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2024~2025 3歳クラシック血統分析(第13週) 2024/08/31~09/01

(有料noteですが、無料で最後まで読めます。内容が気に入った、応援したいという方のみご購入下さい)

夏競馬もこれで一段落しました。

S評価馬だったアスクシュタインが札幌2歳Sで敗れたのは残念でしたが、勝ったマジックサンズはB+とまずまずの評価はしていました。

ただしラップがスタートからずっと平板で、芝の中距離で求められるペース変化や爆発的な脚を持っていないという判断になります。上のクラスではやや評価を落とさざるを得ないのが実情です。

来週からは秋開催となりますが、最初はかなり時計の速い芝となるので、そこで出したタイムを鵜呑みにしないのが重要となります。

血統評価についてはリクエストも受け付けますので、「この馬の血統が知りたい」などのコメントを頂ければ幸いです。

◆8/31 札幌 芝1500m新馬戦

・ダイシンラー(サトノダイヤモンド×グレースドゥモナコ) 評価C

混線の競馬をうまく立ち回って、外から一気にまくりきった競馬。いかにも大回り&直線短の札幌という流れを利して走った感じ。ただ開催終盤で馬場が荒れ、時計の見た目以上にフラットなラップ。こうした流れに慣れてしまうと速い時計の競馬で苦しくなる。

配合は近親交配が強すぎて平凡。

上がり1ハロン:12.1秒
残400~200m:12.2秒
ラップ:38.5-36.2(後傾)

サトノダイヤモンド:重賞でも格負けしないだけの体力を伝えられるので決して悪い種牡馬ではないが、とにかくもまれるレースに弱い。広いコースや少頭数では無類の強さを見せるが、それが格上げ戦になると発揮できない。

◆8/31 新潟 芝2000m新馬戦

・ヴィンセンシオ(リアルスティール×シーリア) 評価B+

一度完全に抜かれた相手をゴール前でもう一度とらえて差し返す内容は着差以上の強さを感じる。リアルスティール産駒が見せる「ディープインパクト系らしからぬ」激しい闘争心はケンタッキーダービーでフォーエバーヤングが見せてくれたものを思い出す。

前半平均3ハロンが40秒近く調教のような流れだったとはいえ、ラスト2ハロンは速い。特に最後1ハロン目の11.1は目を見張るタイムで、この馬の能力の高さを物語る。

Monevassia≒Kingmamboの全きょうだいクロスを配合の柱に据えており、確かに面白い。だがそうなるとサンデーサイレンスのインクロスがあまりに無駄で不要。これさえなければ素晴らしい馬だった。

上がり1ハロン:11.1秒
残400~200m:11.6秒
ラップ:39.9-35.2(超後傾)

リアルスティール:フォーエバーヤングがアメリカで見せた無尽蔵の精神力は、この父が産駒に伝えす資質として最も大きいもの。我慢はするが最後の最後で力尽きるキズナとは正反対で、やや多頭数でのコントロールに難があるが「相手に食らいつく」メンタルの強さを持つチャンピオンタイプの種牡馬。

◆8/31 中京 芝1400m未勝利戦

・カロローザ(ナダル×エスティタート) 評価A+

1400mを前後半フラットな流れで逃げ切りというと、どんなにそのタイムが速くても「弱い馬の勝ち方」である。上位では通用しない。

だがこの馬は違った。直線で一気に後続を突き放す強い内容、しかも大雨の影響で芝が荒れて重馬場となった中京で11.3のタイムを出したのはとんでもないレベル。これが開幕週なら10秒台に近づいていただろう。

追い込み馬が逆に突き放される、というのも馬の強さを示す。血統構成も母内のNureyevに血を集める構造で、それが父母、母内ともに共通している非常に優秀な血統構成。距離が伸びてどうなるかだけが不安だが、かなりの馬。

上がり1ハロン:12.1秒
残400~200m:11.3秒
ラップ:35.4-35.7(フラット)

ナダル:今のところ短距離戦に実績が偏るが、先行だけでなく中断から差す競馬もできているように、Kris S.系の闘争心は強く受け継いでいる模様。あとは多頭数での気性のコントロールがどうかだが、ダート向き種牡馬ということもあり先行さえできれば我慢が効くタイプ。

