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2024~2025 3歳クラシック血統分析(第28週) 2024/12/7~12/8

(有料noteですが、無料で最後まで読めます。内容が気に入った、応援したいという方のみご購入下さい)

今週は2歳牝馬の総決算、阪神JFが行われました。勝ったのはアルマヴェローチェでした。


新馬勝ち時点での評価は下記の通り。

少頭数戦の逃げ切りと言うことで、このレースだけでを見て強いと判断するのは不可能。
血統表内にNorthern Dancerが父母ともにびっしりと埋まっており、特に母はダイワメジャーとサクラバクシンオー内のノーザンテーストをバランスよく結合させた良い配合。父母間の相性はそれなりで、悪い馬ではない。

8/4のnoteより

今回のレースは2着もサトノダイヤモンド産駒ビップデイジーでしたが、勝ち馬含めて多頭数戦で強みを発揮するタイプではありません。

ハイペース戦、さらには年末京都という通常では起こらない開催ということもあり馬群が大きくばらけてしまいました。

桜花賞戦線においてはあまり参考とならないレースです。1992年にスエヒロジョウオーが制したときと似たレースという感があります。


◆12/07 中山 芝1600m新馬戦

・ギフテッド(モーリス×ルパン2) 評価B+

強烈な近親交配馬であるファントムシーフの下だが、配合内容はこの馬の方が二段階も三段階も上、というよりファントムシーフの血統が酷すぎる。

それはさておき、配合の肝はグラスワンダーとデインヒルのニックスと言える関係。オーストラリアでもこの組み合わせは多くの重賞ウイナーを出しており信憑性が高い。モーリスは決して相性の良くないディープインパクトではなく別の系統と合わせるべき。

走りの内容としては、闘争心が求められない中山マイルで先行抜け出しということもあり、それなりに……というもの。今回は多頭数を問題にしなかったが、本質的には少頭数向きの馬。

上がり1ハロン:11.6秒
残400~200m:11.4秒
ラップ:37.1-34.8(後傾)

モーリス:オーストラリアでの成功を考えれば日本での実績がやや物足りないが、使える脚の長さが短いので長い直線を差し切る芸当ができない上に、ごちゃついた競馬を苦手にするのが原因。意外にスムーズに脚を使えるので「前にいる馬が少ないときに」軽く抜け出すのは得意。爆発力には欠ける。

ギフテッド

◆12/07 中山 ダ1800m新馬戦

・タマモカンパネラ(ナダル×タマモボレロ) 評価B

最初だけは速かったがその後ペースが落ち着き、途中から一気に加速してまた落ちるという変なラップ。前にいた馬がなし崩しに脚を使わされたという感じで、2着のシナツヒメはその歪みをうまくついて急襲してきた。

勝ったこの馬はシナツヒメの急襲を見た上でちょっとだけ脚を使って抜け出したというもので、ナダル産駒らしい爆発力は感じられなかった。

祖母チャームダンスとの相性が抜群に良く、そこが能力の源泉となる。ただし新馬戦のパフォーマンスはいまいち。

上がり1ハロン:13.7秒
残400~200m:13.7秒
ラップ:38.3-40.3(前傾)

ナダル:ダートと短距離戦に実績が偏るが、先行だけでなく中断から差す競馬もできているように、Kris S.系の闘争心は強く受け継いでいる模様。最大の長所は一発の爆発力で、瞬時に相手を突き放すレースをして光るタイプ。ダート向き種牡馬ということもあり先行さえできれば我慢が効くタイプ。

タマモカンパネラ

◆12/07 中京 ダ1400m新馬戦

・トゥロン(ナダル×スパイラルステップ) 評価B+

ハイペースのスタートから少しだけペースを落とし、そのままなだれ込んだ一戦。外から来たゲイルライダーの脚が良かっただけに差し切られると思ったが、最後にちょっとだけ脚を使って抜け出した。中山の6レースと酷似した内容。

これも最初ナダル産駒が勝ったとは気づかなかった。つまり爆発力を感じさせる内容ではなく、位置取りと騎手の仕掛けタイミングがはまった感が強い。

母父シンボリクリスエス内に全ての血を凝縮し、しかもそれが父母間、母内ともに共通しているのがこの馬の最大の良さ。Robertoの生かし方が抜群に良いので、もう少し見てみたい馬。

上がり1ハロン:12.6秒
残400~200m:12.2秒
ラップ:36.3-36.8(フラット)

ナダル:前述

トゥロン

◆12/07 京都 ダ1800m未勝利戦

・カナルビーグル(リアルスティール×ソブラドラインク) 評価A

最終コーナーから一気にまくって進出、そこからは非常に長く脚を使って8馬身差で突き抜ける極めて強い内容だった。

スローペースだったのは確かだが、乾ききったダート戦で11秒台のラップを2ハロン連続で叩き出すのは並の馬に出来る芸当ではない。少頭数での勝利だったこともあり多頭数適性がどうかだが、ダートであればまだまだ戦えるはず。

