2024~2025 3歳クラシック血統分析(第29週) 2024/12/14~12/15
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まずは12/11に川崎で行われた全日本2歳優駿から。
キズナ産駒ナチュラルライズが圧倒的な人気を背負ったレースだったが、川崎競馬場の急角度のコースを克服できず、最後までジョッキーがまともに追えないレースとなってしまった。
そんな中を逆にコーナーをうまく使って先頭に進出し、最後は2着ハッピーマンの急追を凌いで優勝したのがニューイヤーズデイ産駒のミリアッドラヴだった。
「スピードが不足している上にMachiavellianが強い馬特有の「まったりしたペースじゃないと走れない」が出てしまうのが難点」とニューイヤーズデイ産駒を評しているが、今回のレースは早め先頭でもまれない競馬、自分のペースでの競馬を通せたのがプラスに働いた。
やや展開に利がある勝ち方で、ここ数年のハイレベルな全日本2歳優駿の中では一枚劣るレースと判断する。
続いて12/15に行われた朝日杯FS。
ややレベルの低そうなメンバーが揃ったこともあり、前走で未勝利を勝ったばかりのアドマイヤズームが強い競馬で押し切ってしまう展開に。
なおこの馬はnoteで評価をアップしていないので今週掲載します。
◆12/15 京都 芝1600m 朝日杯FS
・アドマイヤズーム(モーリス×ダイワズーム) 評価A
モーリスにディープインパクトはよく見かけるが、ジェンティルドンナやヴィルシーナといった名牝以外の産駒ではG3が限界という「逆ニックス配合」。これは闘争心に欠けるモーリス産駒のメンタルを、母父ディープインパクトでは補完できないために起こる。
ただしこの馬は母父がハーツクライで闘争心の補完ができており、モーリス産駒にとっては相性のいい相手となる。ハーツクライもディープインパクトもサンデーサイレンス×Lyphardの構成だが、伝える資質がまったく違うので注意が必要。これは血統の字面だけでは判断できない。
前走の未勝利戦が前半2ハロン目に10.5秒というとんでもなく速いラップが挟まり、非常に厳しいレースだったのを2番手から押し切った。なので硬い馬場を先行して粘るジャックドールのような走りが可能となる馬と判断できる。距離が伸びてメリハリのあるレースが求められたら厳しいが、馬場が堅ければ通用する。
上がり1ハロン:11.0秒
残400~200m:10.9秒
ラップ:36.3-33.6(後傾)
モーリス:オーストラリアでの成功を考えれば日本での実績がやや物足りないが、使える脚の長さが短いので長い直線を差し切る芸当ができない上に、ごちゃついた競馬を苦手にするのが原因。意外にスムーズに脚を使えるので「前にいる馬が少ないときに」軽く抜け出すのは得意。爆発力には欠ける。
◆12/14 中山 芝2000m未勝利戦
・トリプルコーク(キタサンブラック×トゥーピー) 評価A
外回しも届き始めた今週の中山Aコース、終始まくり気味に外を回してそのまま差しきった内容は悪くない。キタサンブラック産駒で長い脚を使えないタイプではあるが、ルメール騎手の仕掛けのタイミングが上手く、そのまま一気に押し切れた。
冬の芝状態を考えればタイムもそれなり、今後ともやれるだけの雰囲気は感じさせた。少頭数戦、または走りが外に流れやすい中山芝コースならまだやれそう。
母内Caerleonにきっちりと血を集めたしっかりした構造の血統。Northern Dancerの使い方が非常に良い。
上がり1ハロン:11.7秒
残400~200m:11.4秒
ラップ:37.2-34.3(後傾)
キタサンブラック:外枠、少頭数、固い馬場と、とにかく「楽なレース展開」にならないとその能力を発揮できないのが最大の欠点。メンタルの弱さはどうしようもないレベル。だが長所を発揮できる場面になれば抜群の能力を見せるのも確か。爆発力は現役種牡馬でもトップクラスであり、諸刃の剣。
◆12/14 中山 ダ1800m新馬戦