◆8/31 中京 芝2000m新馬戦

・カレンラップスター(ルーラーシップ×カレンオブシス) 評価B+

外を回す馬が強そうに見える展開だったが、今の中京の芝は相当に根付きが良いのか、荒れているように見えてインが粘れる。

前半平均3ハロンが40.3と調教レベルのラップタイムだが、後半はどんどん伸びて上がり2ハロン目には11.1を記録。当然ながらこれは評価する。だがインに包まれる中を一気に突破したとなればメンタル荒れ気味のルーラーシップ産駒らしからぬ走りだが、どうも他の馬が外に向かってしまったことでインがぽっかり空いた形。恵まれたことも確か。

エアグルーヴの2x3というメチャクチャな配合。実験としては面白いとだけ言っておく。

上がり1ハロン:11.3秒
残400~200m:11.1秒
ラップ:40.3-34.7(超後傾)

ルーラーシップ:多頭数をこなせない馬ではない。闘争心の高さは父譲りなので、馬群を突破していくだけの強さもある。だがそれがコンスタントに発揮できず、少しでも気分を損ねるとコントロール不可になるオルフェーヴルのような馬。人気で信用できないが人気薄では積極的に狙いたいタイプ。

◆8/31 中京 ダ1400m新馬戦

・ハリーケーン(モーニン×チェインブラッド) 評価B+

ダート不良馬場のレースはあまりに特殊すぎて、次走へのヒントになりにくい。

ラップタイムも最初が速く、後半に向かうにつれて一気にタイムが落ち込んでいくもの。大味なアメリカンタイプのレースで、日本では再現性が低い。

血統は良い。特に祖母Calpellaに父内のすべての血を集中させた形で、世代が新しく特徴が打ち出しにくいモーニン産駒としてはレベルの高い構成を実現させている。これぐらいの配合でないと中央では通用しないのだろう。

上がり1ハロン:13.2秒
残400~200m:12.6秒
ラップ:36.5-38.3(前傾)

モーニン:地方競馬では2歳戦から大活躍するも中央では再現しなかったように、「前半から飛ばして後半バテバテになる」特殊な競馬でこそのタイプ。アメリカンタイプの種牡馬で下位条件戦では賞金回収がしやすいだろうが、上位クラスでは頭打ちになる感じ。配合を相当詰めないと。

◆9/1 札幌 芝1500m未勝利戦

・ヒシアマン(モーリス×アシュリン) 評価B+

レース内容の優秀性はデビュー戦で3着以下を大きく離した時点で証明されているので、特に追記することはない。むしろ勝ったアルテヴェローチェよりも優秀だったのではないか、という追い込み内容は好感が持てるものだった。ここは勝って当然というレベル。

モーリスとディープインパクトの組み合わせだと「それだけで好配合にはならない」と言い切れるが、マンハッタンカフェとの組み合わせでもそれは同じ。だがこの馬はベガの近親にあたり、なおかつ父内のカーネギーを強く打ち出すことで「モーリス×サンデーサイレンス系」という平凡な配合製造機からの脱却に成功している。

上がり1ハロン:11.5秒
残400~200m:12.0秒
ラップ:36.9-35.4(後傾)

モーリス:オーストラリアでの成功を考えれば日本での実績がやや物足りないが、使える脚の長さが短いので長い直線を差し切る芸当ができない上に、ごちゃついた競馬を苦手にするのが原因。意外にスムーズに脚を使えるので「前にいる馬が少ないときに」軽く抜け出すのは得意。爆発力には欠ける。

◆9/1 新潟 芝2000m未勝利戦

・ヴァルキリーバース(エピファネイア×グロリアーナ) 評価A

今回はだらっと先行してだらっと粘るレースで、エピファネイア産駒の最大の長所である爆発的な脚や闘争心を見せる機会には恵まれなかった。だがデビュー戦では鋭い脚で追い込んでおり、やろうと思えばできるだけの能力は秘めている。ただし流れが若干速いことを考えると、これはこれで優秀な走りか。

トゥザヴィクトリーの系統にあたる馬で、そこにサンデーサイレンスとSadler's Wells≒Nureyevの組み合わせをシンプルな形で入れることで、父の母シーザリオの良さを素直に引き出している。余計なインクロスが生じていないのは好感が持てる。

