けながら、風香は今日見たおじいちゃんの帳簿のことを思い起こしていた。帳簿にはたくさんのことが書き記されていた。風香は帳簿を前にして再びタロットカードを広げていると、祖父の精霊が再び現れた。
「おじいちゃん、本当にすごいよ!おじいちゃんの帳簿を見つけたんだけど。あんな帳簿今まで見たことない!」風香は目を輝かせながら祖父に話しかけた。
「そうだろう?あれには『経理の魔法』がぎっしり書き込まれているはずだよ。数字の裏には必ずストーリーがある。そのストーリーを読み解くことができれば、ビジネスを救う方法も見つかるんだ。」
「でもおじいちゃん、どうしてあんなに分かりやすい帳簿が作れたの?」
「それは、経営者が何を求めているかを考えたからだよ。ただ正確に記録するだけでは意味がない。数字を『未来への地図』に変えること。それが経理の本当の力だ。」
祖父の言葉を聞きながら、風香の心には新たなアイデアが浮かび始めていた。それは、タロットの占いと経理の力を融合させて、クライアントにとってもっと役立つサービスを提供する方法だった。
もっと経理がわかるようになりたい!そうすればタロットと経理の融合がもっとスムーズに得られる。
風香は思わずおじいちゃんに
「おじいちゃん定期的に現れて私に経理の魔法を教えて!」といっていた。
仕訳帳に隠された魔法
風香は会計ソフトの操作に慣れ、自分のビジネスを管理できるようになったと思っていた。入力作業もスムーズに進み、帳簿の数字が綺麗にまとまっていく様子に、少しだけ誇らしさを感じていた。
しかし、その達成感は長くは続かなかった。翌日、会計ソフトで試算表を確認していた風香は、売上と経費のバランスがどうにもおかしいことに気づいた。試算表の数字が想定とまったく合わず、頭を抱えた。さらに細かく調べていくと、仕訳の記録に明らかなミスが見つかったのだ。
例えば、タロット占いのセッションで受け取った売上を費用として記録していたり、備品として購入したタロットカードを「接待交際費」に振り分けていたりと、仕訳科目がバラバラだった。これが原因で試算表の構造が崩れ、風香の頭は混乱状態に陥った。
「どうたらいいのか全然わからない……。」
深いため息をつきながらパソコンの前に座る風香。その夜、祖父の精霊が再び姿を現した。
「お前さん、また壁にぶつかったようだな。」
穏やかな声に顔を上げた風香は、懐かしい祖父の姿に思わず泣きそうになった。「おじいちゃん、もうダメかもしれない……。」
祖父は微笑みながら近づき、風香の肩に手を置いた。「大丈夫。失敗は学ぶためにあるんだ。お前が理解できるように、具体的な例を使って教えてあげよう。」
おばあちゃんの「経理3行日記」
その時、祖父が目を向けたのは、風香が数日前におばあちゃんから聞いた「経理3行日記」の話だった。
「風香、覚えているかい?おばあちゃんが言っていた『今日どこへ行って、誰と何をしたか』を書く日記のことを。」
風香はハッとした表情になった。「ああ、あれか。おばあちゃんが私に勧めてくれたけど、正直あまり役に立つとは思わなかった。」
祖父は優しく頷いた。「実はあれが経理の基本なんだよ。取引がどのように発生したのか、その背景をしっかり記録することが、正しい仕訳を作る第一歩になるんだ。」
仕訳の間違いを正す具体例
祖父は風香が間違えた仕訳を例に挙げ、修正のポイントを説明し始めた。
売上の仕訳
「例えば、タロット占いのセッションで受け取った10,000円を『消耗品』として記録していたな。でもこれは事業のメインの収入だから、『営業収益(売上)』として記録すべきだ。」
風香は祖父の説明を聞きながら、ソフトの画面を確認した。「じゃあ、どういうふうに直せばいいの?」
「こうだ。」祖父は分かりやすく指示を出した。
誤った仕訳:
借方:消耗品 10,000円 / 貸方:普通預金 10,000円
正しい仕訳:
借方:普通預金 10,000円 / 貸方:営業収益(売上) 10,000円
「売上はビジネスの核となる部分だ。分類を誤ると全体のバランスが崩れてしまう。もらったお金なのか支払ったお金なのかを意識しなさい。」
経費の仕訳
「次に、ノートを『接待交際費』として記録していたな。消耗品購入は『消耗品費』に分類するべきだ。」
誤った仕訳:
借方:接待交際費 200円 / 貸方:普通預金 200円
正しい仕訳:
借方:消耗品費 200円 / 貸方:普通預金 200円
「仕訳を正確に行うためには、『お金がどこから来て、どこへ行ったか』を丁寧に追うことが重要だ。そのために3行日記を活用するんだ。」
3行日記の魔法
祖父の説明に従い、風香はおばあちゃんが勧めてくれた3行日記を見直した。そこに書かれていた内容をもとに仕訳をしたはずだった。記載の内容に不備があることは明らかだった。
よく見直してみると間違いがわかった。
「これじゃクライアントさんとノートを買いに行ったことになってるだろう?」
「ほんとだ!」
キチンと書いてるつもりだったが、おじいちゃんの言う通りこれでは詳細がつかめてなかったことに気が付いた。
「記入方法をなおす必要があるな」
訪問場所 誰と 何を 金額 領収書NO
森カフェ クライアントB コーヒー代 780 ①
よろず商店 ノート購入 200 ②
森カフェ クライアントB セッション 10,000
おじいちゃんはそういうとノートに表を作ってみせた。領収書にナンバーを振って領収書の裏面にナンバーを書き込んだ。
「これを元に仕訳を作れば、迷わずに済むだろう?」
祖父の言葉に、風香は深く頷いた。「確かに、こうやって取引を振り返れば、仕訳の意味がわかるようになる。」
「ここができるようになったら、次のステップへ進めるな」
「次のステップ…?」
「そうだ。仕訳帳はパズルのピースみたいなものだ。そのピースを集めて全体像を作り上げるのが、試算表や財務諸表なんだよ。」