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2024~2025 3歳クラシック血統分析(第26週) 2024/11/23~11/24

(有料noteですが、無料で最後まで読めます。内容が気に入った、応援したいという方のみご購入下さい)

今週は待望していたS評価馬が2カ月半ぶりに登場しました。


カトレア賞を制したナチュラルライズについて書きます。

キズナ産駒がダートで非常に優秀な走りをするケースが増えてきました。芝の新馬戦で時折見せる「大外を豪快な脚で突き抜ける」印象とは違うので「どっちがキズナ産駒の本質なのか」と戸惑うこともあるかと思います。

ナチュラルライズ

もともと闘争心で相手をちぎるタイプの種牡馬ではなく「馬体を合わせて粘り込む」走りに良さがあるタイプで、実は芝で見せる鋭い末脚は本質とはズレたものです。芝では本物の一流馬は出せないタイプと見ています。

あのような走りを見せるためには「一切もまれることなく、自分のペースでスパートをかけられること」が求められます。厳しい流れや多頭数でもまれ、自分のペースを崩すと鋭い脚は出なくなる、それがキズナ産駒です。

なので上位クラスでは先行して粘り込む、もしくはダートや開幕週馬場に適した種牡馬となります。先日引退を発表したジャスティンミラノや、毎日王冠を制したシックスペンスがまさにこのタイプで、硬い馬場に特化した馬でした。メリハリが求められる流れでは苦しいのは変わりません。

ナチュラルライズはStorm Catに血を集中させた馬で、母もアメリカ系血統を徹底的に入れた構成。先行して粘り込む走りでどこまでやれるか、特に今後は海外を狙っていくと思われるだけに注目したいものです。

◆11/23 東京 芝1800m未勝利戦

・ベストシーン(レイデオロ×アユサン) 評価B

ウインドインハーヘアのインクロスが印象的。レイデオロ産駒ではこの配合を期待している馬も多かっただろうが、今まであまり結果を出していない。レイデオロの持つアメリカ系の堅さと、ウインドインハーヘアのヨーロッパ的な柔軟さがミスマッチになっており、あまり効果的でない。

レイデオロ自身と母アユサンの相性は評価できるが、母の血は桜花賞馬にしては今一つ。

外を鋭く伸びて勝った内容は悪くなさそうだが、使える脚が短いのか最後は2着アロンズロッドに詰め寄られていた。いずれにせよこの後ポンポンと勝ち上がる雰囲気は感じられない。

上がり1ハロン:11.7秒
残400~200m:11.3秒
ラップ:37.0-34.2(後傾)

レイデオロ:Mr. Prospectorの近交馬ではあるが、ダート向けの闘争心を欠く感じ。ディープインパクト産駒のB級種牡馬にありがちな「少頭数で長い脚を使うがスピード不足」というタイプで、小回りコースの中距離が主戦場になる。クラシック向けの馬ではない。

ベストシーン

◆11/23 東京 ダ1400m新馬戦

・ヘニーガイスト(ヘニーヒューズ×スミレ) 評価B+

3レースの芝未勝利戦と上がり2ハロンのタイムが全く同じ。芝なら平凡なタイムだがダートならもちろん優秀なタイムで、爆発的な脚で一気に突き放した内容も含めて実に優秀な内容と言えるだろう。

ただしダートの1400m戦にしては道中が緩んだ流れで、今回見せた末脚はペースの恵まれがあったことも覚えておきたい。今後はもう少し距離を伸ばした方がいいと思われる。

ヘネシーやStorm Catと母の相性が良いことを生かした配合だが、ほんの少し近親度が強くピントを外した感あり。

上がり1ハロン:11.7秒
残400~200m:11.3秒
ラップ:36.5-35.1(後傾)

ヘニーヒューズ:ダートでは現在一番優れた種牡馬と言える。典型的なアメリカ系ダート馬だと「とにかく先行して粘る」という内容に終始するが、この馬は爆発的な脚を繰り出して直線で勝負できるので、配合内容によっては芝ダート兼用でいける。闘争心も高い。

ヘニーガイスト

◆11/23 東京 芝1600m新馬戦

・グーテンベルク(リアルスティール×アトラクティヴ) 評価B+

インをべったりと通ったことで恵まれ勝ちのようにも見える映像だが、今日の東京コースのインは比較的荒れており、先週までと比べてそれほどメリットのあるコース取りではなかった。

2着もリアルスティール産駒だったこともあり最後は上位2頭の脚色が同じとなったが、タイムを見ればそれなりに優秀で、決して見劣るものではない。

リアルスティールは産駒に強い気性を与えるが、芝で好走するにはもう少し柔らかみが必要。レーベンスティールは母父にトウカイテイオーを入れることで気性を中和していたが、この馬は母父スクリーンヒーローで同じように軟化を図っている。ただしレーベンスティールと同じく上位に入ってもろさを見せる可能性がある。