祖母Stromy Soberlyが父の母ラヴズオンリーミーと完璧に呼応した好配合馬で、実力と血統が合致している馬。

上がり1ハロン:11.9秒
残400~200m:11.9秒
ラップ:36.9-36.1(後傾)

リアルスティール:フォーエバーヤングがアメリカで見せた無尽蔵の精神力は、この父が産駒に伝えす資質として最も大きいもの。我慢はするが最後の最後で力尽きるキズナとは正反対で、やや多頭数でのコントロールに難があるが「相手に食らいつく」メンタルの強さを持つチャンピオンタイプの種牡馬。

カナルビーグル

◆12/07 京都 芝1200m新馬戦

・ガンマジーティーピ(カレンブラックヒル×ダームドゥラック) 評価B

芝1200mのスロー戦は近年増えてきたが、エイシンワンドのようにスローで勝ち上がった馬でも上位で戦うことが可能になってきた。スプリント戦の厳しさが年々失われているだけに昔とは見方を変える必要があるだろう。

後半が一貫して速い流れの中、長く脚を使って伸びてきた内容はそれなりに見どころがある。ただし楽なレースであったことは確かで、今後は1200mよりも1400mが主戦場になるだろう。相手関係も重要になるタイプ。

母の血統は良いが、父との相性がベストとは言えない。

上がり1ハロン:11.4秒
残400~200m:11.8秒
ラップ:36.2-33.5(超後傾)

カレンブラックヒル:ダイワメジャーの気性の強さだけはしっかりと受け継ぐも、体力がないので「耐える」ことができなくなってる感じ。そのため短距離戦に戦績が偏るし、先行して楽なレースが出来ないと厳しい。強い馬が出にくい種牡馬。

ガンマジーティーピ

◆12/07 京都 ダ1200m新馬戦

・グランドプラージュ(シニスターミニスター×ベルプラージュ) 評価A+

中盤のラップがたるんだが、その後は徐々に加速していって後続が完全にちぎれてしまったレース。2着ロッシニアーナにとっては相手が悪かったの一言だろう。

ダート戦的なラップではないとはいえ、これだけ長く脚を使える馬はなかなか貴重で、さすがはダートに実績のある父の産駒だと思わせてくれる。この内容なら上位でも通用するだろう。

父と母の配合自体がほぼ相似状態で、血統構成としては完璧なレベル。来年のダート戦線で楽しみになる。

上がり1ハロン:12.1秒
残400~200m:12.4秒
ラップ:38.3-37.0(後傾)

シニスターミニスター:完全なダート特化型種牡馬だが、これはA.P.Indyの走りの質が「先行して粘る」に特化しているため。Bold Ruler系はギアチェンジの速さがあるので硬い芝でも走れるが、そこで通用するだけのスピードを与えられない。なので得意分野に出走しているときだけ狙うべき。

◆12/08 中山 芝1800m新馬戦

・バースライト(モーリス×エリティエール) 評価B+

向こう正面で一気に進出する走りを見せていたので、よほどペースが遅いのかと思ったらそこまで極端ではない。芝が堅く後方からでは届かないと言う判断をした騎手に馬がよく反応した。まくりと言ってもいい勝ち方で、これはメンバー内で実力が上位じゃないとできないもの。そこは評価していい。

坂を昇り切った後も相手を突き放しており、これも良い。ただし相手関係がそこまででもなく、この勝ち方が即次回につながるかと言われると少々疑問も残った。

モーリス×ディープインパクトはそこまで高く評価できる配合ではない、という感想に変化はない。母の血がよほどしっかりしていないと走らない配合だが、ジンジャーパンチの系統でもあり質は担保されていたのは幸運。母の血の質だけで走る配合で、ガソリンが切れたらおしまい。

上がり1ハロン:12.0秒
残400~200m:11.7秒
ラップ:37.1-35.2(後傾)

モーリス:前述

バースライト

◆12/08 中山 芝1800m新馬戦

・ミツカネリブラ(シルバーステート×ハワイアンスマイル) 評価C

裏開催っぽいメンバー構成で、道中の負荷もなくぱっとしないレース。内容についてはそれだけ。おそらく今年もっともレベルが低い新馬戦。

血統も同じぐらいぱっとしない。闘争心のないシルバーステート産駒なので母父キングカメハメハでいい感じのフォローは出来ている(ハービンジャー産駒の必勝パターンでもある)のが数少ないメリット。AlzaoとThornton Hillの組み合わせも「もう少し早い代であれば」有効に働いただろう。

上がり1ハロン:14.2秒
残400~200m:13.8秒
ラップ:38.6-41.2(後傾)

シルバーステート:長くいい脚を使えるのが最大の長所だが、多頭数でもまれる流れ、内枠でスムーズに運べないレースとなると長所が激減してしまう。相手が弱ければ何の問題もなく勝てるだけのポテンシャルはあるので優秀な種牡馬ではあるが、体力不足もあって上位では完全に止まる。