・ワンカードフェロー(American Pharoah×ワンカードトゥーメニー) 評価B+
後続の追い込みが急なレースであったが、先行したままギリギリまで脚を残して粘ることが出来た。いかにもアメリカ系血統らしい「伸びないが粘る」レース展開で、消耗戦になればこの手の系統が強いことを証明した。
ただしラップとしては前半が緩んで中盤が早く、ラストでまた落ちる奇妙なレース。結果的にスタミナ豊富な走りをするこの馬が残っただけ、という感じ。
配合は父母間、母内ともに極めて緻密でカフェファラオにも似た良さがある。自分のペースで走れさえすれば上位でも粘り腰を見せられる可能性はある。
上がり1ハロン:13.4秒
残400~200m:13.1秒
ラップ:38.9-39.2(後傾)
American Pharoah:日本でもカフェファラオなどを出したように優秀な種牡馬であるが、その特徴として「自分勝手なレースをして、少しでも嫌気がさすとレースを投げる」というのがある。広いコースなら多頭数をこなすが、それ以外では少頭数の方がいいタイプ。よって格上げで脆さを見せることがある。
◆12/14 中京 芝1400m未勝利戦(牝)
・コルドンブルー(キズナ×ヴァイセフラウ) 評価B
前半からかなり速く流れ、そのまま最後の坂へとなだれ込む厳しいレース。当然ながら前が苦しく後ろにいた馬が楽なレースだったが、その後続勢の中で最も良い脚を使って一気に差し切る脚を見せた。
ただしあくまで「相対的に速い」であって物凄い切れ味を見せたわけではない。ペースが緩めばこの脚は発揮できないものと考えていいだろう。
ノースヒルズが大切にするラティールの牝系だが、その良さを引き出した感じはまったくない。
上がり1ハロン:12.1秒
残400~200m:12.1秒
ラップ:35.4-35.1(フラット)
キズナ:多頭数での安定感は抜群だが、上位クラスでは前の馬を抜こうとしない気性の弱さがネック。直線で邪魔をされなければ凄い差し脚を見せることもあるが、あくまで下級条件限定と言える。クラシック路線で勝つためには前が崩れる展開が必須。
◆12/14 京都 芝2000m新馬戦
・メディテラニアン(サートゥルナーリア×ミカリーニョ) 評価A
そこまでスローな流れではなかったが、京都らしく坂を下るあたりから一気にペースが速くなり、そのままゴールまでラップが落ちない流れ。後方外から進出した二頭が差し切ってくる勢いだったが、位置取りに助けられて上手く残ることが出来た。
ただしこれは決して馬が弱いわけではない。ペースが厳しかったので前に行った人気馬は潰れているし、その中で粘った上で「サートゥルナーリア産駒特有の一瞬の切れ味」を引き出しているのだから、着差が小さかっただけで内容は十分。
サンデーサイレンス、Mr. Prospector、Storm Catを同時にインクロスさせることで父母相似状態を作り出した好配合馬で、上位に入っても通用するだけの中身はある。
上がり1ハロン:11.5秒
残400~200m:11.8秒
ラップ:37.4-35.3(後傾)
サートゥルナーリア:ゴール前でひと頑張りする闘争心は父からきちんと受け継いでいた模様。問題はそれを多頭数戦で発揮できるかにある。こうしたタイプは距離が伸びてマイナスになるケースがあるので、そのあたりの見極めも重要か。ただし今のところの傾向として、爆発力はかなり優秀なものがあるが少頭数の方が向きそうな感じ。
◆12/14 京都 ダ1200m新馬戦
・ペイシャヴァルツー(オーヴァルエース×ペイシャネガノ) 評価B
逃げてぶっちぎったレース。競り合いが全くなかったレースで、なおかつ自らラップを刻んで淡々と走りぬいた結果の大差勝ちだけにあまり評価がしづらい。次走で好走して初めて評価が決まる走りだった。
ダートではこうした「大差勝ちだけど強いか不明」ということがよくある。
マイナー種牡馬の父はそれなりに闘争心は高そうだが、強度の近親交配で無理やり引き出した感がある配合。配合内容は悪い。
上がり1ハロン:12.6秒
残400~200m:11.8秒