上がり1ハロン:11.4秒
残400~200m:11.4秒
ラップ:36.7-34.4(後傾)

リアルスティール:フォーエバーヤングがアメリカで見せた無尽蔵の精神力は、この父が産駒に伝えす資質として最も大きいもの。我慢はするが最後の最後で力尽きるキズナとは正反対で、やや多頭数でのコントロールに難があるが「相手に食らいつく」メンタルの強さを持つチャンピオンタイプの種牡馬。

グーテンベルク

◆11/23 京都 芝1600m新馬戦

・ワイルデンウーリー(Bernardini×Merino) 評価B+

配合だけを見ればまったくもって芝で勝ち上がる印象がない。Fappianoも単体で入るならいいが、父母双方からインクロスが入ってしまうと影響力が強まり、A.P.Indy系の「ダートでの先行粘り」を強化することになる。

ラップタイムはそこそこ悪くない。前がばったり止まったところを差し切ったわけでもないので、この馬自身が芝適性を持っているのだろう。ただし父母の本質とはズレるので一流にはなりきれないことに注意。

緻密な配合を持つ母を生かした内容であり、血統そのものは良い。

上がり1ハロン:11.7秒
残400~200m:11.4秒
ラップ:36.5-34.7(後傾)

Bernardini:A.P.IndyにFappianoを掛け合わせて出来るのはハイペースの潰しあいに強いタイプ。基本的に芝のペース変化に対応できる血ではないものの、ダートの長距離戦ぐらいのスローペースであれば辛うじてこなしてくるだけの我慢強さはある。ただし本質的に芝向きではなく、あくまでダートで狙うべき。

ワイルデンウーリー

◆11/23 京都 ダ1800m新馬戦

・スマートシーカー(シニスターミニスター×スマートアンカー) 評価B

ラップタイムを見れば分かる通り、最後に逃げ馬がばったり止まったところに飛び込んだだけという印象。基本的にレベルの高いレースではない。

最後の最後まであきらめない走りを見せたことは父の産駒らしさを発揮したとは言える。配合もまずまず。

上がり1ハロン:13.0秒
残400~200m:12.5秒
ラップ:38.3-38.0(フラット)

シニスターミニスター:完全なダート特化型種牡馬だが、これはA.P.Indyの走りの質が「先行して粘る」に特化しているため。Bold Ruler系はギアチェンジの速さがあるので硬い芝でも走れるが、そこで通用するだけのスピードを与えられない。なので得意分野に出走しているときだけ狙うべき。

スマートシーカー

◆11/24 東京 芝1600m未勝利戦

・ブルーベリーフィズ(シスキン×シャンボールフィズ) 評価B+

シスキン×キングカメハメハのワンツー決着。だがその割には最後に両者の脚色が一緒になることはなく、勝ったブルーベリーフィズが位置取りとコース取りの利を生かして押し切った感がある。2着のグロスビークの方が魅力的な走りをしていた。

アーモンドアイやリバティアイランドと共通するBest in Showのインクロスが目立つが、そこはほとんど生かされておらず、この馬の能力の源泉はHaloへの血の集合。今のところまだBest in Showを生かした配合は出てきていない。

シスキン産駒は優秀との声もあるが、位置取りでうまく調整しないとならないし詰めの甘さも目立つ。

上がり1ハロン:11.9秒
残400~200m:11.5秒
ラップ:36.0-34.5(後傾)

シスキン:体力のあるUnbridled's Song系で、やや厳しめのラップを先行し、そのままの勢いでなだれ込むようなレースが得意。ただしもまれる展開ではまったく良さを発揮できない。芝は相手弱化や少頭数など楽なレースに限定。

ブルーベリーフィズ

◆11/24 東京 芝2000m未勝利戦

・ウィクトルウェルス(リアルスティール×ウィクトーリア) 評価B

13秒台のラップが入り、直線まではかなり緩んだ流れ。それだけに最後の2ハロンはかなりのタイムが出た。この時期の荒れた芝、それもインを通して11秒2は相当に速いと言っていいだろう。

リアルスティール産駒はフォーエバーヤングに代表されるように旺盛な闘争心を持つが、この馬は母父に闘争心がまったくないヴィクトワールピサを配したことで「他馬と合わせずにゆったり走る」際の強さを引き出している。だが当然のことながら、これは馬群に入った時にマイナス要素となる。

近親交配もややきつすぎる感がある。能力は高いだろうが、上位では楽なレースに持ち込めない限りは苦しいだろう。

上がり1ハロン:11.3秒
残400~200m:11.2秒
ラップ:37.6-33.9(超後傾)