上がり1ハロン:12.4秒
残400~200m:12.0秒
ラップ:36.7-35.8(フラット)

エピファネイア:持続する末脚がないために上がりタイムでは他の種牡馬よりも見劣りするが、一瞬で爆発的な脚を使えること、もまれる展開でも脚を使えるメンタルの強さがあるため多頭数の格上げ戦に強い。そのため格下では取りこぼすし、勝ち上がり戦自体は平凡なこともある。

◆9/1 新潟 芝1800m新馬戦

・エンジェルマーク(エピファネイア×ステファニーズキトゥン) 評価S

グロスビークがすんなりと逃げて、それをギリギリでとらえて競り合い、最後まで追撃を凌ぎきるレース。前に馬を置いたときに最大の力を発揮するのが闘争心にあふれたエピファネイア産駒の良さであり、まさにその長所を発揮したレース内容と言えた。

サンデーサイレンスのインクロスを用いず、RobertoとSadler's Wells、さらにはSir GaylordやSecretariatを重ねることで父の血を生かす血統構成は近親交配の弊害を受けにくいので良い構成。エピファネイアにしては珍しい内容と言えるだろう。Robertoの生かし方は父母、母内ともに素晴らしく、今年のエピファネイア産駒の中でも特筆できる血統と言える。

前半が調教レベルで遅いのは少頭数だから仕方ないとはいえ、開催の進んだ新潟で上がり2ハロン目に出した10.6は秀逸のタイム。2着グロスビークともども今後に注目したい。

上がり1ハロン:11.0秒
残400~200m:10.6秒
ラップ:40.0-32.9(超後傾)

エピファネイア:前述

◆9/1 新潟 芝1400m新馬戦

・マックアルイーン(Blue Point×Euthenia) 評価A

父Blue PointはStorm Catの系統で芝でもダートでもこなすが、ハイペースか超スローペースという極端な競馬が向く馬で、日本の芝ではマイルまでと考えていい。全体にヨーロッパ系の血を多く含み長くスパートできる脚を持つが、瞬時に相手を交わす爆発力は備えていない。

今回のレースは2着馬も同じBlue Point産駒だったこともあり、前後半に差のないフラットラップというベスト条件で走ったからこその着差であることは留意しておくべきだろう。

Rivermanからの連続クロスを使ったシンプルな構成は、際立った特徴こそないがレベルの高い配合であることは確か。安定感はありそう。

上がり1ハロン:11.9秒
残400~200m:11.8秒
ラップ:35.8-35.6(フラット)

Blue Point:Giant's Causewayの系統はヨーロッパでは芝の中長距離も走るが、一本調子に行くか極端なペースアップが求められたときに強いタイプで、徐々に加速する日本ではマイル向きの系統になると考えていい。開幕週の芝や京都、新潟なら1800mぐらいはこなす。

◆9/1 中京 芝1400m新馬戦

・フードマン(Kingman×Midnight Crossing) 評価B+

ラスト3ハロンがずっと11秒台、最初からほぼ均等に流れるフラットラップの競馬を逃げて押し切る内容。後続は完全にちぎっており、内容としては悪くないと思われるが、途中で一度も爆発的な脚を見せられなかったことを考えると、距離が伸びて良くなるタイプではないだろう。

Kingman産駒はシュネルマイスターに代表されるように、硬い馬場でメリハリのないレースをしたときに最高のパフォーマンスを発揮する。そのため一見スタミナがありそうな血統に見えても距離をこなせない(距離適性はペース適性である)。

LyphardやMill Reefを生かした配合はシュネルマイスターと共通点あり。あとはどこかで起伏のある競馬を経験させたい。

上がり1ハロン:11.6秒
残400~200m:11.6秒
ラップ:35.6-35.1(フラット)

Kingman:開幕週の硬い馬場やフラットなラップで安定感を見せ、多頭数も苦にしないし厳しいレースもこなす。ただし距離短縮などを利用しないと前の馬を抜こうとしない。上位では闘争心の弱さがネックになる。

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「競馬最強の法則」にて血統理論記事を短期連載しておりました。血統の世界は日々世代を変えてゆくものだけに、常に新しい視点で旧来のやり方にとらわれない発想をお伝えしたいと思います。