ラップ:36.4-36.8(フラット)
オーヴァルエース:ヘニーヒューズの系統は影響力が強く、マイナー種牡馬でも割と闘争心を残していることが目立つ。母系がグラスワンダーとマルゼンスキーで活力がほとんどないが、それでも「一本調子に走れる」レースであれば能力は発揮できよう。ダート短距離専門か。
◆12/15 中山 芝1600m未勝利戦
・ライラ(キタサンブラック×タニノジュレップ) 評価B+
中山芝1600mは外回りコースで、しかも4コーナーの構造上外回しがまったく不利にならない構造。そのためもまれて弱い馬がベストパフォーマンスを発揮できる舞台でもあるのだが、この馬の勝ち方は違った。
決して超ハイペースではないが、まったく緩みがない流れを先行して同じ位置にいた馬を競り潰しながらの逃げ切り勝ち。これぐらいやってくれると「馬場の恵まれではなく能力が高い」と言い切れる。
かなりのアウトクロスでシンプルな構造だが、フォーティナイナーを生かした母の血が良いので及第点に達している。
上がり1ハロン:12.0秒
残400~200m:11.5秒
ラップ:35.6-35.0(フラット)
キタサンブラック:前述
◆12/15 中山 芝1600m新馬戦
・アルメントフーベル(サートゥルナーリア×アメリ) 評価B+
早めにまくりかけて先頭に立ち、そのまま押し切ったレース。少しずつ馬場が荒れてきてイン有利でもなくなっているので、このまま押し切るのは難しいかと思ったが、それでも最後まで脚を失わずに粘り込んだ。
一瞬の爆発力勝負のサートゥルナーリア産駒だけに下手な位置で脚を使うとマイナスになるが、4コーナー進出時にはゆったりと走らせられていたのか、最後まできちんと力を残せていた。騎手のうまさが光る内容で、上がりタイムもそれなりに速い。
母は名牝アゼリの系統で、そこはプラス。ただし母自身の血統がそこまで完成度の高くないもので、上位ではマイナスになる。
上がり1ハロン:11.3秒
残400~200m:11.5秒
ラップ:36.4-34.5(後傾)
サートゥルナーリア:前述
◆12/15 中山 ダ1200m新馬戦
・サヨノジャンボリー(モーニン×ゴーゴーサンデー) 評価C
目の覚めるような末脚で一気に突き抜け「強い!」と声が出てしまうようなレース。
だが前にいた馬の脚は止まっており、あくまで展開を利して差し切ったというもの。一見ナダル産駒のような爆発力だったが、ナダルの場合は前が止まっていなくても差し切るのではっきりと分かる。
父の母Gigglyとキングカメハメハの相性が良く、そこだけが能力の源泉。ただし全てにおいて一枚劣る配合で、上積みはなさそう。
上がり1ハロン:12.9秒
残400~200m:13.0秒
ラップ:36.3-36.8(フラット)
モーニン:地方競馬では2歳戦から大活躍するも中央では再現しなかったように、「前半から飛ばして後半バテバテになる」特殊な競馬でこそのタイプ。アメリカンタイプの種牡馬で下位条件戦では賞金回収がしやすいだろうが、上位クラスでは頭打ちになる感じ。配合を相当詰めないと。
◆12/15 中京 芝1400m新馬戦
・ホーリーブラッサム(ロゴタイプ×ホーリーシュラウド) 評価B
逃げを得意とした父同様にうまく先手を取り、後続をうまくばらけさせて押し切ることに成功。後続がばらけるということも能力がないと出来ない芸当なので、楽な展開だったことを持って「弱い」とは言えない。
だが強さが求められる展開でなかったことも事実で、この後は展開に恵まれるか、自らの能力が突出したレースでないと走れない。ロゴタイプ産駒はいずれそうしたパターンに陥るので、上振れしてもG3が限界と覚えておきたい。
Danzigを中心にした配合はわかりやすくてシンプルだが、今一つ壁を突き抜けるパワーがなかった。
上がり1ハロン:11.5秒
残400~200m:11.5秒
ラップ:37.2-34.6(後傾)