ミツカネリブラ

◆12/08 中京 芝2000m新馬戦

・エムズ(ドゥラメンテ×ライフフォーセール) 評価A+

道中がかなり緩んだ展開だったこともあり、最後は完全に上がり勝負。最内で粘って残したとかなら高く評価することは出来ないが、前に馬を何頭も置いて一気に突き放した内容は非常に高く評価できる。逆に後ろが潰れすぎて2着がとんでもない位置から突っ込んできたぐらい。

闘争心にあふれたドゥラメンテ産駒だけに、こうした「相手を潰す」走りができるのは何よりも強さの証明になる。上がり2ハロンのタイムも優秀で、人気を背負った状態でこのタイムを出すのは並のことではないだろう。

配合もNearcticからの連続インクロスを用いたシンプルかつ整った内容。姉にダノンファンタジーがおり牝系も文句なし。

上がり1ハロン:11.4秒
残400~200m:11.5秒
ラップ:38.3-34.6(後傾)

ドゥラメンテ:多頭数でもまれる展開に強く、一瞬見せる爆発的な脚もトップクラスという現代の最強種牡馬。闘争心とはまさにこの馬の産駒のためにある言葉。ただし弱点といえば長く脚を使わされる展開で、相手が弱くストレスが少ないレースになると他馬の後塵を拝することがある。だが本番では逆転する。

エムズ

◆12/08 京都 ダ1400m未勝利戦

・ベルジュロネット(ロードカナロア×ベルカント) 評価B+

ダート戦でラスト1ハロンが11秒台というのは速いタイムだが、普通は不良馬場かスローペースの場合に発生するもの。だが乾いたダートで、しかも前半がかなり速い。この中で叩き出したタイムなので非常に価値が高い。

ロードカナロア産駒は極端に強い闘争心があるわけではなく、かといって相手にひるむわけでもないので少しつかみづらい所がある。母父の影響を受けやすいタイプと判断している。そう考えるとテスコボーイの系統にしては気性が強かったサクラバクシンオーはベストの相手と言えるだろう。

ただし配合全体は可もなく不可もなくというレベル。もう少し血統自体に見どころがあればA評価だった。

上がり1ハロン:11.9秒
残400~200m:12.9秒
ラップ:36.1-37.3(前傾)

ロードカナロア:距離を問わず強い馬を出している優秀な種牡馬だが、母父の影響をかなり受けるタイプ。闘争心はそれなりにあるし多頭数適性もあるのでG1路線でも通用するが、ドゥラメンテやエピファネイアと比較するとやや本番に弱い感じがある。ただしそれはトップクラスでの話。

ベルジュロネット

◆12/08 京都 ダ1400m新馬戦(牝)

・ヤマニンバロネス(シニスターミニスター×ヤマニンバステト) 評価A

直線だけで8馬身ちぎり捨てるパフォーマンスは極めて優秀だし、上がりタイムも悪くはない。ただし同じ2歳戦でベルジュロネットが出したタイムより遅い(ペースも遅い)ことには留意が必要。

シニスターミニスター産駒は高い闘争心で相手を一気に置き去りにする走りができるので、ダート馬では突出しやすい。そこに母父ディープインパクトの「軽さ」を入れたことが京都で高いパフォーマンスを見せることが出来た所以だろう。逆に厳しい流れに巻き込まれたときに弱さが出る可能性も。

アメリカ系の父にしては意外にも母内Sadler's Wellsに血が集中しており、シニスターミニスター産駒にしては少し珍しい形態。ただし配合内容はきっちりしており高く評価できる。

上がり1ハロン:12.4秒
残400~200m:12.5秒
ラップ:36.9-37.4(前傾)

シニスターミニスター:前述

ヤマニンバロネス

◆12/08 京都 ダ1400m新馬戦(牝)

・エリカアンディーヴ(Oscar Performance×Going Day) 評価A

上がり2ハロンが抜群に速い。馬場を硬く作ったことで前が残りやすい状態に助けられたことは事実だが、基礎能力の高さは素直に認めていいところ。大差をつけるには至らなかったが、相手関係は決して楽なレベルではなかったと思われる。

父Oscar Performanceはヨーロピアンな配合に見えて完全な「アメリカ芝血統」、日本では京都などの小回りコースや東京の冬開催をベストとするタイプ。よってクラシック戦線では弱さを見せる可能性がある。

父の祖母Devine Beauty≒祖母Anticsの配合を持ち、しっかりと「言いたいことが分かる」内容となっている。強固でしっかりした血統構成の持ち主で出来としてはトップクラス。

上がり1ハロン:11.2秒
残400~200m:11.1秒
ラップ:38.4-33.7(後傾)

Oscar Performance:El Pradoの系統はアメリカの小回りで硬い芝を得意としただけに、日本でも極端なアップダウンが要求されなければ走る。ただし冬の芝など、メリハリのないレースを得意とするのでG1路線では弱さを見せる。Sadler's Wells系らしく多頭数での粘り腰は残っており、人気でも対応できる強さはある。

エリカアンディーヴ

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「競馬最強の法則」にて血統理論記事を短期連載しておりました。血統の世界は日々世代を変えてゆくものだけに、常に新しい視点で旧来のやり方にとらわれない発想をお伝えしたいと思います。