リアルスティール:前述

ウィクトルウェルス

◆11/24 東京 ダ1600m新馬戦

・リアライズカミオン(American Pharoah×スパイスドパーフェクション) 評価B

スタート直後が速すぎて隊列がばらけた割には中盤が非常にぬるい極端なレース。直線に入った時にはすでに馬群が壊れてしまい「全くもまれることのない楽な流れ」となった。こういうレースでいくら楽勝しても能力の証明にはならないことに注意。

American Pharoah産駒はカフェファラオに代表されるように「弱い相手には抜群に強い」「高速馬場では抜群に強い」「それ以外は全くダメ」という極端な性質を持つが、Fappianoの系統が蓄えてきたスケール感に特化したタイプなのでそうなってしまう。相手と競り合って潰しあって勝つ、ということは出来ないタイプ。

Unbridled≒Cahill Roadの全兄弟クロスは面白いが、それ以外に見どころはない。

上がり1ハロン:12.1秒
残400~200m:12.3秒
ラップ:37.1-36.9(フラット)

American Pharoah:日本でもカフェファラオなどを出したように優秀な種牡馬であるが、その特徴として「自分勝手なレースをして、少しでも嫌気がさすとレースを投げる」というのがある。広いコースなら多頭数をこなすが、それ以外では少頭数の方がいいタイプ。よって格上げで脆さを見せることがある。

リアライズカミオン

◆11/24 東京 芝1800m新馬戦

・ジュタ(ドゥラメンテ×スパイスドパーフェクション) 評価B+

ルメール騎手のコメントでは「内は硬いが荒れている、外が伸びる」という馬場のはずだったが。このレースでは誰も外を回そうとせず、むしろインに切り替える馬も出る始末。実際にはかなりインが残る馬場だと考えていいだろう。

やや外目を通って先行差し切りということであまり闘争心が求められるレースではなかったが、最後は他の馬よりも速く走れており、能力はそれなりに示せた形か。

父ドゥラメンテと母父ストリートセンスの相性の良さで能力を形成しているが、祖母の血が弱い感じ。

上がり1ハロン:11.5秒
残400~200m:11.3秒
ラップ:36.9-34.2(フラット)

ドゥラメンテ:多頭数でもまれる展開に強く、一瞬見せる爆発的な脚もトップクラスという現代の最強種牡馬。闘争心とはまさにこの馬の産駒のためにある言葉。ただし弱点といえば長く脚を使わされる展開で、相手が弱くストレスが少ないレースになると他馬の後塵を拝することがある。だが本番では逆転する。

ジュタ

◆11/24 京都 ダ1400m新馬戦

・セボンサデッセ(ルヴァンスレーヴ×ウィクトーリア) 評価B

楽なペースで飛ばしていた2着馬だったが、最後に一気に脚を失った。その瞬間に差してきたのがこの馬。3着以降もラストで猛然と差を詰めてきているように、着差うんぬんは参考にならない単なる前崩れのレース。

もちろんハイペース先行で粘ったことは評価していいのだが、馬の個体能力の判定としてはあまり役立たない。

母の血統が完全なダート質で、そこを生かしたもの。牝系にあるMixed Marriageのクロスは面白いが、あまり有効な働きは示していない。

上がり1ハロン:12.3秒
残400~200m:13.3秒
ラップ:36.5-37.7(前傾)

ルヴァンスレーヴ:父シンボリクリスエスだけにどこまで旺盛な闘争心を伝えられるかがポイント。父自身はネオユニヴァースやティンバーカントリーで多少丸さとスケール感を出した配合だっただけに、そこを生かせば良いダート馬が出る可能性も。

セボンサデッセ

◆11/24 京都 芝2000m新馬戦

・ネブラディスク(ドゥラメンテ×リリサイド) 評価S

京都芝コースが相当使い込まれたこともあり、インはさすがにもう伸びが悪くなっている。そんな状況だけに最初から外を狙ってコーナリングした岩田望来騎手は好判断。

だが今回のレースは内回り戦で、外回りコースほど楽にいけるわけではない。実際に外を回して一気に伸びたこの馬の強さが際立つものとなった。極めて優秀な内容。

リスグラシューの下ということもあり母の血は申し分がないもの。父ハーツクライからドゥラメンテに変わったことでLyphardのインクロスがなくなり、配合的にはややピントが薄くなった感もある。それでも母父内Wells Fargoの血を十分に使い切った配合で、ベストとまでは言えないが合格点はきちんとクリアしている。

ようやく今週の馬から上位評価が出た。

上がり1ハロン:11.2秒
残400~200m:11.8秒
ラップ:37.5-34.4(後傾)

ドゥラメンテ:前述

ネブラディスク

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「競馬最強の法則」にて血統理論記事を短期連載しておりました。血統の世界は日々世代を変えてゆくものだけに、常に新しい視点で旧来のやり方にとらわれない発想をお伝えしたいと思います。