ロゴタイプ:闘争心に欠けるローエングリンが出したG1馬ということで、自分のペースさえ守れれば強いが崩されると脆いというのを産駒にもきっちり受け継がせている。マイナー種牡馬の割には安定して力を出せるのは長所だが、絶対に超えられない壁があるタイプの種牡馬。
◆12/15 京都 芝1600m未勝利戦
・ショウヘイ(サートゥルナーリア×オーロトラジェ) 評価A+
前走の新馬戦では完璧なコース取りと完璧な仕掛けタイミングで、普通のレースであれば間違いなく勝つどころか圧勝まであったはず。それを差されたのはもう相手が悪すぎるとしか言いようがない。負けに不思議の負け無しというが、マディソンガールが強すぎたからこその負け。
今日は前走よりも少し控える競馬を見せたが、本来なら逃げても圧勝できたはず。それをあえて控えたのは騎手が馬に教育を施したためだろう。それでも何の問題もなく持ったままの楽勝、この馬もまた強いことを証明した。
配合自体は比較的シンプルだがツボを押さえたもの。下手するとインクロス状態が汚くなるサートゥルナーリア産駒だが、3代内にはインクロスを入れていないのは好感が持てる。母は配合の難しいオルフェーヴル産駒だが、エレクトロアート内にうまく血を集めた形態。
上がり1ハロン:11.5秒
残400~200m:11.5秒
ラップ:37.2-34.6(後傾)
サートゥルナーリア:前述
◆12/15 京都 芝1600m新馬戦
・ノクナレア(ミッキーアイル×ララア) 評価B+
後続がいつ来るか、いつ来るかと思っているうちに終わっていたという感じのレース。ミッキーアイル産駒が得意とする「爆発力が求められないレースで粘り通す」スタイルがきれいにはまった。スローの割には前が止まり、上がりの脚が要求される競馬になった。なお上がり3ハロンのラップタイムは奇しくも中山新馬戦とまったく同じ。
だがそうした性質を持つ父だけに、今後厳しい流れになった時にどこまでついていけるかが未知数。少なくとも自力で馬群を解決するだけの脚はないので、人気では軽視したい種牡馬でもある。
Northern Dancerがやたらと多い配合だが、Nureyevを中心に割ときれいにまとめており、配合内容としては上々のもの。
上がり1ハロン:11.3秒
残400~200m:11.5秒
ラップ:38.1-34.1(超後傾)
ミッキーアイル:ディープインパクト産駒としては珍しいぐらいに短距離、マイルに適性を持つ馬だったが、一杯になってからも粘りとおす我慢強さを受け継いでいたのが長所だった。自身の産駒も粘り強さが最大の売り。ただし馬群から抜け出す脚に欠け、短距離シフトなのにステイヤーっぽい脚という中途半端さがある。
◆12/15 京都 ダ1800m新馬戦
・ショーダンサー(シニスターミニスター×カマクラ) 評価A+
さすがは京都巧者のシニスターミニスター、というレース。極端に先行せずとも旺盛な闘争心を長く発揮できるので、直線が長いコースでこそ良さを発揮する。それでいて直線に坂がないコースがベスト。9番人気とは思えないレースだった。
ダートの後傾ラップ、しかも加速ラップで前にいた馬が圧倒的に有利なはずだが、それをものともしないのは馬の能力の証明。
母父シンボリクリスエスを完璧に使い切った配合馬で、しかも祖母フロイラインローゼとも血が共通することで実質父母の相似配合。この配合なら走ってくれないと困る、というハイレベルなもの。
上がり1ハロン:12.5秒
残400~200m:12.9秒
ラップ:38.7-37.5(後傾)
シニスターミニスター:完全なダート特化型種牡馬だが、これはA.P.Indyの走りの質が「先行して粘る」に特化しているため。Bold Ruler系はギアチェンジの速さがあるので硬い芝でも走れるが、そこで通用するだけのスピードを与えられない。なので得意分野に出走しているときだけ狙うべき。
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「競馬最強の法則」にて血統理論記事を短期連載しておりました。血統の世界は日々世代を変えてゆくものだけに、常に新しい視点で旧来のやり方にとらわれない発想をお伝えしたいと思います。